第13話 少年の戦い
彼女は冷たい石で出来ている階段を上がっていた。その表情は曇っており、何日も寝てないのだろう。明らかに寝不足だとわかる。
ここは主に試合などを行う会場で第二グラウンドと言われている。石で作られており、ヨーロッパにあるコロッセオを元にしてあるため、「座ったらお尻が痛い」などの苦情はよくてでいるらしい。
階段を上がりきると、すでに生徒たちがいろんな会話をしながらその時を待っていた。
それもそのはず、二年生の最強と非戦闘系の生徒が一対一で戦うのだ。この話は口コミで一気に広がり、生徒の間ではこっそり賭けも起こっている。まぁほとんどが龍崎に賭けていて賭けになってないが。
彼女は端っこの隅に丸くなるように座る。
彼女はずっとある少年のことを考えていた。
「多分… 来ないよね…」
彼女は重々しい声で言う。
考えているその少年はもちろん龍崎の対戦相手の圭佑だ。
あれから一ヶ月学校に来てない。みんなの中で、逃げたのでは? という噂が流れている。でも、内心は嬉しかった。元々彼は私を庇っただけで何も悪くない。
今でも思う。あの時何で私の足は、口は動かなかったのか。もし今、あの時に戻れたらあんな約束を交わさせなかった。
だから今日、来ないで欲しかった。来たら確実に死にかけ、いや殺されるかもしれない。
確信はない。でも龍崎は人を傷つけることを何とも思っていない。
この学校もそうだ。優勝のためなら、人一人傷つこうが関係ない。龍崎の日頃の行いも黙認している。
本当に腐っている。
すると、グラウンドに設置されたスピーカーから、大きな声が流された。
「皆さんこんにちは!
実況で同じみのリカちゃんこと、橋爪里香
と今日はビックゲスト、会長の柊咲(ひい
らぎ さき)さんが来てまーす!」
「皆さんこんにちは
会長を務めさせていただいています。
柊咲です。今日はよろしくお願いします」
会場が叫び声で包まれる。思わず、耳を塞いでしまう。
叫び声の中には「来てよかった」や「愛しています!」などがあった。すごい人気だと思った。
「いや〜でもすごい事になりましたね〜」
「そうですね」
「実質二年最強と非戦闘系の生徒が一対一で
戦うなんて… 会長はもう勝敗知ってますよ
ね? ″未来をよむ″異能で」
「確かに知ってはいますが…
言いませんよ?」
「だっ大丈夫ですって」
里香は明らかに動揺した声で返す。
「ならいいですが…」
「ほっほら!
選手入場ですよ!
皆さん、大きな拍手で迎えてください!」
と言うと、二人の男が大歓声を受けながら戦場に入る。片方はニヤニヤしながら、そしてもう片方は覚悟を決めた顔で。
私は酷く動揺した。思わず声が出そうになった。理由は明白、彼が入ってきたのだ、戦場へと戦う為に。
無茶だ。無謀だ。ただでさえ戦闘系の異能ではないのだ。それに彼は戦いなんてしないように見えた。今すぐにでも引き返してほしい。そう願うも、無駄だった。私は中央まで歩いていく彼の姿を見ることしかできなかった。
「さぁ両者入場しました!
どんな、戦いになるのか
いざ、尋常に勝負、、、開始!」
開始直後、ものすごい風圧が生徒たちを襲った。
私も思わず目を瞑るも急いで砂を払い彼の安否を確認する。心配で今にも倒れそうだった。
だが、この後、私は信じられない光景を目にする事になった。
グラウンドには、場所を大きく移動して腕を振り抜いた姿勢で止まっている″圭佑″と、壁に激突し腕と脚が一本ずつあられもない方向に折れている″龍崎″の姿があった。
そして今の彼女は知るよしもないが、のちにこの試合はこの学校で最も有名な″努力は報われる事の象徴″として長く語り継がれる事となる。
学校革命 @Side123
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