第6話白き恋人(ホワイトマター)

「うぅ....オナ・タロー...すまない、間に合わなかった」

少女は冷たくなった尾奈太郎の手を握り、綺麗な顔を悔しさでくしゃくしゃにして、俺の胸に顔をうずめていた。

「おやおやぁ〜、もう少しあなたにウィザードとしての腕があれば、彼は助かっていたかもしれないのに」

孝明は、アイを追い詰めるかの様に煽り口調で、アイのウィザードとしてのプライドさえも崩し始める。

「貴様は、刺し違えても殺す!」

アイは顔を怒りに染め上げ、杖を孝明に向ける。

「刺し違えても?違いますよぉ〜あなたは私に1発足りとも呪文を当てられずに死ぬんですよ〜」

孝明も杖をアイに向け、詠唱を始める。

「魔術の腕なら、わたくしの方が格段に上ですからねぇ〜3秒ももてば優秀だと思いますよ〜」

詠唱を言い終わったのか、孝明の杖からは、先程のファイアボールやサンダボルトとは桁違いの魔力が大気を震わせはじめた。

「ケイオスシャドウ」

「くっ!だめだ...ここまでか」

ドス黒いオーラが膨張を始め、アイに襲いかかる。


「悪い、待たせたな」

膨張しアイに襲いかかった黒いオーラは、突然現れた童貞による腕の一振りで霧散した。

「おーこりゃ便利だ、何より腕が生えてきたのはありがたい」

俺は純白に輝く腕を満足げに眺めながら、アイに視線を向けた。

「なんだよぉ〜そんなに泣いちゃって、俺のために悲しんでくれるなんて俺、感激だよ」

驚きを隠せずにいるアイは開いた口が塞がらないといった様子で、俺のおちゃらけた絡みも耳に入ってない様だ。

「どうして、生き返って....」

まぁ最もな意見だな。

どうやら魔法の世界でも、心臓を貫かれた人間が復活するのは異例のことらしい、その証拠にあの目を開いているの閉じているのか、終始わからなかったツリ目野郎がハッキリと目を見開いている。正直怖い。

「まぁなんつーか、白い悪魔と取引して蘇生させてもらった的な?、ついでに右腕を極魔概念っていう術式付きで再生してもらった」

「「極魔概念?!?!!!」」

アイとツリ目の声は完全に同時並行だった、なんだ?そんなに驚くもんなのか?それよりお前らハモるとか、本当は仲良いだろ。

「とりあえず、これで俺はウィザードになれたってわけだ、えーと、ザーメンくんはなんて言ってたっけかな、たしか白き恋人ホワイトマターって言ってたな....」

俺に授けられたウィザードとしての力、これがアイからもらった力なのか、はたまたあの白き美少年からもらった力なのか、魔法に詳しくない俺にはさっぱりわからない。

それにしても、さっきから気になってしょうがないのだが、....俺の右腕から強烈なイカ臭が放たれている。

さすがザーメンから授けられた力だ、色だけじゃなく匂いも完全に精なる液体じゃないか。

正直この力を使い始めてから、ずっとこの匂いが放たれていたのだが、俺はしばらくの間、自分からこの芳醇な香りが漂っていることを頭の中で否定し続けていた。そりゃそうだ、俺の右腕からイカの匂いが放たれているんだぞ、誰でも否定したくなる、これじゃまるでオナニーのしすぎで、腕にザーメン臭が張り付いてしまった、年中欲求不満やろうじゃないか。

しかし、まぁ、この憎きキツネやろうと戦えるだけの力はあるようだ。

さて、散々俺の体を切り落としたり、貫いたり、好き放題やってくれたなぁツリ目野郎、ここから反撃だぜ、魚みてぇにお前の身体も捌いてやるよ。今日の晩飯はキツネのお造りだ。

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30になっても童貞だったので魔法使いになりました。 @nagato2357

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