第41話彼女とこれからと
自分の道。
ただそれを信じるだけだ。
と、そう思った。
自分だけの騎士道。
疲れたな、とアンは思った。
◇
崩れそうな城からふらふらと現れた、壊れかけた白銀の鎧を見て、リーゼリットは目を丸くした。
その鎧は見たこともなかったが、その立ち姿は紛れもなく見知った騎士のものであった。
「……アン殿?」
割れた兜から見えるのは、紛れもなく彼女の顔であった。
「……リーゼリット……」
視線を向け、その背に負われたシルヴィアを見て、アンの瞳が小さく弧を描いた。
「よかった――」
気が抜けたのだろう。
当初の目的を達成したことに。少なくとも、自分が誰かを助けられたことに。
ほっとした。
リーゼリットの目の前で、彼女は崩れ落ちる。
安堵のまま、眠りに落ちたのだ。
◇
夢を見た。
騎士として、人々を助ける夢だ。
笑顔で、ありがとう、と言ってもらえる夢だ。
それはきっと、幼い頃に夢見た騎士の姿。
きっと、これから慣れる自分の姿。
なりたかった自分に、ようやく手が届いた。
◇
それから――
戦後処理等含め、様々なことがあった。
ガレス帝国を失い、人類は勢いを失った。
元々拮抗していた戦力は崩れた。
目の前にあるのは絶望であり、明日への希望を失った。
失ってばかりの戦いの中で、掴めたものは少ない。
魔王軍の進軍は続いているし、人々の生活は脅かされている。
未来は絶望である。
だけどそれでも、光を失っていない。
どうにかしようと前へと進もうとする人はいるのだ。
笑顔を求めて、希望を作る。
これはきっと、そんな騎士の始まりの物語。
人見知りの暗黒騎士さんは魔王軍をリストラされたので、今度は自分に素直に生きてみる 鉛空 叶 @kanae
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