ルール・ザ・ナロウ・ワールド
naka-motoo
ルール・ザ・ナロウ・ワールド
体幹の半径50cmのエリアで、わたしはあらゆるチートスキルを行使できる。
「ナロウさーん、好きだああああっ!」
「
わたしの声でハードコアパンクのコスチュームを着た
どこに消えたのかはわたしにも分からない。
「ナロウさーん、デートしてくださああああい!」
「
虚無僧姿の
血は出てない。
なぜならわたしの似非虚無僧に対するルールづけは単に『分離』であって、『抹殺』ではないから。
だから奴は首がちょん切れてもまだ生きてる。
こんな感じで500年暮らしてきた。
長年の間に風景も変わった。
最初は小市民的で牧歌的な街だったのに、気がつくとこういうアブノーマルな輩が跋扈するスラムになってしまっていた。
500年の意味が分からないと思うので説明する。
わたしの半径50cmはわたしのつぶやきがすべてのルールと化す。その
わたしを凌辱しようと勢いよく突っ込んでくる輩を消したりちょん切ったりすることも自由自在だ。なんでもできる。
だからわたしは物心ついた時、わたしのこの半径50cmのナロウ・ワールドにこうルールづけた。
『
わたしはわたしの体を取り巻く筒のような狭量なナロウ・ワールドで不老不死となった。
ただ、注意しないといけない。
「おでん」
食事もすべてナロウ・ワールドをルールづけることによって済ませているのだけれど、
「あっちぃ!」
こんにゃくの熱さに思わずおでん鍋をナロウ・ワールドの外に出そうものならたちまち消滅してしまうのだ。
かと思えばさっきのハードコアパンク野郎やシックな虚無僧は外界で既に存在している物体なので、ナロウ・ワールド内でルールづけさえすれば・・・「滅失」というルールづけでない限り・・・消えてしまうというわけではない。
わたしが無から生み出したものは外界に出ると消え、外から入って来たものはその形質を保ちつつルールづけされる。
気をつけないと。
ナロウ・ワールドに気づいてから数えて500年と6日。
わたしはかつてない異常な輩と出会った。
「ヘイ、ナロウちゃん。俺とフクロウ・カフェでデートしない?」
「
おっとあぶない。
こんな言い回しでルールづけしたら、
も一度。
「流砂になって消えやがれ」
でも、ミラーボールを模したヘルメットにゴーグルをつけたそのライダーもどき野郎は流砂にもならないし消えもしない。
理由は単純で野郎はわたしのナロウ・ワールドに足を踏み入れないからだ。
「なぜ抱きついて来ない」
「僕は視姦するタイプでね」
出た。
真性の変態野郎だ。
500年経ってこれかよ。
「ならこっちから行く」
「welcome!」
とことんふざけた輩だ。
実害はないかもしれないけど、
わたしは近づきながらルールづける。
「
「
多少刺さって血がでてもへいちゃらだ。
「
わたしも熱かった。
「ヘイヘーイ! Come・o~n!」
狂ってる。
しょうがないなあ。
「ちょっと、風呂入る」
持久戦と踏んで、わたしは今の不毛でクソッタレな戦闘の汗を流そうと、ルールづける。
「
「おおっ!♡」
「
「がくっ」
わたしはシャワーもルールづけてナロウ・ワールドの筒の中で汗を流す。色香に惹かれて突っ込んできたら滅失するだけよ。
でも、来ない。
なのでわたしはカーテンのルールを解かない。
「Oh, No! ベイビーちゃーん、please open」
「寝る」
わたしはナロウ・ワールドを硬質化して筒ごと横になって寝た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ライダー野郎との戦闘は3日目に入った。
こいつはタバコとコーヒーしか飲んでいない。
どういう身体構造と神経構造してるんだ?
「ナロウちゃーん。いい加減ゆっくり
「ああもう」
いい加減わたしも飽きてきた。
「蹴ってあげる」
「わお」
喜んでやがる。
なら。
「シュッ!」
ピキ!
うわうわうわ。
ナロウ・ワールドの外にわたしの細い脛とふくらはぎが出た瞬間、ミイラ化し始めた!
引っ込めよう。
「
治った。
「なんじゃ、そりゃ!」
「うっさいわね。わたしはこうやって500年生きてきたのよ。あ! UFO!」
「えっ!?」
ズルッ、とわたしはライダー野郎をナロウ・ワールドに引き込んだ。
「
「おうっ!!」
シュワワー・・・・
溶けていく。
溶けて、山河の流れの如く。
いいや、小便の如くか。
ルール・ザ・ナロウ・ワールド naka-motoo @naka-motoo
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