切ないです。己の目標、目指すところは重要ですよね。なぜ、2番目なのか……剣士の生きざまを読んでみて下さい!
『わしの命を脅かす敵はわしの最大の友に等しい』……『バガボンド(井上雄彦、講談社、敬称略)』に、ある剣豪のそんな台詞があった。 その伝でいうと、戦死した『一番』にとっては老剣士は友だが逆は必ずしも真とはいえなかったようだ。『一番』の方からわざわざ老剣士に挑戦する筋合いはなかったのだから。 静まり返った室内に時折むせぶ咳、さらさらと羽根ペンの流れる音……全てがその道を極めた、そして遂に納得も満足もできなかった老剣士のために設けられている。 こんな記録を残せた語り部は果報者だ。
大陸一と謳われる剣士は、常に『一番と戦い続けて』いた。その事が、彼の今際の際に語られる。雰囲気はしっとりと。恐らく、戦争体験者や被災者の老人に話を聞きに行った時のような。その場はゆっくりとした時間が流れている筈なのに、語られる話は怒涛で殺伐とし、飛ぶように時間が流れる。彼が、何故自分を『二番目』と言うのか──まるで、その場で一緒に話を聞いているかのような錯覚を覚える。語り手同様に、最後にはきっと大陸一の剣士の話に没頭してしまう。