三分間召喚士
村中 順
第1話 後3分
「ぐはっ」
魔王軍の将軍を倒した。
「さー、魔王よ、もう後はお前一人だ。覚悟しろ」
私は、召喚士。長い提唱時間も生贄も必要とせず、一人で一瞬のうちに強力な召喚獣を呼び出せるのだ。呼び出せるのは、獣だけではない。コストがかかるが、英雄や勇者だって可能だ。
しかし、召喚して、この世に顕現させている時間は3分間に限る。
それでも、“ここぞ” という時に召喚獣を呼び出し、魔王軍を粉砕してきた。
そして、やっと、やっと、ここまで来た。長かった。
「小癪な、魔王軍は滅んだが、まだ最後の手段がある。この『凄い宝玉』が、お前達、人間をこの世から消し去り、魔物の世界を築くのだ」
と言いながら、魔王は紫色の炎を放つ「凄い宝玉」を取り出した。
魔王は続ける、
「良いか、三分間召喚士、俺が発動したら最後、3分後に『人間だけ、皆殺し光線』が出て、この世界の人間だけが死ぬことになる。ガハハハ、どうだ、参ったか? 」
私は、少したじろいだ。
『人間だけ、皆殺し光線』とは、そんな奥の手が有ったとは。
流石に魔王だ。
しかし、最後の私の召喚力を使って、あれを呼び出せば、きっと、この窮地を打開できるに違いない。
しかし、もはや、力が残っていない。膨大なコストがかかる、あれを呼び出すと、1年は力が復活できないだろう。しかし・・・・
「魔王よ、そんな強力な『人間だけ、皆殺し光線』を出せば、お前の魔力は尽きてしまうのではないか?」
私は、ちょっと、鎌をかけてみた。
「ぐぐぐ、バレたなら仕方ない。そうだ。これを使えば、後1年は力が戻らない。しかし、今の状況では、お前に殺られてしまうではないか。後の1年を考えるなんて、ナンセンスだろう」
魔王は、『凄い宝玉』に手をかざし、発動し始めた。
確かにそうだ。ここで勝ちを取らなければ、後1年など無意味ではないか。
ならば、召喚するのみ。そう最後にして最強。魔王を倒すとしたら、彼奴しかいない。
そう、勇者だ
「ガッハハハ、見よ、このデジタルな数字を、今から3分後、0になった時、『人間だけ、皆殺し光線』がでる。最後の3分間、人間の敗北を噛みしめるが良い」
デジタルの数字が、デクリメントされていく。
「勇者! 、召喚〜ん」
光とともに、一瞬のうちに、上半身裸の勇者が召喚された。
そして、数秒のうちに鎧と剣と盾がその勇者を包む。
「えっ、なに。」
勇者は訳が判らない風で、周りを見回した。
「くそー、ここで勇者を呼び出すとはぁあああ」
魔王が、悔しがった。
「さー勇者よ、彼奴を切れ」
私は、勝ち誇った態度で勇者に命じた。
「あんた、誰? 、ここは何処?」
と勇者は私に聞いてきた。
「私は、お前を呼び出した召喚者だ、お前はあの魔王を切らなければならない。さー殺れ」
と私は急かした。
「ちょっと待ってよ、今、僕はビーチでイケてる女の子に声を掛けていて、もうちょっとで、いい雰囲気になったのに。なんなだよ。」
勇者は文句を言ってきた。
「良いから、早く、魔王を切れ」
私はちょっと苛立った。
「くそー、魔王道もここまでか」
魔王は、敗北を感じ、残念がっていた。
「えっ、何で僕が殺らなきゃならないの。自分でやればいいじゃん」
勇者は私に
勇者はまだ何か言ってきた。
「大体さ、人にものを頼むのに、何で命令調なの。それにさ、報酬は何なのさ。僕は休暇だったのだから、これは時間外労働に当たるよ。当然特別報酬だよね。魔王を殺るのにボランティアなんて無いよね」
と勇者は訴えてきた。
「おい、召喚士、2分切ったぞ」
魔王が心配して召喚士に、警告してきた。
面倒くさい奴を召喚してしまった。召喚士は後悔した。そして頭を抱えた。
「頼む、魔王をヤッツケないと、後3分、いや後1分30秒で、この世界の人間が滅んでしまうのだ。頼むから、魔王を切ってくれ」
と私は頭を下げて、勇者に頼んだ。
「うーん、それは、大変だね。で魔王さんよ、アンタ、なんで、そんな事するの? 」
と勇者は、魔王に聞いていた。
「なんでって、人間が我らを攻撃するからだ」
魔王は答えた。
「それってさ、魔族が人間を食ったり、豚のオークやゴブリンが女の子にXXXしたり、XXXしたり、羨ましい、じゃない、いけないことするからだろう? 」
勇者は、魔王に聞いていた。私はその会話に割って入り、
「魔族は、魔族であるが故に討伐されるのだ。それは、お前の世界でも同じだろう? 良いから、サー殺れ、いえ、殺ってください。この通りお願いします」
と私はまた頭を下げた。
「いや、冤罪ってこともあるでしょう。両方の言い分を聞かなきゃ」
と勇者は訳のわからないことを言った。
魔族は人間に討伐される、魔王は勇者に討伐される。これは宇宙の道理であろうが。
魔王が、ちょっと、首を振って
「魔族の殆どは、ベジタリアンだぞ。それに、オークは豚じゃない。肌は緑色だが、結構イケメン、イケジョが多い。ゴブリンは、赤い帽子を被った、小人で人間の女の子にも人気だ。それに、人間の女の子は皆かわいいから、そんなXXXXなどせぬぞ。大体、この世界の魔族にはその機能がない」
と魔王が言いながら、デジタルな数字を見て、
「召喚士、もう1分切ったけどなぁ」
と心配してきた。
「なんと、じゃあ、なんで、討伐するの? 」
と勇者がこっちを、怪訝な目で見てきた。
「魔王は勇者に討伐される。この宇宙のルールだろうが。何でそこに疑問を挟む? 」
と私は答えた。あー苛立つ。なんで、こんな奴、召喚しちゃたんだろ。
数字は、あと30秒になった。
「頼むから、何も考えずに魔王を殺ってくれ。これ、この通りお願いするから」
私は土下座をして頼んだ。
後 15秒
「うーん。そういう訳には行かないな。納得いかないもん」
後 10秒
「がっハハハ、これは俺に運が向いてきた。勝利の女神は、この魔王に微笑むぞ」
と魔王がちょっと胸を張って言った。
後 5秒
「まあ良いや、しょうがないな。」
と勇者は、剣を一閃させた。
「ぐぁーーー、殺られた。ん? 」
魔王は殺られたと思った。
「ヤッター、これで私の勝ちだ。ん? 」
と私は、喜びのガッツポーツをした。
「あれ、僕の影が薄くなっていくね。元の海パンだ。戻れるのかな? じゃあね。後は二人でよく考えてみてよ。本当に闘う理由があるのか・・・・」
と勇者は消えた。
そして、「凄い宝玉」が、真っ二つになって、デジタルな数字は、1秒で止まっている。
そして、ゆっくりと消えていった。
私と魔王は、顔を見合わせて、立ち竦んだ。
〜〜
「ねえ、彼女、僕と楽しいお話しない? 魔王と変な召喚士の話」
三分間召喚士 村中 順 @JIC1011
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます