第24話「最終話」:天国の階段を昇るレフとアリサ
リスボンのレストランは、他の人に任せ、ゆっくりと老後の人生を送りたくなったのだ。リスボンから海岸線を北上して、約100kmの海岸沿いに、ナザレ「Nazare」というヨットハーバーのある港町を見つけた。
公園もあり、ショッピングモールもあり、高台には、新しい家が建っていた。その高台から、海岸を見下ろした景色が、ひと目で気に入った。ここが、良いねと、アリサに言うと、ほんとに素敵とこたえた。そこで、不動産会社を訪ねてみると、いくつかの売り物件が出ていた。
不動産会社で、条件を聞かれ、大きな部屋の2-3LDKで、とにかく景色の良いところ言う条件を挙げた。すると、港から、坂を上がった所にある2階建ての3LDKの家を見せてくれた。海に近い所も数件見たが、景色は坂の上の方が良かった。
価格は23万ドルと言った。そこで、現金で支払うから20万ドルと言うと、ちょっと渋い顔をしたが、現金なら良いでしょうと言い、購入できた。不動産屋の店に行き、契約書にサインし、不動産屋の口座番号を聞き、入金する事にした。
入金がされたのを確認して、家のキーを渡すと言ってくれた。近くで、ホテルに1泊して、観光名所、病院、スーパーマーケットなどを場所を教えてもらった。その後、4月から、住み始め、ゆっくりとした夫婦だけの生活が始まった。
用事があるときに車で1時間半のリスボンへ出かけた。スーパーで売ってる、魚、肉、野菜、果物が新鮮で、美味しい料理もつくれて、充実した生活を送っていった。暑い夏は、アイルランド、イギリス、スウェーデンで避暑に出かけると言う、優雅な生活を送れるようになった。
数ヶ月に1回、長女のソフィアや、長男のマキシムが訪ねてくる程度に静かな生活だった。2017年も暮れて、2018年となった。この年も、ローマ、バルセロナ、パリ、ウイーンなどを回り、観光をしてまわった。
夏は、イギリスの湖水地方が気に入り、切れ名花が咲く、草原を散歩したり、カフェでゆっくり、お茶を楽しんで、平穏な暮らしを楽しんだ。2018年9月に、孫のブルーナとセルジオ、アマンダが車でポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブへ来ると連絡があり車で出かけた。
そこで、レフの82歳のバースデー・パーティーを盛大に、祝ってくれた。ブルーナとセルジオ、アマンダもアメリカで成功して、家を持ち、充実した生活を送っている話を聞かされて、ファミリーの活躍を喜んだ。その晩は、いつもよりも、楽しく、酒を飲み、ぐっすり寝てしまった。
極寒の土地に、育ち、苦労を重ねてきた人生が、やっと80歳を過ぎて、花開いて、実を結んだと実感でき、もうやり残したことはないと、感傷にふけるのだった。翌日、家に帰る前に、1泊してポルトの町の観光して回った。その後、ナザレの家に戻り、いつも通りの平穏な日々が続いた。
そんな、2018年の10月の雨の日、レフとアリサが、リスボンへ仕事の相談と言う用件でソフィアに呼び出され、リスボンに出かけた。リスボンに1泊して、マキシムの店も見て回った。繁盛しており商売は順調の様子だった。その後、リスボンから自宅のあるナザレの郊外の高台にある戸建ての別荘へ帰った。
その途中、海沿いの道を走行中、反対車線の車が追い越しをかけてきて、それをよける様にしてガードレールを破ってレフの運転する車が、海の中へ落ちた。すぐ、警察を呼んで、ダイバーの捜索をしたが、遂に、遺体が見つからなかった。現場に駆けつけたマキシムとソフィアは、泣き崩れて茫然自失だった。
これによってイワンから始まったシベリア生活から、ウラジオストク、ヤルタ、リスボンへの大移動、移住の話の詳細を知る人はいなくなったのだった。その夜の月は、まるでレフとアリサが、向かうイワン、マリア、ベロニカ、エミリアが待つ、天国への続く階段の足元を照らすように煌々と輝いていた。【完結】
極北のダイヤモンド ハリマオ65 @ks3018yk
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