or 図形
エリー.ファー
or 図形
一番目の点がある。
次に二番目の点がある。
これを繋げて直線となる。
次に三番目の点がある。
これをつなげると図形になる。
二番目が存在しているだけでは、図形にはなれない。
それは。
それはもうおあずけなのだ。
私はそれが気に入らない。
二番目というだけで十分素晴らしいのに、何故、線だけではなく図形という大役を担わせてやらないのか。数学は何故にそこまで二番目に厳しいのか。
二番目だって図形を作りたいに決まっている。自分に任せてくれと言わんばかりのやる気に満ち溢れた二番目の点ではないか。
なので、私はとりあえず。
二番目の点で図形が作れることにした。
二番目がとても喜ぶので、そのまま近くのレストランで食事をすることにする。済ませて外に出ると、三番目の点が雨の中傘もささずにこちらを睨んでいた。
確かに意味は分かる。
二番目の点で図形ができてしまうようになると、今度は三番目の点が元から持っていた大役を奪ってしまうことになる。強情な性格をしているとは聞いていた。前に、四番目の点と一緒に四角を作って遊んでいたと聞いた。あれは正直言って自立しやすいものなので、足に引っ掛けると転んでしまう。
危ないのだ。
私は直ぐに、三番目の点を無視した。
静かな夜だった。
その内、二番目の点は自分で動き出し、一人で何かをするようになった。
だが、二番目の点は一人で動いてしまうと、今度は一番目の点になってしまうので、直線も作ることすらできない。一番目の点に連絡をとって、二人で活動し始めると今度は一番目の点が後から来たので、二番目の点ということになり、図形を作る大役を担うことになる。
一番目の点と二番目の点が大げんかをするものだから、気が付くと、それらは一つの大きな点になって、そのまま動かなくなった。
私は気が付かなかった。
しかし、通りがかった老人が指をさしてこう言った。
「円がいる。」
点と点とでは直線にしかなれないというのに、その点と点はいつの間にか、直線よりも高尚で難易度の高い円というものを生み出すのに成功していた。
私は無理に二番目の点に、図形を作り出せるという力を与えたことを恥じた。なんということもなく、二番目の点はどんな形であれ、自分の望む方向へを進んでいく手段を持っていたのである。
それから、私は一番目の点にも、二番目の点にも、三番目の点にも、四番目の点にも、それこそ、点と名の付くものには会っていない。
気が付けば、一人で今日も時間を過ごしていた。
噂によると、一番目の点が二番目の点と結婚したらしい。一番目の点が二番目の点を口説いたのかどうかは全く覚えていないし、点に性別があるのかどうかも分からない。
三番目の点は、そのまま自殺したと聞いている。四番目の点は三番目の点とかなり仲良くしていたし、酷く落ち込んだと聞いた。自分がもう少し、そばにいてあげたら何か変わったかもしれないと思っているのだろう。
仲の良かった四つの点の内一つは消えてしまった。思う所があるが、切っ掛けを作ってしまった私は沈黙しておこうと思う。
…。
と。
or 図形 エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます