はなだれ雪が降る

秋の桜子

第1話

ねずいろの空から おちる雪


天使の羽 形をかえしふあな雪


バサバサと おちる 白の一片


次々に 落ちて積もり行く


清らかな 白の世界に染めていく


罪を犯した 空に住まう者


羽を落とされ 地に降りる



どんな罪を犯したのか


人の運命に 関わった


地に降り立つ その者


ポツリ ポツリと語り行く



空を仰ぐ ことも知らぬ 幼い子


神に救いを願うことも


何も知らぬ 幼い子


助けを求めるるは


母なる者しか 知らない子



天から落ちた者 語る


ポツリ ポツリと紡いでく



寒空に 薄い衣しか知らぬ


青く 白い 頬をした


小さな 世界は 誰よりも

まだ小さく


暖かい手を繋ぎ 歩く小道も


知らず


優しく見守られ


蝶々を 追うことも


花を摘むことも


風とかけっこすることも


知らぬ


年を数え


歌に包まれ


新しい 年の炎を


吹き消すことも


知らぬ


子供の声が


風に乗り 空へと届いた


あやまる声が


泣く声が


空へと届いた


それは 何時もの事



天の無情なる 掟



生きとし生けるものに


手を差し出してはいけぬ


運命を 変えてはいけぬ



見守るだけの 悲しさよ


見守るだけの 無力さよ



泣く声に


あやまる声に


空を掴む小さき手に



手を差し出してはいけぬ



地上に生きる者しか


それは出来ぬ 掟



幽かに かすかな


息をしている 幼子に


どうしても どうしても


ほんの少しばかり


暖かい時を 与えたく


迎えの時を ほんの少し早めし我


求める母の姿を借り


胸に抱きし 細い体


ぬくもりを 僅かに得た幼子は


偽りでも 少しばかりの


母の愛を得たのか


微笑み遺して 時を終えた



その幼子は 何も遺さず去るのが定め


愛を知らずに 死を迎えるのが定め



我は 罪を犯した


人の運命に 関わった


天の掟を破ったのだ



ねずいろの空から おちる


天使の羽 形をかえしふあな雪


バサバサと おちる 白の一片


次々に 落ちて積もり行く


清らかな 白の世界に染めてく



チチチと 前の日の夕


空を飛びし 春の鳥


小鳥の姿は 今見えぬ


小鳥殺しの 雪が降る


はたはたはたと 雪が降る


ねずいろ空から おちる雪


牡丹の一片 白い花びら


空から 落ちて


世界をましろに


染めていく。

























































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はなだれ雪が降る 秋の桜子 @kosakura

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