3月号 「また会いに来たよ」2本目 リツ

 カチャリ……

 合鍵でドアを開ける。

 急いで飛行機に飛び乗ったから、こんな早朝に着いてしまった。まだ寝てるよね……。


 そっと寝室へ入る。

 ふふ、無防備に眠ってる。

 急いでシャワーを浴びて準備していたを持ってベッドに潜り込む。

 起こさないようにそっと着ける。

 全然起きないな。

 まぁ、そのほうが都合がいいけど。

 シルクのキャミワンピの寝姿はいろいろ刺激的だけと、今は我慢だ。

 俺はココさんの頬にキスして眠った。





「きゃあっ!やだっ!誰!ナニ!?」



 目を覚ましたココさんが慌ててる。



「ん……俺……」



「リツ?今日の午後じゃなかったの?」



「うん……急いで帰って来ました」



 ココさんはホントに嬉しそうに笑う。

 トロけちゃうからヤメテ。



 シルクを一枚纏っただけの柔らかな胸に顔を埋める。



「ふふ、くすぐったい」



 俺の髪を撫でた時、ココさんが気づいた。



「あ……綺麗!」指に光るは所有の証。

 一応、中指に。その辺はわきまえてマス。



 雑誌に載ってたNYの有名店の広告


「これ素敵……」


 横目でチラッと盗み見る。

 ふーん、こういうのが好きなんだ。

 すぐオーダーして、昨夜受け取ったら気持ちがアガって、そのまま飛行機に飛び乗った。



「お誕生日おめでとう」



「ありがとう」



 ダイヤを指でツンツンしながら言う



「これはマーキング?」



「そうだね、留守が多いから魔除け。悪い虫が付かないように。虫除けか?」





 俺達の関係は複雑で、何の約束もないし

 遠距離で会えない時間も長い。

 だけど、だからこそ新鮮であり続けられるし、お互いを尊重しあえる。

 この笑顔は会えない時間が作るのかもしれない。


 これからも

 俺は何度もこの笑顔に会いに来れる。

 それってすごく幸せな瞬間だ。




 嬉しいけどヤメテ。

 トロけちゃうから。


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短編集 ぴおに @piony

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