フクロウをシンボルマークとする

大月クマ

ある日の会談

 ようこそいらっしゃいました。

 さあ、こちらにお掛けになって、お待ちください。

 お茶をご用意いたします。


 ――では、わたしは……


 コーヒーで、よろしいでしょうか?

 いい豆が入りました。

 沸かすお水もこだわらせていただいています。

 お口に合うと思いますが、いかがでしょうか?


 ――おいしいですね。外国ここでわたしの故郷と変わらないものが、飲めるとは思えませんでした。


 そうでしょう。そうでしょう。

 貴方がいらっしゃるということで、特別なものをそろえさせました。

 砂糖もいくらでもお使いください。


 ――お気遣いありがとうございます。


 では、ビジネスのお話をしましょう。

 貴方のお国が、隣国からの侵略にさらされていることも、存じております。

 で、我々にどうしろと?


 ――隣国の侵略から国民を守るためにも、どうかお力をお借りしたい。


 我が協会のモットーはご存じだとは思いますが、

 『どんな国家にも均等に接し、軍事、まつりごとには口出ししない』となっております。


 ――それは存じています。


 我々に対する対価は?

 対価のないままで、我々の技術だけを提供するのは出来ません。


 ――隣国に技術提供をしていると伺っていますが……せめて、それを止めていただきたい。


 それに対する対価は?

 対価がないまま、技術提供を止めるわけにはいきません。

 我々は、貴方の隣国から相当な対価をいただいている。


 ――我が国は小国です。あなた方を満足できる対価は……


 ありますとも。

 あなた方が気づいていないだけで、我々に十分な対価となるものが……


 ――そのようなものは、我が国には……


 向こう一〇〇年間の、鉄道事業を中心とした広範囲にわたる事業の権利をいただきたい。

 その代わり、隣国への技術提供の即時停止並びに、貴国への技術提供をお約束します。


 ――そのような……横暴ではないですか!


 貴国の国民を守るためでしょ?


 ――あなた方は、それで利益を得ようとしているのですか!


 我が協会の情報局によりますと、今回の紛争は貴国が開始されたとのこと。

 挑発行動を取られたのは、貴国の方ではないですか?

 それで劣勢になったために、我が協会に助けを求めているそうではないですか?


 ――そっ、そのようなことは……


 無いとでも? 我が協会の情報局は優秀です。

 この紛争を始められた者の名前を、さらすことも可能ですが、いかがなさいますか?


 ――あなた方の本当の目的は、なんなのですか?


 我々の目的? 今更、それをお聞きになる。

 我が協会は、あまねく技術の発展と共有を目的としております……ただそれだけです。

 そのためには手段を選びません。


 ――そのために、戦争をも仕掛けている等、噂もありますが……


 ええ……突出した大国が存在しないよう務めております。

 なぜ我が協会の情報局が、フクロウをシンボルマークとしているのかご存じでしょ?


 ――その目であまねく国々に目を光らせるため、とでもいいたいのですか?


 いえ、彼等の灰色の翼。それこそ我々が求める世界だという事です。

 白でも、黒でも、正義も、悪も、すべての色が混ざり合う色。

 それが、灰色です。

 戦争ごっこはお好きなだけ、貴方方になさればいい。

 我々には貴国の国民を守る義務はありません。


 どうされますか? 我々の要求を受けますか?

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フクロウをシンボルマークとする 大月クマ @smurakam1978

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