第3話 脱オタクファッション その2

※←このマークの付いたファッション用語は、

後書きに解説がありますので、

わからない時は参考にしてください!

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私たちは、近所で一番大きなショッピングモールに足を運んだ。


「昔はショッピングモールにもいくつかアパレルショップがあったらしいんやけどなぁ」

「今はほぼアニメグッズ売り場っすね」

「それを食い止めるのガ、私たちの役目でショ」

「ここはこの辺りで唯一、UNIQLOがあるから、助かるわ」

「自分ここでしか服買わないっす」

「あんたはもうちょい御紗嶺高校生徒会の自覚を持った方がええで……」

「というカ、まあまあ寒いワ。早く入りまショ」

秋は終わり、そろそろ冬に差し掛かる頃。

気温が10度台をマークしたのは記憶に新しい。

「岡さんのコーデは冬服に決定ね」



モールに入ると、放課後の中高生でごった返していた。

彼らの手には、アニメイトのレジ袋が提げられている。


「UNIQLOから行きましょうか。何階でしたっけ」

「2階っすね」


入り口からすぐのエスカレータを登っていくと、目の前にUNIQLOがある。

UNIQLOに近づくにつれ、岡さんの表情は険しくなっていく。


「わたし、洋服屋さんに来るの、初めてなんです……」

「今日び誰でもそうやって。オタクの総数が過去最高やねんで?」

「大丈夫よ、岡さん。私たちに任せて。」

岡さんは安堵と不安が混じり合って、顔中の筋肉がぐちゃぐちゃになっているみたい。


「着いたワ」

「早速服を選びましょうか」

「岡さんは入口らへんで待っといてくださいっす!」

「岡さん、ごめんやけど、1分だけ待っといてくれへん? 」

「わかりました……」


1分でいいんですか? と言わんがばかりの顔を横目に、私たちは売り場に駆け込んだ。

事前にコーデは頭に描かれている。

何を買おう、なんで悩むことはない。

私たちはF-1カーのように素早く、滑らかに通路を滑走する。


1分ジャスト、数秒の狂いも無く岡さんの元に生徒会役員全員が揃った。


「すごいですね、皆さん」

「まあこんなもんとちゃう?」

「多分目瞑ってても商品探せるっすよ」

「流石にそれできるノ、オサムくんだケ」

「試着、してみましょうか」


まずはオサムのコーデから。

オサムはいわゆる、マネキン買い※をしてきたらしい。


「レディースはマネキン買いしても、そこそこオシャレだからいいっすよね~」


「マネキンのコーデがオシャレか否かを判断する力が無いと、危険な買い方やけどな」


黒のレギンス※に白いニット※のワンピース、チェックのストール※を選んできたみたい。


「ちょっと普通かナ~」

「ぶっちゃけレディースあんまりわかんないっす」

「オサムの問題点やね。次いこーや」


2番目は私。

私は大人チックなコーデにしたわ。

「タートルネックのニットに、デニムのパンツ※すか」

「結構シンプルで、カジュアルやね」

シンプル目にした理由はこなれ感※を出すため。

「次はわたしのターンだネ」


3番目はモードさん。

モードさんは大きめのダウンジャケットを使ったコーデだ。

「ダウンはネ、冬のオシャレ必需品ヨ」

「着こなしが簡単ですもんね」

「ダウンをヘビロテしてたら冬乗り切れるっす」

「次はミナミね」


最後はミナミ。

ミナミは自分の好きな、ストリート系のコーデを選んだ。

「灰色のパーカーに、黒のMA-1※。ボトムス※はライトブルーのダメージジーンズ※すね、あと黒のキャップ」

「帽子をうまく着こなせたら、オシャレ度高めや」

「やっぱり中高生はストリート系が似合いますよね」


岡さんは、4人のコーデのプレゼンを、真剣な眼差しで見つめていた。

それぞれのカゴをキョロキョロ見渡しながら、岡さんはそっと話し出す。

「皆さんに選んでもらった服、どれも素晴らしいんですけど、どれを着ればいいのか……」

「取り敢えず1カゴずつ試着してみたラ?」

「わかりました、いってきます。終わったら連絡しますね」

そう言って試着室に向かう岡さん。

一同はそれぞれ、時間を潰すためにあたりをブラブラうろつくことにした。


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~用語解説~


マネキン買い……

店に置いてある、マネキンが着ている服装と同じものを丸々買うことを指す。

何を買おうか迷った時に有効な買い方だが、ミナミの言うとおり、そのコーデがダサいかダサくないかをしっかり判断できない内に買うと失敗する可能性がある、もろはのつるぎ的買い方。


レギンス……

女性用のぴっちりめのボトムスのこと。


ストール……

マフラーに似ている、肩掛けのこと。

本来の用途通りに肩掛けにして使うのもいいし、

マフラーのように首に巻いてもオシャレ。


パンツ……

おパンティのことではなく、ズボンのことを指す。

ハンバーガーのパンの部分を、バンズと呼ぶのと似ている。


こなれ感……

頑張ってオシャレしてきました感を出さずに、オシャレに見せている感じ。

オシャレになるには必須のスキル。

オシャレに目覚め始めの人は、どこへ行くにも気張ってオシャレしようとしてしまうが、それはこなれ感がないってことになる。

難しいが、これを極めたらオシャレ上級者。


MA-1

アメリカ軍のフライトジャケットをモデルに作られた、ミリタリー感の強めなのジャケットのこと。

これとパーカーの組み合わせは超安定。

取り敢えず迷ったらパーカーと合わせればいい。

個人的に中高生が着るとより似合う印象がある。


ボトムス

下半身に着る衣類全体を指す。

トップスの反対。

ズボンのかっこいい言い方。


ダメージジーンズ……

意図的にジーンズにダメージ加工を施したもののこと。

普通のジーンズと比べてカジュアルさが増す。

店で加工済みのものを買うことが多いが、オシャレを極めし者達は、自分でダメージ加工を施すこともあるらしい。

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オシャレのススメ! @_kano_

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