いつも2番目になる呪いにかかっている件について

あかさや

第1話

 俺はいつもなにをやっても2番になる。


 小学校のマラソン大会も、中学校の美術の授業でも、高校の期末試験でも、大学のレポートでも、果ては社会人になってからの営業成績もいつもいつも2番だ。


 2番になれるのだからいいって?


 確かに考えようによってはそうかもしれない。世の中には2番にすらなれない人だって大勢いるのは俺だってわかっている。そもそも2番というのは1番いいやつの次なのだ。それでもなれるのなら恵まれているのだろう。


 だが――


 今回こそ1番になれるかもしれない。そんなことを思ってなにかをしていると最後の最後でなにか起こって2番になってしまうのはことのほかつらかったりする。


 先月も今度こそは月間営業成績で1番になれると確信を持っていたのだが、月末間近になってインフルエンザにかかって結局2番目になってしまった。


 なにをやっても2番2番2番。俺にはつねに2番というものがついて回っている。2番になれればいいといっても、どれだけ最善を尽くしても2番にしかなれないと、なにをしても無駄なのではないかと思えてくる。


 なので、ネットで評判らしい霊媒師に相談してみることにした。


 そいつの話によると――


「ああ、お兄さんは2番目になる呪いにかかっていますね」


 クラブにたむろしているような軽薄な格好をした俺よりもひと回りは若い霊媒師はそんなことを言った。


 俺は、霊媒師に「それはなんだ?」と訊いてみた。


「要は、なにをやってもお兄さんは2番目になっちゃうんですよ。そういう星のもとに生まれてるっていうか? そんな感じっすね」


 霊媒師はちゃらちゃらした口調で言う。

 

 俺は「それはどうにかできないのか?」と訊いてみる。


「無理っすねー。だってお兄さんのそれ、運命みたいなもんですから。俺はそこそこ力があると自負してますけど、そういう星のもとで産まれた運命をねじ曲げるほどの力はありませんから。


 まあ、めちゃくちゃ時間とリソースをかければできるかもしれないっすけど、そうなるとお兄さん、たぶん別人になるか人格崩壊しますよ。お兄さんの運命をねじ曲げるわけですから。


 俺は誰かを壊したくてこういうことやってるわけじゃないっすから。それに、それだけの時間とリソースをかけるとなると、お兄さんの生涯年収くらいいただくことになりますし、成功の保証もできないんで、俺からは勧められませんね」 


 軽薄な口調でちゃらちゃらした格好の若造だと思っていたが、自分にできないことを素直に「できない」と言っているのを聞いて、それなりに信用できるかもしれない、なんて思った。


「でもまあ、お兄さんのそれ、お兄さんが思うほど悪くもんじゃないっすよ。なにしろ頑張らなくなって2番目になれるわけですから。お兄さん、いままで1番になろうとしてたでしょ。それでなれなくて嫌になってるわけじゃないですか。そうなったら発想の転換です。なにやっても2番目になれるんだからいいやって考えてなにかやればいいんすよ。要するにもうちょっと肩の力を抜いてテキトーにやりましょうってことです」


 霊媒師の言葉を聞いて、俺は「そうか」と頷いた。


 確かに、いままでずっと2番になってしまうのをどうにかしようと頑張ってきた。だがそれは結局実現せず、いつも2番目になっていた。


 どうせ2番になるのだから、頑張る必要なんてない。要はそういうことなのだ。


 俺は、それなりの金をこの軽薄な霊媒師に払って店を店を出た。


 最善とは言えないかもしれないが、悪くない答えだ。


 きっとこれも、俺が2番になる呪いにかかっているからそんな答えがでたのだろう。


 これからは、この2番になる呪いと向き合って、テキトーに2番になって生きていくことにしよう。

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いつも2番目になる呪いにかかっている件について あかさや @aksyaksy8870

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