第3話 「打ち上げ?」
「打ち上げ?」
「ああ。おまえも来いよ。」
ドラマの撮影が終わって、帰り支度をしている所に…
突然、DEEBEEの打ち上げに誘われてしまった。
「…でも、あたしなんて部外者だし。」
「なぁに言ってんだよ。
…そりゃあ、行ってみたい。
打ち上げ。
「まこさんには俺が言うから、な?行こうぜ?」
まこさんとは、うちの父さん。
メディアに出ないSHE'S-HE'Sっていうバンドで、キーボードを弾いてる。
「う…ん。」
「ちゃーんと
そう囁かれて、あたしは真っ赤になってしまう。
「あはは、おまえって正直。」
「じゃ、六時にダリアなー。」
そう言って、廊下を歩いて行った。
…明日は学校も仕事もお休みだし…
いいよね?
自分で自分に問いかけて。
「…うん。」
小さく答える。
これが見返りだ、ってことにしちゃえばいい。
そう決めてからのあたしの足取りは、随分軽くなってしまったのよ…。
------------------------------
彰ちゃんがお酒飲む所を見てみたい?
(๏д๏)ギャー‼︎
未成年ですー‼︎
前出の詩生と華月ちゃんも‼︎
まだ色んな事が緩い時代に書いたので、そのまま載せます。
スルーして下さい…( ´Д` )
* * *
「……」
つい、口を開けて見入ってしまった。
帰り間際にスタッフさんに呼び出されて、一時間遅れてやってきたダリア。
「おい、
その
「あははははは!」
破顔で、大笑いしてる。
「…どうしたの?」
呆然としながら
「飲むと、いつもこうなんだぜ?」
って…
「…知らなかった…」
「親父さんと同じなんだ。話をしたけりゃ飲ませろってくらいだから。」
「……」
あたしが隣に座った事にも気付かない。
「
「うん。」
「あとは?」
「あー…でも、今結構お腹いっぱいだしなあ…」
「…あれ?」
「え?」
ふいに、
「…
「……」
は…
初めて!
初めて名前を呼んでもらった!
あたしが感激してると。
「ちょっと聞いてみるんだけどな。」
「は…はい。」
「
「……え?」
普段の
「あのポスターだって、何だ?いやらしい仕事だな。断わっちまえよ。」
「……」
あたしは、黙って
「やきもち妬いてんだよ。いっちょまえに。」
…やきもち?
「そうじゃない。俺は心配して言ってやってんだ。」
「
「うわ~…
「何言ってんだ。仕事でもいい事と悪い事がある………。」
突然、
「な…何?」
「まさかとは思うけど、キスシーンなんてないだろうな。」
あたしは、
キスシーン…
「ない…と思う…けど…」
今もらってる台本には…なかったよね…
うん…。
「ないと思う、じゃだめだ。ちゃんと確認しろ。あったら、辞めちまえ。」
「ほら、やきもちだよな。」
何だか…
何だか、とても嬉しいことばかりよ?
いいの?こんなことがあっても。
あたし、一生分の運を使ってしまってるんじゃないかしら。
こんなに
それに、ちゃんと知っててくれたんだ…ドラマのこと。
嬉しいな。
「ほら、
「あ、ありがと…」
あたしは、最高の幸せをかみしめてしまった…。
* * *
「じゃあ、そろそろ次に移るぞー。」
あたしが2杯目のウーロンを飲んでると、スタッフの人がそう言って。
「
「つっ連れて帰るって…そんな、いつもは?」
「いつも誰かが犠牲になってんだよ。今日は、おまえがいるから任せようってことになったんだ。」
「ま…任せるって…だって、
笑ってるけど、顔も赤くないし…素面同然。
「ダメダメ。あいつ、ちゃんと帰るなんて言って、タクシーでとんでもないとこまで行ったことがあんだぜ?」
「…とんでもないとこ?」
「思い切り隣県の奥地まで。」
「……」
「タクシーの運転手に頼んでもムリなんだ。勝手にあれこれ理由つけて違うとこへ走らせちまうから。」
まるで、別人になっちゃうわけね?
「だから、誰かが一緒に乗ってあいつが家に入るのを見届けないとダメなんだよ。」
「家に入るのを見届けるの?」
「ああ。ついでなら、寝るのを見届けてもらった方が安心なんだけど。」
「ねっねっねっ寝るのを?」
「そういうこと。あ、じゃ、俺行くから。じゃあな。」
「じゃあなって…
……
「
「う…うん…」
驚きというか…発見というか…
でもやっぱり驚き。
知られざる
「早く来いよ。」
どうしよう。
「どちらまで?」
タクシーに乗り込むと、運転手さんが優しく聞いてくれた。
「あ、小森公園まで。」
あたしが答えると。
「何、おまえ、俺んち来んの?」
「…だって、
「誰が、んなこと言ったんだよ。」
「みんな。」
「そんなこたないって。今からどこか行かないか?」
「だめ。」
「
「…だめ。」
つい、嬉しくて…うんって言ってしまいそうになった。
どうしよう。
このままじゃ、あたし普段の
「ちぇっ。」
動き出したタクシーの中。
ガラスに映った
あたしは、泣きたくなるほど幸せだった…。
* * *
「…なんて?」
「だ…だから、寝て?」
ソファーに座った
あたしは、立ったまま、そう言う。
「寝たら、何かいいことでもあんのか?」
「そっそうじゃなくて…ちゃんと、ベッド。」
「ベッド?佳苗…おまえ、なかなかスゴイこと言うな。」
「ちっ違うの!
「なんで。」
「なんでって…その…頼まれたから。」
「誰に。」
「…みんなに。」
「…んなこと言って…」
「…え?」
ふいに、足が宙に浮いた。
「しょしょしょ彰ちゃんっ!?」
「いいって。恥ずかしがらなくても。」
「そっ…じゃない~!」
ベッドに降ろされて、上に…
「んなこと言ったって、俺まだ眠くないし。」
「でもでもでも!大丈夫っ!寝られるから!」
「眠くないんだって。」
「しょ~ちゃんっ!」
あたしがジタバタ暴れてると。
「……」
ふっ…と、
「……
「がー……」
「……」
ね…寝た!
眠くないって言いながらも…速攻だったな。
小さく笑いながら、
信じられない。
ハッ…
もしや、女の人に対して…いつも、こんなの?
ああああ……
考えると落ち込むけど…
DEEBEEの面々は、みんなあたしの事…応援してくれてるし…
打ち上げに女の人なんて、誘わない…よね。
「……」
柔らかい髪の毛が、頬に当たる。
そっと背中に手をまわして…
つい、あたしはそのまま眠ってしまった…。
* * *
「…ん…」
まぶしい。
と思って目を開けると。
「……」
「……」
お互い、瞬きをたくさんして、見つめ合ってしまう。
「…おまえー…」
「あっ…あ、あたし……え!?もう朝!?」
慌てて起きて、うろたえる。
どうどう…どうしよう。
無断外泊…
しかも、今日は
あたしが真っ青になってると。
「…おまえ、もしかして…夕べ、打ち上げに来た?」
後ろから、
「…う…うん…」
あたしが恐る恐る振り返って答えると、
「…ってことは…酔った俺を…見た?」
「…うん…」
「……」
「…ちゃんと、服着てるよな…」
「なっなっななな何もなかったのよ!?」
あたしが赤い顔でそう言うと。
「…そりゃ、惜しかったな。」
…笑ってる?
「頼むから、夕べのことは忘れろ。」
大あくびをしながら、ベッドから下りて。
「それと、おまえ高校生のクセに来んなよ。打ち上げなんか。」
キッチンで、水をくむ。
何だかー…何を言われても、怖くない。
それって、やっぱり…夕べの
以前だったら、こんなこと言われたら気にして気にして泣いたりしたかも。
それに。
「おまえ、聞いてんのか?」
「…だって、誘われたんだもん。」
あたしは、反撃に出る。
「誰に。」
「みんな。」
「…来ても、俺を送るようなことはしなくていい。」
「頼まれたんだもん。」
「誰に。」
「みんな。」
「おまえ…」
「だって、
少しだけ動いた
「っ……」
「…どうすんだよ。無断外泊。」
その言葉に、突然現実に引き戻される。
カバンに入れっぱなしにしてたポケベルには、恐ろしいほどのメッセージ…
「…どうしよう…」
「電話でも何でもしな。俺は、まだ寝る。」
「ま、何もなかったんだから、普通の顔して帰りゃいいよな。」
って…少しだけニヤニヤしてる。
…やだな。
もしかして、サドっ気があったりして…って、あるよね…
「…じゃ、電話借りるね…」
そっと受話器を持って、うちの電話番号を押す。
「…もしもし?」
電話の向こう。
受話器を取ったのは、
『
「え…父さんは…」
確か、希世ちゃんが父さんに言ってくれたはずなのに…
『はあ!?親父!?当然顔面蒼白んなってるよ!』
「……」
そ…それは、もしかして…
あたしが打ち上げに同行したのを知ってて、帰って来ないって事は…って、色々…ああ…
「ご…めん。今から、帰るから。」
『どこいんだよ』
「え…と、あの…友達…の…」
少しだけ振り返ると、
おーちゃん、ごめん。
使わせて。
「あの…おーちゃんちに…」
『嘘つけ!夕べ電話したんだぜ!?』
「…えっ…」
どうしよう。
まずい。
『どこにいるんだよっ!』
「そっそれは…」
『早く帰ってこ』
プツッ。
ふいに、電話が切れた。
別にあたし、何もしてないよね。
慌てて周りを見渡してると。
「おまえの弟、声でけーよ。めんどくせ~な。」
「…しょ…」
「別に、どこだっていいだろ、っつって、勢いよく帰れよ。」
あたしの無断外泊なんて、家族にとっては大事件に違いないのだけど。
まあ…
「…うん…そうする。」
小さく返事しながら受話器を置くと。
「えっ……?」
ふいに…
「……」
これ。
これって…
あたし、
後頭部を抱えられたまま、そして…目も閉じれないまま。
数回瞬きをして、確認…。
…顔、すぐそこ。
唇に…感じた事のない感触…
そしてそれは…
やっぱり、キス。
な…なんで…!?
どうして!?
唇が離れて、あたしが途方に暮れてると。
「な?『何もなかった』って、勢いよく帰れよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます