まじめな村
かみせ
第1話
むかしむかし、あるところに、とてもまじめなひとびとのすむ村がありました。
ひとびとはぜいたくをせずに、いっしょうけんめいはたらいて、へいわにくらしていました。
村にはちかくの山からたくさんの水がながれてくるので、おこめをそだててくらしています。
ある日、村長さんがいいました。
「この村がゆたかなのは山のかみさまのおかげじゃ。これからまいにちかみさまにおそなえものをすることにしよう」
村長さんはあたらしい村のきまりをつくりました。
まいにち山にあるほこらに、おわん1杯のごはんをおそなえする、というものです。
村長さんは村のきまりをつくることができるのです。
まじめな村のひとびとは、あたらしいきまりをまもって、まいにち山にごはんをおそなえします。
それからたくさんのきせつがすぎたある年のことです。
村にかんばつがやってきました。
雨がぜんぜんふらないのです。
村のひとびとはたいへんこまってしまいました。
このままではおこめをそだてることができません。
村のひとびとはかみさまに雨がふるようおいのりしました。
しかしどんなにおねがいしても雨はちっともふりません。
川はどんどん水がすくなくなり、ついには水はながれてこなくなりました。
ある日のことです。
村長さんのところに1人のおとこのこがやってきました。
村でおかあさんはと2人でくらしているおとこのこです。
「村長さん、どうかおこめをわけてください」
おとこのこはおかあさんのためにおこめがひつようでした。
おとこのこのおかあさんは、びょうきになってねこんでしまっています。
おとこのこはおかあさんにごはんをたべてげんきになってほしかったのです。
村長さんはおとこのこをかわいそうにおもい、おこめをわけてあげたいとおもいました。
しかし、雨がふらないせいでおこめはありません。
「すまない。きみにあげられるほどおこめはのこっていないのじゃ」
村長さんがいいます。
「それなら、かみさまにおそなえするためのおこめをわけてください」
村にはかみさまにおそなえするためのこめをあつめたくらがありました。
「ダメだ。それはかみさまにおそなえするためものだから、あげることはできない」
村長さんはいいます。
それからどんなにおとこのこがおねがいしても、村長さんはおこめをわけてはくれませんでした。
おとこのこはとてもこまってしまいました。
このままではおとこのこのおかあさんはしんでしまいます。
おとこのこはよるになってみんながねてしまったあと、こっそりとくらにいきました。
くらにはたくさんのおこめがありました。
まじめな村のひとびとはこつこつとおこめをためていたのです。
おとこのこはそこからおこめをすこしだけもってかえって、おかあさんにたべさせてあげました。
おとこのこはそれがいけないことだとわかっていたけれど、おかあさんがしんでしまうよりはいいとおもいました。
それからまいにちおとこのこはよるになるとくらにいきました。
それからもあめはすこしもふりませんでした。
まじめな村のひとびとはまいにちかみさまにおそなえものをもっていきます。
たべるものがなくなって、村のおとしよりがしんでしまいました。
村のひとびとはとてもかなしみました。
それでも村のひとびとは、まいにちかみさまにおそなえものをもっていきます。
こんどは村のこどもがしんでしまいます。
村のひとびとはとてもかなしみました。
それでも村のひとびとは、まいにちかみさまにおそなえものをもっていきます。
こんどは村のおんなのひとがしんでしまいました。
村のひとびとはとてもかなしみました。
それでも村のひとびとは、まいにちかみさまにおそなえものをもっていきます。
ふゆがおわってはるになりました。
村にはもうおとこのことおかあさんしかのこっていません。
みんなおなかがすいてしんでしまったのです。
おとこのことおかあさんはくらにあるおこめをすこしずつたべて、なんとかふゆをこすことができました。
村のみんなはいなくなってしまったので、おとこのこがつぎの村長になりました。
村長になったおとこのこはさいしょに、かみさまにごはんをおそなえするきまりをなくしました。
それから、あたらしいきまりをつくります。
それは、これからは村のきまりはみんなではなしあってきめる、というものです。
それからたくさんのきせつがすぎました。
おとこのことおかあさんしかいなくなった村は、たくさんのひとがすむ村にもどっています。
村にはあたらしいきまりもたくさんできました。
おとこのこがきめたきまりのとおり、みんなではなしあってきまりをつくります。
村はまた、まじめなひとびとのすむ村にもどりました。
おしまい。
まじめな村 かみせ @kamise
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