11・飛ぶ列車

「なんだか、もう飽きちゃったわ。」

「そうかい、なら帰るといい。だが外は大変みたいだぞ。」

「そうねえ。でも、私には貴方の方が大変に見えるわ。」

 Aと舞は飛ぶ列車の中で目覚めていた。

「私の姉、あそこにいる気がするわ。」

「何で。」

「あの辺、地盤が崩れかかっているけれど、やたらしっかりした建物がその上に乗っかってるでしょ。」

「ああ、確かに。」

「姉はそういう人よ。」

「そうかい。」

「じゃあね。」

 舞は窓を開け、自らが指差したその方向に向かって飛び降りた。

 後に残ったAは窓の外が戦争によって崩壊していく様を見た。地底人は大地を割り、地上の人々は成す術もなく地下に飲み込まれていった。木々は倒れ、建物は崩れ、山は谷になった。米粒の様な人々はただ必死で逃げまどっていた。

 その中から、列車の方に向かってQが飛んできた。

 Aは彼女をキャッチすると、列車の中に入れた。

 Aは彼女が舞の探していた妹であることにすぐに気が付いた。だが家族の事に関して、Aは何も言わなかった。

「ここはどこ。」

 QがAに訪ねた。

「ここはレールを外れた者の来る世界、界を失った者の成れの果て。再生産は二度と叶わない。

 さあ、今日も新たな朝食を食べよう。」

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飛ぶ列車 ナナシイ @nanashii

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