10・戦場

Qは冷たいコンクリートの上で目覚めた。Qはすぐに自分が迷彩服を着ていて、側に自動小銃が置いてある事に気付いた。

 何処かの倉庫らしい。Qの周りにはコンテナが積み重ねられていた。

 Qは自分の懐を探り、乾パンが入っているのを見つけた。何気なくそれを食べると、ひどく口が渇いた。

 Qは水を求めて辺りを探したが、それらしい物は見つからなかった。コンテナの中は全て弾薬が詰まっていた。

 Qはここがどうやら軍の施設だということに気付いた。そして、何やら外が騒がしい事にも。

 微かにサイレンが鳴っている。

Qは乾パンを食べきることを諦め、出口を見つけて急いで外に出た。

 外は火の海であった。

 立ち並ぶ建物の中から火の手が上がっている。

Qは呆然として、その場に立ち竦んだ。

 幾人かの兵士が各々異なる方向に駆けていく。

「おい、西の方から奴らが現れたぞ

「兵舎の方に向かえ。地底から出てきたらしい

「畜生、奴らはどこだ。仲間が何人もやられた

「山の方からだ。何十人も出てきたみたいだぞ

「東の川が涸れてしまった。水を用意してくれ。何人も焼け死んでるんだ

「弾だ、弾をくれ

「いたぞ。撃て

 しかし、兵士達が指差すのは点で出鱈目な方向だった。

 Qは何をしてよいのかもさっぱり分からず走り去る兵士達の後ろ姿をただ眺めるばかりであった。

 さて走る兵士の中の一人が空を見上げながら大きな声で叫んで曰く、

「列車だ。列車だ。」

 すると、Qの背後で大きな爆発が起こった。

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