【カクヨム三周年記念作品5ルール】 帰 っ て 参 っ た !!!
ちーよー
第1話 タイトル何かもう、どうでも良いわ!
「前回までのあらすじだよ! KAC3では、水かさが増した天の川を私に会いたさのあまり何と、泳いで参った彦星! そんな彦星と、なんやかんやKAC4で無事に七夕の儀式が済んで、重度の糖尿病患者さんがパティシエを目指す位に考えが、甘い~夜を過ごした超絶可愛い織姫ちゃんと彦星。キャー もう、大変。1日なんてあっという間! またあいつとの別れの日が来てしまった。
そうそう。もう知っていると思うけど、超絶可愛い織姫ちゃんにはツンデレだけれどイケメン無双のホントは、優しい彦星と云う……か 彼氏がいる。『彼氏』って恥ずかしいなぁ。『彼ピ』にしよう。よし、超絶可愛い織姫ちゃんには」
「……お前、何で『超絶可愛い織姫』から言い直すんだよ。ナレーション口調で心の声が漏れてる上に、誰に説明してるのかも分かんねー。それに『彼ピ』の方が恥ずかしいわ! 俺はお前の心が知りたいよ」
わ 私の心は来年まで会えない彦星で一杯なんだからね!
「おそらくだが、今思った事を口にしてくれ。そしたらお前の気持ちが少しは分かる気がする」
彦星はそう言うと私の頭を撫でて優しく抱き寄せた。
夕べも包まれた安心感と甘美なひととき。
時間は残酷だ。等しくやってくる。ルールだと分かっていても……ルールがあるからこそ禁忌を犯したくなる。
いつまでも感傷に浸っていると別れが辛くなるだけなのは分かってる。終わりが最初から見えているなら最初から好きにならなきゃ良かったけれど、私たちは一年に一度だけ会える。これが本当に厄介過ぎる。
一年かけ想いを募らせ、1日だけ爆発させて、また少しずつ少しずつ想いを積み重ねる。愛した分や愛された分だけ、別れの際に苦しみで返ってくるならば、この相手への想いは、罪重ねるだけなのかもしれない。
「もう。行かねーと。アルタイルで牛も待ってるし」
「もうちょっとだけ」
私は泣くのを我慢した。今、彦星から離れてしまうと完全に泣いてしまう。泣かない準備が出来てから離れたかった。
彦星の胸に顔をうずめたまま、何回も脳内で笑顔を浮かべ『またね』のオーディションをしたけど、合格は全然出てこない。
『またね』って言ったところで次ぎに必ず会える。なんて保証もない。
なら、そんな言葉言いたくない。
「離したくない」
彦星が言う
(話したくない)
私は心で呟く
心の準備は出来いまま時間は残酷にも私と彦星の距離を離そうとする。
「織姫。また来年会えるじゃん」
背中と頭を包んでくれていた優しく大きい手が私の両肩に置かれ、彦星とわずかの隙間が出来た。わずかなのは物理的だけれど、精神的には分厚い壁が立っているようだった。
「そんな顔すんなよ」
彦星は私の前髪を上げると軽く、でこぴんをしてきた。スイッチが入った様に我慢してきた涙が溢れ出しては止まらなくなった。
彦星は、でこぴんしたおでこに優しく口付けをすると、泣き止むまでまた抱き締めてくれた。
「彦星。小指を出して」
顔を上げて彦星を見つめた。
優しく微笑んで小指を出す彦星。
「彦星が私のものだって言うなら、覚悟を見せて。小指を……」
何、この病み全開な台詞……笑顔で冗談を言うつもりが、今の顔のテンションで言うと本気にされちゃう位にホントのメンヘラ彼女だよ。
「良いよ」
え?
「別にお前がそれで満足するなら」
彦星は小指を私の顔に近づけて来る。
ど どど どうしよう。まさか本当に小指を詰める。何て出来るわけないよ! 何て言えば誤魔化せるかな?
「ほら。早くしろよ。お前から言い出したんだろ」
さらに小指を近付けてくる彦星。もう、唇に付いちゃってるから。
え~い。もう、ガブッ!
「っつ!」
私は追い詰められた鼠の様に何故か彦星の小指を噛んだ。それも結構な強さで。
我に返り小指を咄嗟に離すと。小指を押さえる彦星。
「わっ。ごめん! わざとじゃなかったんだけど」
「あったりめーだ! いってー! 指切りだろ? 指切りげんまんが、小指を噛んで切る、ってのは何処のローカルルールだよ! 」
はっ? あ~ なるほど。指切りですか。彦星は小指を出せ。ってのは指切りだと思ってたのね。
「お前も小指を出せ」
へ?
「早く小指を出せよ」
彦星さん……目が少し怖いのですが。
彦星は私の左手を握ると、小指だけを噛んだ。
「いたっ」
でも、少し気持ち良いかも。って、思ってしまう自分が怖い。
「ほらよ。そんな強く噛んでねーから。アレだけど」
私は自分の小指を見た。そこには彦星の歯形が薄く輪っかにくっついていた。
ってことは?
「彦星、小指見せて」
うっわ~ 自分がやった行為とは言え引くわ~ 彦星の小指には、くっきりと私の歯形が輪っかになり残っていた。
「これで満足したか。俺はお前のだし、お前は俺の」
私は小さく頷いた。
「どうせ跡なんていつか消えるけど、苦しくなったり辛くなったら小指をさすれ。そうすることで、今の俺たちを思い出せるし、また会える日まで頑張れるだろ」
私は大きく頷いた。
「来る前よりも、めちゃくちゃ好きになった。会うたびに織姫を好きになる自信が俺にはある。だから、てめーも辛くなったら俺のことだけ考えてろ」
私はまた泣きながら何回も頷いた。
「じゃあ またな!」
彦星は振り返る事なく帰っていった。私は小さくなっていく彼を見つめた。想いは大きくなるだけなのに……
そして彼の姿が見えなくなっても暫くは気持ちを押さえる為に佇んだ。
さて来年にはもっともっと、可愛いって思ってもらえる様にしないと。
私はさっそく彼とのルール。小指をさすって心持ちを新たに1人でもまた頑張る決意をして家へと戻った。
「織姫。天の川の橋がまだ復旧してなく、もう泳ぐの危ないとの事で、もう少しいて良いと。年1ルール作った、お前の父親に言われ、恥ずかしながら 帰 っ て 参 っ た !!!…………」
玄関には、はにかんだ彦星が佇んでいた。
もう 何なのよ! さっき頑張って気持ちを切り替えたばかりなのに~
【カクヨム三周年記念作品5ルール】 帰 っ て 参 っ た !!! ちーよー @bianconero
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
馬券日記と競馬について語るやつ最新/ちーよー
★52 エッセイ・ノンフィクション 連載中 215話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます