アクアリウム
青澄
アクアリウム
「あ、また来たよあの人」
鯖が言った。そうなんだ、と僕は思った。
「ホントだ、昨日は三人だったね」
ミル貝が言った。
「ホントだ」
「ホントだ」
イワシたちがざわめくように言った。こいつらは他の海産物が言ったことを反復せずにはいられないようだ。
「うるさいぞお前ら。少しは静かにできないのか」
そう言った全く動かない老いたタコとは気が合いそうだ。
「もうすぐワシの人生も終わるんだ。最期のときくらい、静寂の中で死を待ちたいね」
「タコさんはどうして死んじゃうんですか?」
僕は老いたタコに聞いた。
「ん?ああ、お前さんは新入りか。まだここがどこかもわかっていないようだな」
「ええ、まあ……」
「ワシはここじゃあまり人気が無いようでな。だから助かっておるのだが」
「はあ」
さっきやって来た人が手を上げて何か喋った。それを聞いた誰かが近づいてくる。
僕は尾ビレをぎゅっと掴まれ水から引き上げられた。息ができない。苦しい。
「ここの寿司は本当に良い。特に鯛は格別に美味いね」
アクアリウム 青澄 @shibainuhitoshi
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★14 エッセイ・ノンフィクション 連載中 57話
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