第2話 脱オタクファッション その1
※←このマークの付いたファッション用語は、
後書きに解説がありますので、
わからない時は参考にしてください!
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「あラ、可愛らしい女の子ネ」
モードさんは妖美な眼差しで訪問者を見つめる。
「はじめまして、今日はどないな用事で? ええっと……」
「岡と言います」
岡さんと名乗る女の子は、1年生らしい。
この御紗嶺高校では、生徒は学校にいる間、手首に特製のブレスレットをつけることが義務付けられている。
このブレスレットは学年別に色分けされているため、岡さんの学年はすぐに分かった。
「ごめんなぁ、岡さん。ここって名札つけへんから、名前わからんくて。堪忍やで」
「ここは私服登校すからね。お気に入りの服に、名札のピンで穴を開けないようにするためっすよ。」
「いつもファストファッションで済ますオサムくんの口かラ、お気に入りの服なんて言葉が出てくるなんテ、今日は雪でも降るのかしラ」
「学校に行くために着る服なんて、適当なブランドでいいんすよ! とかゆうてたくせに、よーゆうわ」
「二人してなんなんすか!? 恨みでもあるんすか!」
ゴホン! と私は大きく咳をしてみる。
3人は頭を軽く下げ、岡さんへ体を向けた。
「それで岡さん、本日はどのようなご用件でしょう?」
「はい、今日はみなさんにご相談がありまして……」
少し口をモゴモゴさせた岡さんは、ゆっくりと話し出した。
「オタクを卒業したいんです……」
生徒会室に沈黙が訪れる。
生徒会役員たちは互いに目と目を合わせるが、言葉は出てこない。
「それって、岡さんが卒業したと思ったら、卒業できるもんなんちゃうん……?」長い沈黙を破ったのはミナミだった。
「私がオタクを辞める以上、オタクが着るような服装は二度と着てはならないと考えています」
「まあ確か二、オタクをやめてからもオタクみたいな服きてたラ、周りからの評価は変わらないわネ」
「今の服もだいぶ微妙っすもんね」
そんなこと言っちゃダメでしょ!と言うべきなのだろうけど、正直オサムの言う通りだった。
まるでさっき議論していたのを見ていて合わせたかのように、安っぽく、パーカーにジーパンは丈が微妙に合ってない。着れたらいいやという岡さんの気持ちが、伝わってくるような気がする
「私、変わりたいんです」
「私は周りから、姫と呼ばれていて、周りの男のオタクの方から、すごく持て囃されるんです。
たまに、私が好きなアニメのグッズをプレゼントしてくれたりするし、ご飯とかにも連れていってくれたりもしました」
「ええやん、オタクのまんまの方が利益あるんちゃう?」
岡さんは静かに首を振り、俯く。
「最近、周りのオタクの方の目が怖いんです。何か飢えているというか、そのうち襲われそうで……
あと多分ですけど、最近ストーカーされてるんです」
「近頃は、アニメを見なくなりました。アニメを見ると、あの人たちを思い出すので……」
「坊主憎けりャ、袈裟まで憎イ。ってことネ。」
「ちょっと意味は違うっすけどね」
「うるさイ」
「私がオシャレをになれば、周りからオタクに見られない。
オタクの人はオタクとしか仲良くなれないから、
私はもうオタクに付き纏われることも無くなる……」
岡さんはすごく虚ろな表情で、虚空を見つめながら呟くように言った。
「すごい偏見な気もしますけど、オシャレになりたいという気持ちは、とても伝わってきました。
生徒会一同、力を合わせて岡さんをオシャレにしてみせます!」
途端に岡さんの顔がみるみる明るくなっていく。
「本当ですか、ありがとうございます!」
「じゃあ早速オシャレな服買いにいこか!」
「はい、よろしくお願いします!」
一同は生徒会室を後にして、アパレルショップへと向かった。
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~用語解説~
ファストファッション……
安くて、なおかつ流行を捉えているファッションのこと。UNIQLOやGUなどが該当する。
ファストフードという言葉に由来する。
2009年の新語・流行語大賞に選ばれたりもする
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