願い事というのは良い面もあれば悪い面もある。自他の希望や意欲をかきたて、建設的な結果に導くこともある。こうあれかしという欲求だけが身の程知らずに肥大化して本人を乗っ取ることもある。
本作の尋常ならざる素晴らしい点は、予想だにしなかったトリックスターが幾つかの全く異なる展開をもたらすことだろう。ああした展開を暗喩と受けとるか直喩と受けとるかは読者によりけりだが、いずれにせよ意思決定が絵に描いたように理想的な家庭で行われたのは静かで恐ろしい重味をあとから与える。
本作が、作者が自負する通りの傑作であることになんら異論ない。『最高』が常に1つだけなのかどうかに議論の余地があるにしても。