フクロウと毛玉
囲会多マッキー
第1話 フクロウと毛玉
「ホゥ」
こんにちは、フクロウです。あまり動かないですけど、ちゃんと飛ぶことだって出来ます。だって、フクロウですもの。
最近、動く毛玉を見つけました。そこに止まると、足が中に吸い込まれます。そこから足を抜く時の快感に私はハマってしまいました。それから遊び道具として楽しんでいます。
しかし、今日は何か違いました。いつもと、何かが⋯⋯。その毛玉に乗っかるといきなり上下に動き始めたのです。私は羽を広げ、飛び立とうとしました。しかし、その毛玉は私を離さないのです。
私を捕まえようとするとは、いい度胸です。良いでしょう。迎え撃ってあげます。私は、先ほどより力強く羽を上下に振って飛び上がりました。
「ホゥ」
今度は上手く飛びあがりましたよ。どうですか、これで私の勝ちです。
毛玉は知らんぷりをします。まるで、私との勝負を知らないかのように。全く悔しがらずに、毛玉はそこから動きません。さすがに腹が立ちます。もう一度、分からせないといけません。
─────私のほうが強いことを。
私はその毛玉の別の場所に止まり、また毛を取ります。どうですか、これで減っていくはずでしょう。私は無心でひたすら毛玉の毛を抜きます。しかし、「メェー」と少し泣くだけで何を言っているのか分かりません。でも、この鳴き方は怒りではなく喜んでいる時の鳴き声です。
やはり、私のことが眼中に無いのでしょう。何をすれば勝てるのでしょう。
これは、俺がある写真につけたショートストーリーだ。
小さい頃から羊と一緒で、俺はいつも楽しかったが、お客さんは毎日数名のみ。売上的には、相当辛いということが幼い俺でさえ分かっていた。
これからどうすればいいのだろう。「何をすれば面白いのだろうか」と考えていた時に不意にSNSで仲のいい動物の写真があり、その牧場や動物園が人気になったものがあったことを思い出した。
試しに羊のモフモフしている写真を投稿したが、全く拡散もされずに経営は相変わらずだった。
そんなある日────────
いやぁ、またあの子達遊んでるよ。仲がいいなぁ。羊だけだと中々インパクトがなくて、売れなかったからなぁ。
⋯⋯いや、待てよ? 羊の上にフクロウが乗っかっているんだろ? フクロウが羊のことを毛玉と勘違いしているってのを説明すれば面白くないか?
俺は、羊の毛玉感を出すためにお尻側に回った。すると常にカメラ目線になるフクロウはこちらに振り向く。そのまま写真を撮り、先程の文章とともに投稿した。
「これもそんなに来ないだろう」と思っていたが、何故か沢山の拡散を受けた。するとすぐにお客さんが少しずつ増えていき、今までではありえない位の数の人間で牧場は盛り上がった。
この人気はすぐに廃れたが、おかげでしばらくはのんびり過ごせそうだ。親父も「えすえんえすってすげぇな」と褒めてるし。また別の話題が出来れば投稿してみよう。
──────よし、今度は「毛玉ピラミッド」だ。
⋯⋯この写真は大炎上した。
フクロウと毛玉 囲会多マッキー @makky20030217
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