Sunday Morning
三文の得イズ早起き
Sunday Morning
文化祭で私達のバンドが出るって決まったのはもう9月に入ってからだった。
一ヶ月しかないじゃん!って私は叫んじゃったけど他のメンバーはみんな出る気ないみたいで私はイライラしてた。
「無理だからやめようよ」ってベース担当の杏は言うし、ドラムのアカリも「来年にしよう」とか言ってやる気ない。
確かに私達はまだ高一で来年もあるけども私は出たい。
唯一ギターの結衣だけが私もやりたいって言ってくれて、さすが親友って思った。ええと、私はギターボーカルね。使ってるギターはエピフォンのレスポールモデルで結衣が選んでくれた。13500円だった。
ぶっちゃけ言うとベースの杏もドラムのアカリもやる気に欠けてる。
杏とアカリは吹奏楽部に入ってて、軽音部は趣味っていうか腰掛けっていうか、とにかく軽い気持ちでやってるとこがある。
本気でやってるのは私と結衣だけ。私は本気でバンドやりたいって思ってるけどその熱意は正直うざいのかもしれない。
アカリは吹奏楽部でもドラムやってるから上手い。だから大丈夫。問題は杏だけど、ベースは弦が四本しかないからできるに違いないって私は杏に言って説得してみてなんとか手応え感じた。杏は結局アカリと仲が良いだけで私や結衣とはそんなに仲良くないからアカリがやるって言えばきっとやる。
親友の結衣はギターも上手いしピアノも上手い。子供の頃からピアノ習ってたらしくて音感が凄い。聴いた音をすぐに譜面にかける。私は譜面がまったく読めないからあんまり意味ないけど、杏とかはそれを見て練習してたりする。
ただ結衣はガチでやってるバンドが学校の外にあって、そっちが優先ってのは最初から言われてた。こっちは遊び感覚だけど、正直私達は初心者だから仕方ない。
私が気持ち込めてるバンドだけど多分空回り。
みんなにとってこのバンドは二番目の存在なんだろうなって思う。
杏やアカリの一番は吹奏楽部だし結衣の一番は私がよく知らない年上の男の人たちとやってるバンド。
久々にみんなで部室で練習して、その後でサイゼリアに行ってどの曲をやるか話し合った。
・・・と言ってもできる曲は今の所5曲しかないからそのうちの3曲を決めるだけなんだけど。
その中に私が作詞作曲した曲がある。私が鼻歌を歌って結衣が譜面にしてくれた曲。タイトルは言えないけど私は気に入ってる。
私としては当然それをやりたかった。けどまあ、みんなは嫌だよねってのは空気で感じ取ってたからそこは主張するのやめといた。
「前前前世は堅いんじゃない?これは盛り上がるよ」
アカリが言う。それ、吉田とかのバンドもやるし斉藤とかのバンドもやるらしいよと結衣が言う。
私達は初心者で下手なんだけど、なぜかみんなで合わせると毎回イイ感じに行くのが前前前世。これも結衣が私のためにキーを変えてくれて譜面にしてくれた。
私も良いって思ってた。最初の曲はこれだなって思う。
私は他の人たちがやってても別にいいんじゃない?って言った。杏もそうだよねって同意したけど、杏はアカリが言うことにはほぼ賛成する。結衣は苦笑いしてたけど。
とにかくこれで賛成多数だ。
他の2曲について、みんなで色々言い合ったけど結局決まらなくてその日は解散になった。
帰る時、アカリと杏が一緒に帰って、私は結衣と帰った。
帰りのバスに二人で乗ってる時に結衣はイヤホンをつけて何かを聴いてて、私が何聴いてるの?って聞いたら「ベルベット・アンダーグラウンド」って小さく言ったんだけど、初めて聞くバンドの名前だったから、イヤホンを奪って「聴かせて」って言ってみた。
結衣はiPhoneをいじって曲の頭から再生してくれた。
「さんでーもーにー ぶりーざどいー」
英語の曲だった。なんて曲なの?って聞いたら結衣はiPhoneの画面で曲名を確認して「サンデーモーニング」って言った。
英語の曲は正直あんまり好きじゃないんだけど、私はなんかカッコいいって思って「この曲やりたい」ってつい結衣に言ってしまった。結衣は笑顔で無理だよって言ったけど、私はなんか閃いた感じがして、結衣に「私が歌えるようにアレンジして!」ってお願いした。
結衣は「それはお安い御用だけどさあ」と言って笑った。
バスが私の降りる停留所についた。「じゃあねまた明日」って笑顔で結衣に言って私はギターケースをバスの座席に何度も引っ掛けながらバスから降りた。外は雨が振っていたけど全然気にならなかった。
明日、杏とアカリにも頼んでみようって思う。
Sunday Morning 三文の得イズ早起き @miezarute
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます