ラストラウンドon the サーキュラーバリー
gaction9969
5(%)9
奴と俺との、決着の
耳奥で響いた闘いの
権謀術数を尽くした前哨戦は終わった。互いの手の内も知れた今、こっから先はもう喧嘩レベルの殴り合いに終始すると俺は思っている。
これまでの手数は俺の方が勝っている。先制攻撃を浴びせたのも
「……!!」
そんな思考は置いておけ。奴の牽制気味のローキックが俺の左脛を狙って放たれてくるが、これは冷静に後ろにステップして避ける。今は集中だ。この三分を乗り切れば……
勝って掴みたい。俺とは無縁だった栄光を。
偉大だった先代の「二代目」ともて囃されて、鳴り物入りで
ここしかない。ここでやるしかないんだ。
筋肉は若い頃よりも大分衰えてしまっているだろうが、その分、俺には
「……!!」
不安定な態勢からだったが、うまく体重は乗ってくれたようだ。プラス思考の埒外からの急襲、奴はそのしなやかな上体を捻って直撃は避けたものの、鎖骨あたりに拳は入った、その感触は確かにあった。
その
ここだ。畳みかけるように押し込む。俺は大振り感を滲ませた右ストレートを一呼吸置いてから繰り出した。当然の如くこんな見え見えのテレフォンパンチは、あっさり躱されるが。
……それでいい。
奴の顔面の横を通過した、右腕の挙動を強引にこちら側に向けて曲げ、その首根っこを刈り取るように巻き込む。すかさず間合いを詰め、頭と頭を突き合わせる恰好を取った。
首相撲。スピードは残念ながら奴の方が数段上だ。足を使っての攻防はむべなるかな、至近距離での撃ち合いも勝ち目は明らかに無い。ならばゼロ距離だ。ここまで接近した状態ならば、速度はそこまで意味を持たない。
物を言うのは、一発の重さだ。
奴の左の脇腹を狙って、いやもう狙いも何も無い。体が動くだけ、こちらの拳をぶち込むだけだ。打ち付ける、何度も、何度も。
奴の口から初めて呻き声のような音が聞こえたかと思った。その瞬間だった。
「!!」
コンパクトに畳まれた奴の右肘が、下から鋭く俺の左こめかみを抉り突き上げる。一瞬視界が白くなる……奴をロックした右腕もあっさり外され、天を見上げたまま、たたらを踏んだ俺は次の瞬間、ケツから地面へ落ちていた。
ダウン。だがまだやれる。残りは何分だ? 呼吸を整えろ。すぐに立ち上がるんだ。
一分切ったぞ!! ……こんな俺のブレーンを買って出てくれた男の声が、確かに俺の耳には届いた。頭を振って立ち上がる。間合いをまた詰めていく。
三分が過ぎれば俺の勝ちだ。ただそれだけを信じて、俺は攻撃は最大の防御とばかりに、両腕を滅茶苦茶に繰り出していく。
冷静にいなされるが、構うな。ここまで矢継ぎ早な攻撃であれば、奴も攻撃の手は出せないはず。時間を……時間を稼ぎさえすれば……
「!!」
やぶれかぶれな俺の拳撃だったが、そこで思わぬ幸運が訪れる。めったやたらに撃ち放ったパンチのひとつが、奴のガードした左腕を体の外側へと弾き飛ばしたのだ。
見えた。奴の顔面への最短距離が。
三分を待つまでもねえ、この一撃で終わらせてやる……っ!!
体を右後方に捻って溜めを作ると同時に踏み込み、間髪入れず俺は渾身のストレートを放り込んでいく。
このタイミング、この軌道……勝ったッ!!
見ろ、奴の胸の
その時だった。
「……」
奴のその胸の前で、銀色の両腕が
視界も思考も灼かれながら、俺は敗北を悟る間も無く、体中の奥底が次々と爆ぜていくと、意識はそこでとだ
(終)
ラストラウンドon the サーキュラーバリー gaction9969 @gaction9969
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