第23話:金庫番をセルジオに交代

 セルジオが引き受けると言った。詳しいことは全て、書面で、メールで各自に送ると言った。これで、レフの役目は、終わって、肩の荷が下り、張り詰めてきた心の糸が、ゆるんでくるの、不思議な気持ちを味わった。


 これで話は終わりと言うと、今回も、あのマリーナを二泊、予約してもらえませんかと聞いてきたのでマリーナに電話して二泊の予約を取った。すると、少しして大きなケーキがテーブルに運ばれてきた。


 それを見て、レフが、何、これと言うとソフィアが、レスさんへの感謝の気持ち「サンクス、アニバーサリー・ケーキ」ですと言った。ケーキには、大きめのローソクが八本、火をつけたとたん、拍手がわいた。


 レフさん、火を消してというので、慌てて吹き消すと、おめでとう、ありがとうと声が聞こえ、大きな拍手となった。思ってもみなかったことに、レフもアリサも驚かされた。レフが、ありがとうと言った。何か、あのピクニックの日からウラジオストク、ヤルタと思い出が走馬燈のように頭の中を駆け巡った。


 その画面には、若き日のマリア、ベロニカ、エミリアが生き生きと描き出されて、まるで映画を見ているようだった。そして、みんなが、レフの方をみて、ありがとうと礼を言っているのである。ほんの一瞬の出来事だったが、まるでスローモーションを見ているような不思議な感覚に襲われた。


 ぼーっとしているうちに、パーティーは終了した。アリサがレフ、大丈夫と耳元で大きな声で叫んだので我に返った。脳の血管でも切れたか思ったと、笑いながら話した。三日後、孫達の大家族をレフとファミリーの大勢で見送った。そして、2015年も暮れていき2016年を迎えた。


 2016年も世界情勢は波乱の幕開けだった。1月3日、サウジアラビアとイランが国交断絶を宣言した。その直接的なきっかけは、サウジ政府が反体制派と目したシーア派指導者を処刑したことを受けシーア派中心のイランでサウジ大使館が焼き討ちされた。


 6月23日、EU離脱の賛否を問う英国の国民投票で、離脱派が勝利しました。国民投票の結果は英国経済の先行きを不透明にすると同時に、英国が抜けることはEUにとっても大きな経済的損失になる。その上、EUからの離脱を決定しながらも英国政府がEUとの「特別な」関係を求めている事に他のEU加盟国は反発した。


 続いて10月8日、米国で大統領選挙が行われ、共和党のトランプ候補が、本命視された民主党のクリントン候補を破る番狂わせを演じた。トランプ氏は、「米国第一」「米国を再び偉大な国にする」ことを主張する一方で、外国人をはじめ女性や性的少数者への差別的な発言が物議をかもした。


 そして、最終的に、トランプ氏が当選した事は、世界中に大きな衝撃を与えた。貧困、格差、人種や宗派に基づく差別、対テロ戦争への厭戦感情など、米国社会に蔓延する閉塞感と、「強いリーダー」への渇望を印象付けました。


 2017年、1月に、正式にトランプ氏が米国大統領に就任して、嫌な予感が漂っていた。案の定、メキシコとの国境の壁を作る話が現実味を帯びてきた。「多国間貿易協定」TPP「温暖化ガス削減」、パリ協定からの離脱と、次々と、唖然とするような政策を実行してきた。


 何か、今後の世界情勢に大きな影を落としそうな気がしてならない。2017年3月に、レフとアリサが、毎年出かける、ポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブの様な、海辺に近く、景色がきれいな所に、引っ越したいと考えるようになった。

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