行き倒れ少女と盗賊狩り

第18話

 翌日から俺たちは王都フォカリオに向けて出発した。クレアが修行の場として選んだウィスという街はフォカリオを挟んだ反対側にあるそうだ。


 フォカリオまでの道のりは徒歩で約1週間。しかし3日の距離を1日半程度で済ませた事を考えれば、3~4日程度で着くだろう。


 道中は特に何事もなく進んだ。オーク肉が予想以上に美味かった事と、『倉庫』に入れたオーク肉がまだ腐っていない事が分かった程度である。


 ニオ村を出て3日目、歩きながらの魔法発動を練習していた俺は、路上である物を見つけた。


(おい、なんだあれ?)


(人……だな。黒い髪とは珍しい。盗賊の罠かもしれないから気をつけろ)


 そう言われて、俺は警戒しながら倒れている人に近づいた。

 うつ伏せに倒れている人間は、クレアと比べてだいぶ小さかった。160cmには確実に届かないだろう。長い黒髪をポニーテールにしていて、太ももが見える位置でざっくりと切られたズボンと脛丈のブーツを着けている。更に腰には刀のような少し反り返った武器を佩いている。そして背中にはリュックを身に付けていた。

 注意しながらそれを仰向けにさせると、倒れていたのが女性だと分かった。見たところ10代と若く、着ていたシャツはヘソ出しという無防備さで、それを着ていても分かるほどの大きな胸が静かに上下している。よく見ると口が小さく動いている事に気が付き、耳を近付ける。そうすると、

「お腹が、空きました……」

 と呟いた。


(おい、これってもしかして……)


(行き倒れ、という奴だな)


(どうする?)


(そのまま放置、と言うのもあまり気が進まないな。食事ぐらいはさせてあげよう)


 そうして俺たちは、行き倒れの少女を介抱する事に決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生相手は復讐者(仮題) ジョセフィーヌ @lpgisw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ