紙とペンと呪縛霊
軽見 歩
うらめし嫌ん。もうかべんして
あるホラースポットの廃屋、そこには囚われている呪縛霊が居た
「うむぅ・・・・」
自分がなぜこの場所に囚われてるのか、自分の名前が何なのかも忘れていた。そんな彼女にはある悩みが有った
「どうしてかなぁ・・・」
このホラースポットに怖いもの見たさで訪れる見学者には、いつしかルールが出来ていた。霊を鎮めるためのお札を貼ってから帰って行くというものなのだが、そのおかげで廃墟の中はお札だらけ
「何でこうみんな、適当なお札しか書かないんだろうねぇ」
張ってある手作りお札はどれも紙はコピー用紙はノートの切れ端、書くのに使ったのはマジックやシャーペンなどペン類が圧倒的に多かった。もう身近なモノで済ませてみた的な感じである
「こう言うのってさ、和紙や筆で墨を使うものじゃないの? なにペンって、せめてインク使う羽ペンとかにしてよね! そうなると紙の方を羊皮紙にしなきゃいけないら別の難易度が跳ね上がるけど・・・・、はあ」
妙な拘りで蛍光塗料で蛍光塗料で光っている物すらある護符に呆れつつ、呪縛霊は一人ぼやいていた
「もういい加減にしてくれないかな、一枚ぐらいちゃんとしたの貼れっての! 次もこんなふざけた護符貼ってきたら祟ってやるんだから」
「バサッ」
呪縛霊の後ろの割れた窓から何かが入って来て、呪縛霊はそれを見て言った
「鳥? あら珍しいフクロウじゃない。買い物袋なんか持って、どこから取って来たのかしら」
フクロウはコキコキと首を鳴らすように捻ってから、嘴をを開いて言う
「フー…、久しぶりの買い出しは疲れますね」
「フクロウがしゃべった!?」
呪縛霊はフクロウが喋ったのに狼狽え、生者には聞こえぬ声で叫ぶと建物が揺れ、フクロウは混乱して飛び去った
「ホ、ホウ!? 休憩には向かない場所だったようですね。崩れる前に離れないと」
・
・
・
フクロウが飛び去った翌日の夜、呪縛霊はフクロウに怯えていた
「昨日のは一体なに!? 変な護符なんて貼るから本物にヤバイのが召喚されたんじゃないでしょうね!? もう!誰かあの悪魔を追い払うまともな護符持って来て!頼むから!」
混乱する彼女をよそに、新たな訪問者達が廃墟の前に立っていた
「ここだな」
「ああ。組織オリハルコンを乗っ取り、今まで誰がトップに立つか決められなかったが・・・」
「ついに今日この場で決定する! 誰がオリハルコンの頂点に立ち裏社会を牛耳るかを!」
「つか、トップに立ったら確実に他の組織に狙われるから、嫌がって誰もやりたがらなかっただけなんだよな」
訪問者を見て呪縛霊はぼやく
「うわ・・・、なにあの人達。外国人みたいだけど、外国の人って下手な日本人よりオカルトに詳しいかったりするし、期待できるかも?」
呪縛霊に見守られる中、訪問者達は懐から何かを取り出す
「一応、銃は持ったな?」
「ああ、銀の銃弾入りだ」
「ライフリングに上手く食い込まなくて命中率が酷かったが、商品開発部の連中がなんとかしてくれた。」
「すげえよな。さすが世界最大の犯罪組織だぜ」
呪縛霊はその様子を見て固まった
「え、なに? 鉄砲?」
訪問者のうちの1人は、車のトランクから何か取り出した
「もっと良いものを商品開発部の連中からもらったぜ」
「なんだそれは?」
「プラズマランチャーの試作品だな。そういや幽霊の正体はプラズマだって説が有るんだったか?」
「プラズマにプラズマをぶつけて始末しようって事か。銀の銃弾より頼りになりそうだぜ」
呪縛霊はそれを見て狼狽えた
「なんかよく分からないけど科学的に私を始末しようとしてる!? 斜め上の方法で攻めてきたんだけど!?」
訪問者達は銃を構えて廃屋に突入した
「さあ行くぞ!」
「すでに死んだ者を殺せた奴が組織のトップだ!」
「幽霊が相手なんざ、流石に初めてだぜ!」
「ちょっと待てぇ! プラズマランチャーの使い方ぐらい説明しろ!」
廃屋に突入した訪問者が次々と部屋を制圧していく
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
「クリアだ!次は俺が先頭だ!」
呪縛霊は迫ってくる気配を感じ固まっていた
「手慣れ過ぎてる・・・・」
そしてついに訪問者達は呪縛霊の居る部屋にたどり着いた
「この護符を貼りまくられた部屋が本命か!」
「突入!」
「どこだ!どこに居やがる!」
「ところで、だれか幽霊見える奴いるのか?」
「あ」「あ」「あ」
最後に突入してきた男の言葉に他の訪問者は固まった
「どうしよう・・・・」
「どうする? つい何時もの感じで攻めちまったが」
「相手が幽霊だと忘れてたぜ」
「こんなSFじみた武器持ちだして言うセルフか! ホントにどうすんだよ!」
狼狽える訪問者達を見て呪縛霊は脱力する
「本当に何しに来たの? この暗殺者ども」
そして訪問者達は言った
「考えを変えたら、良い案かもしれない」
「そうか、俺達が求めていたのはナンバーワンの座じゃない」
「殺そうとしても死なない、殺せない、そんなボスを求めていた」
「そうなると・・・、つまり?」
訪問者達は続々と肩に手を置く様に呪縛霊に手を伸ばした。一人を除いて
「お前が、ボスだ!」
「世界最大の犯罪組織オリハルコン、たくしたぜ」
「頼むぜボス!」
肩に手を置かれた呪縛霊は動揺した
「あんた達、本当は私の事見えてない!?」
そして訪問者の内の一人が
「そこに居るんだな・・・。そのまま押さえてろ!」
予想外の行動に呪縛霊は泣きながら命乞いをする
「やめて! 本当に死んじゃったらどうするの!?」
だが、他の三人が銃を向けてその男を止めた
「ボスに対して不敬だぞ」
「俺達を退けて撃てるかな?」
「銃を下ろすんだ」
銃を向けられた男はプラズマランチャーを下ろし、笑って言った
「半分冗談だって! 油断させたところを仕留める腹なのかもと思ってよ。ご無礼お許しを、ボス」
その男にも肩に手を置かれ呪縛霊は怒鳴った
「あんた達、本当に見えてないの?見えてるでしょ!」
・
・
・
言いたい事言って帰って行った殺し屋連中が帰った後の翌日、呪縛霊は体育座りでふさぎ込んでいた
「犯罪組織のボスにされてしまった・・・・。どうしろっていうのよ」
そんな呪縛霊の気持ちなどつゆ知らず、新たな訪問者が現れた
「あら、今度は普通の学生さん? よかった今度は普通で・・・、もうあんなのはこりごりよ。なんか不愛想な男だけどオカルトマニア? さあこい!私に日常を返しに来なさい!」
訪問者の学生が呪縛霊の居る部屋までたどり着き、呪縛霊は彼に近づいたのだが
「ようこそ~。さ、お好きな場所にお札を貼ってね~」
「フッ!」
横一線、目に留まらぬ速さで抜かれた刀は呪縛霊の首を通り抜け、後ろに置いてあった置物をきれいに切り裂いた
「気配を感じた気がしたが・・・。俺もまだ修行不足か」
男の呟きを聞いて呪縛霊は悲鳴を上げる
「な、なな、なななな!? 何この男! 人斬り?不審者! 誰か警察呼んで!!」
呪縛霊の祈りが届いたのか、新たな訪問者が現れる
「御剣さん・・・こんな所で何してますのぉ?」
「出たなマドンナ!」
急に現れた女に男は殺気立ち刀を向ける。呪縛霊はそれを見て混乱する
「え?何この二人?」
そして二人の戦いが始まった
「こんな所で女と密会なんて! 私というものがありながら!」
「ここには我らしかおるまいマドンナ! 毒草の毒が頭に回ったかぁ!」
・
・
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ラブコメ真っ青な激戦を繰り広げた後の翌日、呪縛霊は頭を押さえながらでふさぎ込んでいた
「あの女の人には私見えてたみたいね・・・。もう、そんな事どうでもいいけど」
そんな呪縛霊の気持ちなどつゆ知らず、新たな訪問者が現れたのであった
「もう、今度は誰? ただのカップル? もう油断しないわよ」
すかっり疑心暗鬼になった呪縛霊は警戒して身構えた
「きゃあ、こわ~い名に有れアレ瞬ちゃん」
「まるで特殊部隊が突入したみたいに、全ての部屋が蹴破られてるな」
「きゃ! あの天井見て!」
「まるで手の小さな少女が天井を指を食いこませながら這って進んだみたいな痕が有るな。怖ぇ」
「あっちは置物が綺麗に真っ二つになってるよ」
「さすが有名なホラースポットだな」
呪縛霊はカップルの雑談を聞きながら、一片の油断も無かった
「その程度のこ芝居で、私が騙せるとでも? 舐めてもらっちゃ困るぜぇ・・・、ヘヘヘ」
まるで悪鬼の様な表情をする呪縛霊の居る部屋にカップルはついに入って来た
「きゃあ、壁にお札がいっぱーい」
「じゃあ、適当に空いた場所に御札貼って帰ろうか」
そう言ってカップルは本当に帰ってしまった
「え?本当に帰っちゃうの」
呪縛霊は帰るカップルの最中を見ながら、彼らが張ったお札に手を触れた
「ううっ・・・。これでいいのよ。コピー用紙でもメモ帳でも、蛍光ペンでもシャーペンでも・・・、紙とペンで書かれた御札なら」
カップルの御札に呪縛霊は涙し、人気のない場所ですすり泣く女の泣き声がすると言う噂が広まった
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そして翌日の夜
「バリン!」
廃墟の窓を突き破って、奇声を上げながらナイフや手榴弾で武装したフクロウが突入して来た
「オリハルコンのボスはどこじゃー!!! イワンとポンドと、後なんか1人の敵ぃいいいい!!!」
「きゃああ! 音に来た連中が濃すぎてこの
紙とペンと呪縛霊 軽見 歩 @karumi
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