脱獄することは進化である

ギンギツネ

動物実験、猿のレポート

 動物実験のレポート。


 ある地域にいる同種の猿を2匹、実験対象として観察を開始します。


 今回の実験、「猿はルールを認知した時どうなるか」という名称をもって開始します。




 実験その一、猿をそれぞれ別の檻に入れ、両方の檻に同じような餌が入った透明なケースを置きます。


 それは目の前を通る、または正面から触る等の行動をした場合、餌が出てくる仕組みとなっています。


 猿は餌を視認した際、興味を示してそのケースを触り、餌を入手することに成功しました。




 実験その二、ケースに赤く光るランプと大きな音が鳴る警報装置をつけ、常に赤く光るランプを点灯し、一定のタイミングで警報が鳴るようにしました。 警報が鳴った際には赤いランプは消灯します。


 猿は最初、赤いランプが点いていようと構わず、餌の入ったケースに何回も触ります。


 一定時間の後、警報が鳴り、赤いランプは消灯します。 猿は驚いてそのケースから離れますが、2回、3回と繰り返す度にすぐに近づくようになりました。


 そして、警報の鳴っている際に近づき、餌を手に入れることに成功しました。 ここまでに警報が鳴った数は7回、時間は49分です。




 実験その三、今度はケースに付いた警報装置を外し、赤いランプのみで餌が出るタイミングを表します。


 赤いランプが消灯すれば、近づいたり触ることで餌が出てくる合図です。


 猿は最初、無闇にケースに触らず、じっと見つめるような行動をとりました。


 そして、赤いランプが消えた際にケースに近づくような様子を見せました。 これで、「赤が点けば止まり、消えれば餌が貰える」ことを学習したはずです。


 それでは、最終段階に移ります。


 最後の実験では、ケースに穴を開けます。


 猿の手が、いや頭も入るぐらいの穴を開けます。


 もちろん、餌が出る仕組みは同じですが、穴から餌を直接とることも可能です。


 猿は一体どうするのでしょう?


 ここで、最初に2匹用意した利点を使います。


 片方のケースは穴を開けるだけですが、もう片方のケースの穴には、電流を流すワイヤーを張っておきます。 このワイヤーは赤いランプの点灯時のみ、張られる仕組みです。


 そして、更にお互いの檻を同じように伺えるよう、隣の檻に、かなり近い距離にケースを配置しました。


 実験を開始します。


 赤いランプが点灯している間は、どちらとも動きません。 しかし、点灯した後に触れた時、どちらの猿もケースの穴に気づき、手を突っ込もうとします。


 その瞬間、赤いランプがまた点いた瞬間に片方の檻のケースは電流ワイヤーが張られ、猿は鳴き喚きます。


 そして猿は一気に手を引っ込め、ケースに警戒を示したようです。


 もう片方の猿は赤いランプをお構い無しに、穴に手を突っ込んで餌をどんどん取っていきます。


 もう片方の猿はその様子をチラチラと見ながらも、目の前のケースの赤いランプをじっと見つめています。


 赤いランプは同じタイミングで点灯と消灯をコントロールしています。 同じようにまた、消灯します。


 電流ワイヤーを怖がった猿は餌が出てくるまで待ち、穴に手を入れようとはしません。


 隣にいる同じような猿はずっと餌を貰っているのに....。




 電流ワイヤーを仕掛けられた側の猿がついにケースの本体に殴りかかるようになりました。


 今まで餌を貰えたことをお構い無しに。


 きっと別の猿を見て不公平を感じたのでしょうか....これは素晴らしいですね。




 これで実験を終了します。


 実験内容は「猿はルールを認知した時どうなるか」、結果はとても良いものでした。




 これが、人間になったんですね。

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