ついに三蔵法師メインの話です

 「にしてもなんですかあの強さ」


 サクたちが戻った後、三蔵法師一行はサクたちについて話していた。


 「俺がまだ子供の頃に一度、あいつがこの世界に来たんだよ」


 「玄奘殿と、あのサクというお方ではどちらがお強いのですか?」


 悟空の問いに他の二人も興味津々だ。


 「フッ、俺なんかじゃ歯がたたねぇよ」


 「玄奘殿でも……それは凄まじい強さですね」


 「と言っても、本気で闘ったこともないけどな」


 「では、今やり合えばもしかすると玄奘殿が」


 悟空はどうしても玄奘の方が上だと信じたいらしい。


 それもそのはずだった。玄奘はこの一行の長ということもあるが、それは単に玄奘が三人を集めたからというだけではなく、玄奘の強さが四人の中で群を抜いていたからだ。


 「いやいや、言い方が悪かったな。本気で相手なんてしてもらったことがねぇんだよ。そもそも、俺はあいつに闘いを教わった」


 「教わったって、玄奘殿の師匠ということですか」


 「まあ、そんなとこだな。あいつはオレを師匠だと言うがな」


 「どーいうことですか?」


 「まぁ色々あんだよ」


 (にしてもあいつ、ほんと昔から変わらんな)


 玄奘は少し昔を思い出していた。






 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 


 


_______今から数十年前玄奘が、まだ江流と呼ばれていた頃。


 一人で山奥に篭り、修行をしていると突然サクが現れた。


 「ガキンチョこんなとこで何してる」


 「!!。あんたこそ何してる!」


 後ろから声をかけられた江流は、咄嗟に構える。


 「俺か?俺はいろんな世界を周って強いやつを探してんだよ」


 「強いやつ?」

 

 「そうだ」


 「だったら何でここに来た?俺は#まだ__・__#強くないぞ」


 「なるほど。まだ……か。確かにな」


 自分では言ったが、改めて他人に肯定され江流は少し頭にきた。


 「だからこそお前に会いにきた。お前はまだ強くない。だがこれから強くなるだろ?」


 「ああ」


 江流は力強く答える。


 「俺はお前の修行を手伝ってやる。その代わり、俺に闘い方を教えろ」


 「は?何言ってんだ?」


 「いいからほら、やろうぜ来いよ」


 サクは構えもせずポケットに手を入れているままだ。


 しかし、そんなサクに迂闊に攻撃を仕掛けては負けると、江流は子供ながらに感じ取った。


 「やっぱりお前は強くなる。楽しみだな」


 サクはどこか嬉しそうだった。


 「いくぞ」


 江流は札を3枚取り出すと、一枚をサクめがけて飛ばす。


 札はサクの顔の前で、小さな爆発を起こした。サクの視界を奪い、懐に潜り込むと次の札を構える。


 しかし、サクはそれより速く江流に蹴りを入れた。_____筈だったが、その蹴りは当たらない。


 ユラユラと江流の姿が消える。と、サクの後ろから飛びかかる。


 しかしサクは反応した。振り返り、今度こそ江流に蹴りが入る。


 「ガハッ」


 江流の体が大きく吹き飛ぶ。


 「ほら、どうしたそんなもんか?……!!」


 立ち上がろうとする江流の姿に違和感を覚えた。


 (あと一枚あるはずの札がない?)


 !!


 サクが地面に目をやると、いつのまにか、そこには札が貼ってあり、その札を中心に地面が渦巻き始め、サクの体を吸い込んでいく。


 「すごいな。蹴りをもらうことは覚悟して、こんな仕掛けを……。いや、ほんと楽しみだな」


 そう言うと、サクは土の中で脚を思いっきり蹴り上げた。


 ドンッという音と共に、地面に三メートルほどの大きな穴が空く。


 「バケモンかよ」


 江流は震えてた。


 怯えていたのではない。江流もまた、楽しんでいたのだ。


 「さあ、じゃあこっちの番かな」


 サクのその言葉に江流はニヤリと笑みをこぼした。


 「誰が札は三枚だけだと言ったよ」


 江流の頭上には十数枚の札が浮いていた。江流が指をクイッと動かすと、札が全てサクめがけて飛んでいく。


 「なるほどな。確かに誰も言っちゃいねぇな」


 先ほどの江流と同じように、サクも笑みをこぼすと、大きく息を吸い、勢いよく札めがけて吹き出した。


 サクの吹き出した息は、突風を巻き起こし、札を全て吹き飛ばした。


 「な……嘘だろ……」


 「ま、これから強くなっていこうや」


 江流は後ろから頭にポンッと手を置かれ驚いて振り向くと、サクが楽しそうに満面の笑みで立っていた。


 「ほんと、何者だよ」


 「俺はお前の師匠になる。だからお前も俺の師匠になれ」


 「ハハ、訳わかんねぇや。でも、よろしくお願いします」


 江流は深々と頭を下げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界無職の永遊譚〜無職が転生して最強?いやいや元々異世界でニートしてます〜 葵空 @AoiSora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ