第9話 !②
四時限目の授業が終わり、昼食の鐘が鳴る。煙たい表情でレジ袋を机に乗せて、席を起とうとしたらマルフォイが教室の前に立っていた。手にはレジ袋を持っている。肩に素朴な肩掛けバックを提げているようだ。アイツもコンビニで買ったのか。この高校には購買部があるのだが、並ぶのが面倒なので使わない。というか、この時間は生徒でごった返していて、並ぶ気にならんのだ。一様、好きなラムネのお菓子が置いてあるから買いたい、という欲求があるのも事実。でも並びたくない、このもどかしい心情、帰りにオモチャ屋に寄って発散しよう。それか、オモチャ屋の前にあるビデオ屋で欲しかった映画の円盤でも買おうかな。思うにこの気持ちは、オモチャ屋に行ったのにお金が無くてなにも買えなかった気持ちと似ている。何が言いたいのかっていうと、欲しいところに手が届かないって意味だよ。
今朝は気持ちが昂ぶってて、行動と口調が変だったな。反省しなければ。
僕の生まれは函館、今は家族共々離れて遠く離れた登別市の富士町に住んでいる。富士市は山と海にサンドされ、都心の外はほぼ田舎で、有名所は温泉で暇さえ出来ればたまに行く程度だ。人口は知らない、特徴は温泉、登別市は観光名所を良く魅せたいのか都会風にちょっと気取っている。高校もその一つだろうと適当に勘ぐっている。根拠はない。善く言えば、水のように淡泊であり、悪く言えば、底の浅い見栄坊の町である。ここ以外で住んでみたい所は、じいさんが住んでる京都か。彼処は良かった。気温が安定していたし、住みやすそうだと感じたからだ。しかし、まあ、一人暮らしを決意した時、気でもとち狂ったのか、京都ではなく登別市を選んでしまった。両親とは、こちらから絶縁中だが彼方からはその気がないのか、週に一回くらいの頻度で電話がくる。やり直せるなら、きっと京都を選ぶだろう。15の誕生日の前に戻れたなら…。
学校の生活は絶賛、普通くらいかな。謳歌しているか、と訊かれたらそうでもない。彼女はいない。部活もやってない。でも、傍から見たら剣道部か演劇部にでもいそうな、そんな格好をしている。格好だけは一人前、て感じかな。
土産が入ったバックと筒を提げて、席を起った。
「よっす」と気さくな挨拶をマルフォイがし「おっすおっす」と返した。
マルフォイは気さくで、物腰は普通、性格はマイペースだが温和ではない。髪型は特に決まっているわけでもなく、ボサボサとしている。制服もワイシャツだけくしゃくしゃで、ネクタイは結び馴れていないのか、ヨレヨレだ。
「マルフォイ、ネクタイ曲がってますよ」
眉尻を下げ、胸元に手を当てながら視線を落して、手で触るとネクタイが曲がっていることにようやく気づいたようだ。なんて謂うか、自分で気づかないものなのか。時に、僕もネクタイの擦れに気づかない場合もある。それは寝不足の時。となるとコイツも寝不足か。
マルフォイは僕のネクタイを見ながらネクタイを締め直した。
「サングラス、頭に付いてるけど、よく注意されなかったな」
マルフォイは頭を少し上に傾け、空いていた片腕でうなじを触り、
「それにしても、昼は暖かいな。できれば朝方も、このくらいのほうがありがたいんだけど…」
と、気怠そうに言った。しかし、どこか陰鬱のようにも見える。顔色は変っていないのに反し、雰囲気だけいつもと違う感じを醸し出している。
「今日も屋上で食べよう。暖かいんだ」
はりーシは肯き、頭の後ろで手を組んだマルフォイを目の端で見て、瞼を掌で押さえつけ、歩きながら目を閉じ、その暗闇から、
「なあ、マルフォイ」
「ん? なんだ?」
僕は、今朝合った不思議な男女の事を話す事にした。
内容はかなり薄めではあるが、まあ、話題噺にしては上出来だろう。
「今朝方、変な男女に会わなかったか?」
「ん? 変な男女? どんな」
「あ、え…と」
腕を組み、通り過ぎる学生を横目で追いながら考える。購買部へと行くのだろう。と頭の片隅で妄想した。
何て伝えようか。伝えようにも情報量が少なすぎる。まずは服装と関係性か。あの二人は付き合っているのか、それとも大学のサークルの活動で偶然あの場所に居ただけなのか。でも、同じ服装だったし大学生なのかも怪しい。留学生なら有り得るか。それとも服装は、そういうファッションというのではないだろうか。若しくは、アニメか漫画等々のコスプレという線で説明しよう。うん、そうしよう。それでは関係性はどうする。見た目で判断は難しい。やはりここは、『謎の男女』と謂う事にして於こう。そう簡略的に、だ。そう難しく関係性を見解だけで解釈して、説明を解りにくくするのは、ないな。次は、何のアンケートかというのだ。おそらくは、コインの裏か表のどちらが多く出るか、を調べているのだろう。大学で確率を調べるサークルが在れば、あり得る話ではある。だが、大学に行ってまで中学生がやりそうな事をやるのか、疑問ではある。であれば会社の企画で…だとしてもあんなアンケートはやらないか。とすれば、テレビの記者か。下らない記事になりそうな予感しかしないので、有り得なさそう。そうだ、教育番組の企画でコインに纏わるアンケート取る為に訪れていた。これでどうだろう。いや、しかし、何か現実味がないな。そもそもテレビの取材なら、アンケートを取る前に軽い説明がある筈だろう。とすれば…同業者か? 迷走してるな。ここも適当にして於こう。マルフォイの問いに合わせた解を、その場の考えで回答。それで行こう。彼是考えた所で何も変わらないのなら、仕方がない。
何か、毎回のようにこんな小さい事で悩むと気持ち悪くなる。それと胃。
階段を上り、マルフォイは手摺りに手を置きながら、僕は一息吐き。
「コインの裏と表、のどちらかを当てて貰って…結果を男のメモ帳に書いて…」
「なにそれ?」
当然の反応に、思わず首を竦めた。
「それが分らんのだ。興味本位でそのその質問に答えただけで、それ以上はわからない」
右腕で首を撫でると「そうか…」とマルフォイは頭を傾けた。
これって所謂「分らない×分らない」の完全なる分らん殺しじゃん。あーくだらね。少ない情報を無意味やたらに、無駄に錯綜しただけ何だよなー。やっぱり、謎の男女にまた合わないと行けないんですかね。
屋上へのドアは既に開いており、潜ると何人かがベンチに座って昼食を摂っていたり、床に座って昼食を摂っていた。
肘を曲げて腕を前に出して親指と人差し指を擦り合わせる。こうすると、雨が降りそうな気がしたり、湿気がどうのこうのってのが判る。
僕らは海と校内の両方を覗ける最高の場所である屋上の角らへんに腰を下ろし、荷物を自分の隣に座り背の高いフェンスに背中を寄せた。
そこから観える景色は独特で、別れている校舎を渡る通路の下には川が流れており、川沿いに当たる校舎の中庭には部活の勧誘に勤しんでいる先輩方がいるようで、我々の後ろには海、そして山の絶景が観える。絶景と言っても、景観は街の奥に山がある程度の景色、という人が違えば素朴で二、三度見たら見飽きてしまうだろう。時に、偶にうみねこの鳴き声が聴こえる。校舎が別れている分、部活の種類が多い。似かよった部活動とかもあると思うが、それが何なのか知りたいとも思わないから気に掛かる程度でよくわからない。
「さて、食うか」
レジ袋からサンドイッチとポカリスエットを取り出し、マルフォイは紅茶のペットボトルと御握りを数個出した。
マルフォイの昼食と自分の昼食を数回見比べ、
「マジかよ」
と偏見染みた台詞をつい吐いてしまった。
「なんだ。御握りに紅茶花伝は合わない、て言い草だな」
両手にこれから食べる物を乗せ、顎を少し上げた。御握りの方はパッケージが指で隠れていて見えない、飲物の方はというと、乳白色の色合をしており、指で見えにくいものの彼のいう通り「紅茶花伝」と書いてある。
それにしても御握りと紅茶か。合うのか合わないかはさておき、見た目的に合わなそう、て感想が選考しちゃうかな。それに紅茶って、飲んだ事もない処女だから感想も何もへったくれもないんだけど、というより批判するなら一度飲んでみないと意見のしようがないわけでして。
「いやそうだけど、合うのかのか?」
「合う。気になるなら自分で買って試してみるといい」
耳の後ろを掻きながら目を細くし、戸惑うと、帰りにでもコンビニに寄ることを誓い、
「ああ、遠慮しとく」
と、サンドイッチを頬張りながら喋った。
マルフォイは器用に片方の眉根を下げ、もう片方の眉根を上げ、さらに半笑いにも似た笑みを浮かべながら、納得しているのか分からない顔をし、悪戯な目で遊戯を見る。
「それと、今朝、爺さんから送り物が来たんだ。エジプト土産かな? 見るか」
鞄を開け、土産を取り出すと床に置いた。
マルフォイは土産を一度一瞥して、
「いや、いいよ」
とズボンのポケットに手を入れ、携帯を手に取り、鼻下を人差し指で擦りながら考え込むも横目で土産と筒を気にしているように見える。
「それより、その筒は? 毎日持ってくるけど、部活はやってないだろ」
「これは、防犯用の防具」
これは、引越した時に記念に何か買おう、と思ってネットショップを徘徊中に見つけた幾つかある候補の内の一つだ。その当時はあまりお金がなかったから価格的に安くて、見栄えがある物はないのかと探していた。目的は飾るだけ、それだけだった。本当に。その時、この竹光を見つけた。そして、その瞬間、置物から改造や防犯に使えるのではないか、と思いつき高かったが二本買ってしまった。後悔はしていない。でもこの竹光は、防腐処理とメッキ塗装だけが施されているだけのまるで竹光の見本のようなものだった。商品名を見たら「稽古用」と書いてあった。
名目上はそうだが、本音は、後々パソコンやタンス、ピアノに本棚なんかを揃えていたら竹光を飾るスペースがなくなって、立てかけるしても見た目が悪く、何か名案か代替案となる自分が納得いく妙案がないかと考えた末に、防犯と改造を思い付いた。この筒はその時買った。
二本も買ったのは、見栄もあるが何より格好良かったからだ。二刀流、何か言って遊んだ覚えがあるが、上手く使えなかった。
改造はまだしていない。やり方が判らないから、放置しているだけでもあるけど、何れはこの二つの刀を連結させて回したいものだ。
「男が? 要るのかよ」
「俺には要る。有名人だからな」
一つ目のサンドイッチを食べ終え、筒を横に置いて蓋を開け、竹光を見せ、直ぐに了った。
マルフォイは器用に片方の眉根を下げて、ふてくされたように口の端を上げクスリと笑っている。納得したのかどうかは判らないが、取り敢えずはいいだろう。
もし仮に法律を遵守するなら、筒と鞘を外さないと持ち歩けないが…どうだろう。つまりは、刀を隠さずに剥き出しのままベルトにでも差して持ち歩かないと捕まるという訳だが。それだと、壊れるわけで、特に刀身部分がボロボロになると、見た目が悪くなってしまう、これは非常に悩ましいな。
「ネットの住人&ネットの掃溜めで生きているような『はりーシ』さんがね」
「確かに、はりーシには、一定数のファンが付いてるし、視聴してくれる年齢層は―」
「小学生から高齢者まで、かな」
年齢層は、視聴者層のレーポートから算出されるグラフとDM(ダイレクトメール)である程度は把握している。アカウントが親の場合もあるが、如何にもコメントの内容がクソガ…未来ある若者かそうでないか否か、独断で判断しているけれど、そこは判らない。ネットの海、誰が何のコメントをして、それが誹謗中傷だとして、そのアカウントをブロックしても再度別のアカウントでまた来る、なんて事は当たり前。あと送られるDMは全て見ているし、返信している。具体例を挙げるなら、中学一年生のガキから応援コメントが来た。それと、視聴者様の孫のじいさんからDMが来たりもした。内容を纏めると、孫が交通事故で亡くなり遺品を整理していたら僕の動画を見つけて、僕がそのじいさんの孫のメールに反応して返事を返していたからじいさんは勘違いをして、僕とそのお孫さんが亡くなるまで仲良くしてくれて嬉しかった、とDMに送りつけて来た。内容からは何の事なのかよく判らなかったが、そのじいさんのメールを見た時確信した、と同時に返信辛くなってしまっている。そのお孫さんは動画のコメントとDMに毎回のように「うんこ食え」と送ってきたクソガキだったのだと。因みに男女の比率は、あまりない。
「そうそう。しかも、はりーシも企業から依頼とかも来ているそうじゃないか」
「お前程じゃないにしろ、来てるよ。でも殆どは、断ってるよ。だって趣味ですから」
マルフォイとは扱ってるジャンルが違うし、何より僕の動画はあくまで趣味。コイツは僕と少し違うが動画の更新は不定期で、更新しない月なんかもある。お互いに。マルフォイの場合、不定期更新が当たり前。でも人気があるようで、動画の数とは裏腹に再生数だけが異様に延びているようで。そのせいか企業から作曲の依頼なんかも来ているようだ。
「勘違いしているかもしれない事を今、此処で説明しよう、とその前にパズルを何個か作ったんだ。解いてくれ」
バックを開け、パズルを書いたノートとシャーペンを手渡した。
幾つかってのは、ナンプレや迷路、ナンバーリンク、コネクト…。ピクチャークロスパズルていうのも書きたかったんだけど時間がなくて、というより構想が纏まらなかったから手が着けられなかった、といった言い回しの方が打倒かな。ピクチャークロスパズルはだいたいパソコンありきだから、手持ちのノートじゃ無理。描けないとかじゃない。でも描こうと思えばノートでも描ける。ナンバーリンクに関しては二種類作っており、ゴールは出来るが個人的にではあるが、かなり簡単なゲームになってしまっている。理由は「ナンバーリンク」と「阿弥陀籤」の要素を組み合わせようと安易に組み立ててしまったため、成ってしまい、かなり出来が悪くなっている。謂ってしまえば簡素か。一様自分でテストプレイしてゴールまで行けたけど、今更だけど思い返すとイマイチだな。名前は阿弥陀リンク。…語呂悪いな。修正が必要だ。名前はナンバーリンク、阿弥陀籤を合わせた造語なんだが肩透かしを食らったみたいでなんだか納得いかない。でもナンバーリンクと阿弥陀籤自体作りやすいし、簡素な原因はそいつらの仕業か。まったく、けしからんな。
ナンプレは一般的なモノ。縦9升、横9升、難易度は解らない(計れないので知りようがない)のよくあるヤツ。迷路は後述。
ナンバーリンクはナンプレ同様にわりと自由に作れるけど、数字の配置は特に決まっていない。線が数字に繋げられる配置にすれば誰でも作れるが幾つか簡単なルールがある。ナンプレで喩えるなら、どの縦一列にも1~9の数字が一個ずつ入る、どの横一列にも1~9の数字が一個ずつ入る、区切られた3×3のどのブロックにも1~9の数字が一個ずつ入る、とかいう大雑把なルールがある。ルールを言い換えるなら、縦横どの一列にも同じ数字は入らないし、区切られたブロックにも同じ数字は入らない。独数。ナンバーリンクのルールは、簡単、盤上の数字は1~8までで同じ数字同士を線で繋ぎ、線は縦横に引き、斜めには引かない。尚、斜めに接した升同士を直接線では結ばない。線は交差や枝分かれをしない。また、一つの升に二本以上の線が入ることもない。それだけ。色んな種類のナンバーリンクがあるけど今回はオーソドックスにしたつもり。簡単で難易度も調整し易いからオーソドックスなルールにしたって理由付けがあるけど、訊かれなければ応えないつもりだ。
コネクトは、要素的にはナンバーリンクとだいたい同じ。違いは数字が色に変った程度か。工夫としては、音譜とかを入れると面白い。
迷路もナンプレと同様に万人受けするよう構築している。所謂「ストラクチャーデッキ」。ある程度の法則が始めから成り立っており、手の加え方次第でどんな形にもなれる汎用性あるモノ。有り体に謂えばルールさえ解っていれば誰でも作れる、ということだ。デッキは余計だったかな。ではどのような迷路を作ったのかというと。迷路というのはスタートとゴールが対面にあったり上または下、真ん中にあったりする。工夫を加えるのであれば言葉や単語を交ぜたり、対戦型のレースゲームにしたり等々。解き方も幾つかあるが今回のゲームとは関係がないので省く。僕のパズルは、まず始めにスタート位置やゴール位置といった概念はあるものの、スタート側とゴール側で構成されている。そのため、スタート側であれば何処からでもスタートして大丈夫。そもそも位置ではなくどうして側なのか、それは組み合わせた阿弥陀籤とナンバーリンクの要素、それぞれに原因がある。
まず阿弥陀籤のルールは、
1.籤の参加者人数分の線を引く
2.適当な横線を引く(斜めの横線でもいい)
3.当たりの目印を入れる
4.下の部分を隠す
となる。普通は下端に書かれた当たりが見えないように下半分を隠した状態で、参加者全員がそれぞれのスタート位置を決めてゲームを始める。仮に阿弥陀籤を書いた人も参加する場合は、スタート位置を決める順番は最後になる。そうしないと不公平になる。
全員のスタート位置が決まったら、隠していた下半分を開けていよいよゲームスタート。プレイヤーは選んだスタート位置の縦線を上から下に進んでいき、途中に横線があれば横線にそって進み、縦線まで着いたらまた下に進む。これの繰り返し。このゲームは横線が何本あっても、重複することのないゲーム性になっている。実はこの阿弥陀籤、公正ではないゲームでもある。
対して僕が選んだナンバーリンクは、
1.盤上にある数字を線で繋ぐ
2.線は縦横に引き、斜めには引かない
3.線は交差や枝分かれをしない。また、一つの升に二本以上の線が入ることもない
4.盤上の数字と繋いだ線の合計は同じであること
このパズルの特徴てして見られるのは、ルールを理解してしまえばゲームは単調であり、難しくはない事と数字同士を繋ぐ線がこのゲームだと直線であるため、数字の配置がある程度決まっている。規則性さえ理解してしまえば、詰みそうな盤面でも簡単に凌げてしまう。それでも詰んでしまう盤面の場合、それはクリアできない設計にした書き手側に問題がある。作り方もナンプレと違いお手軽な所もこのパズルの良い特徴か。
だがこのルールだと阿弥陀籤のルールに反してしまうため、ルールの改造と、ルールを咬み合わせて、独自のルールを作りました。一からゲームを作るのは苦手なもので、まったく五里霧中でした。それにこのゲームを作っていると誕生日を彷彿とさせる。それは心地良く、それはとても印相的で、忘れた彼の人で、思い出の場所を忘れている記憶のようで、何処か旅路に似ている。
1.阿弥陀籤式に引いた線の上を進んで、先の数字を減らす
2.全ての数字を0にする
なんか、風呂敷を広げたのはいいがどうも纏まりがつかないルールになったと思う。ゲーム性は、簡単で拡張性があるものの直ぐにでも飽きてしまいそう、という客観的な感想で、善く言えば、質朴で面白そうであり、悪く言えば、おませな中学生が考えた超お手軽で剽軽なゲームである。粗末なルールでもあるか。と言うのも、その場の思い付きで作ったものだから仕方ないのかもしれない。よく練れば、善いものに仕上げられる。次回はルールをもっと考えないといけないか。
(書こうと思ったのですが、どうやっても書けなかったので、代用を書きます。ナンバーリンクの中でも主流のものを使います。升目がないからやりにくいと思うけど、不甲斐ない私を許し↑てくれ↓許してくれ。何故なのか、カクヨムだと挿絵が使えないらしく、仕方なくこの手法を取らせて頂いました。不評の場合は推理パズルに変えます。)
『 パターン1 難易度:分からん
ルールは、同じ数字同士を線で繋げる。
線は重ならない 』
1
2
34 4
53
1
8 7
87 6
2 6 5
『 パターン2 全ての数字を線で繋げて、ゼロにしろ。
ルール、全ての数字を線で繋ぐ
最大で2本まで引ける、線は直線であり途中で曲がらないし重ならない
数字は線を繋げられる上限であり、超えてはいけない。
このパターンのバージョンは簡単で、理屈さえ分かれば解ける。ゲームとしても使われているから、ルールをしっている人にはつまらないゲームなのかもしれない 』
2 3 1
2 5 4
4 2 2
6 6 6 3
3 3 2
11000111100000011001010111000111
10000001011000011100011110000001
11101001110001111000000101100101
11000111100000011100100111000111
10000001011000011100011110000001
01010101110001111000000111000101
110001111000000111111001
これも、全ては僕の癖、飽き性から生まれた創造物ではある。書き出してみてなんとんく、面白みに欠けると思った。でも、初めて作ったオリジナルのゲームとして見た所、うん、こんな所さんか、て感じたよ。
互換性のあるパズルであれば、組み合わせ次第で自分なりのパズルが作れる。模型…プラモデルの改造で例えると、パーツの構造が多少同じだったり組み合わせにあたってパーツごとに互換性があったり、パーツの形が違っていたりしますから、そこを改造したり少し手を加えるだけでオリジナルのプラモデルが作れる、て感じかな。いや、なんか違うな。
サンドイッチを食べながら視線を土産に落として、次のパズルの構想を練る。
御握りを咀嚼し、紅茶を飲み終え、床に置いて差し出されたノートとペンを受取った。シャーペンを床に置いて、一息ついて手に取った。
眉根を寄せ、首元を撫でながら考え込むマルフォイを他所に、勝手に話を続ける。ジャンルこそは違うが同じ投稿者なのに何故、企業依頼を受けていないのか。謂ってしまえば『Q&A』なのだ。
「まず、僕は動画投稿でお金を稼ぐ事に関して、全然良いと思っている。寧ろ現代っぽい、と思う」と僕は土産物を手に持ち、言う。意識を外へ、中庭を俯瞰して気を紛らわし、潮騒で心を宥め、目あげる空の雲の動きを時々眺めながら。
「ただ、お金を貰って投稿するからにはもうそれは趣味ではなく仕事」そう、お金を頂戴する、ということはそれは趣味ではなくなってしまう。それでは、趣味が仕事に置き換わってしまってしまう。それが嫌だから貰わない。中には趣味を仕事にして満足する人もいる。個人的には、羨ましい、と思っている。だって、自分の意志で決めて、動けて、ある程度の制限はあるだろうけど、それでもやりたい事に専念できる。そしてその人はまた、新しい趣味を見つけるのだろう。心の自由は生活に反映される。それを知っているから、僕は趣味を仕事にしない。どれだけ、編集技術が上っても、たぶん変わらないだろう。でも、ジョーク、ジョーク、ジョ…ここはジョークアジベニューDEATH。はぁはぁ。
きっとこいつも、この話を聞く頃には理解しあえるだろう。まなじ知性があるからと(ウッキィィィィィ! 今年も申年ッ!!)、すれ違うことも、些細なことを誤解する事も(てめぇの頭はハッピーセットかよ)、それが嘘となり相手を区別し(ゲーセンでのリアルファイト)、分かり合えなくなる。だから示さなければならない。世界はこんなにも簡単だという事を!(『Qさん』氏ね『Aさん』ありがとうございました) だからこそ、俺たちは、私たちは…分かり合えることができる。だから話さなければいけない(物理)。なんてのは冗談として。でも、離れてしまったけど頭がおかしい友達ならやりそうではある。今週の週末にでも行くかな。
「仕事として動画投稿するからには、楽しませる義務でしたり責任が発生すると思っている。動画つまんないね、て言われたら『すみません』って言うしかないし、動画投稿遅いね、て言われたら『すみません。早く投稿します』っていうしかないし、そういう息苦しい環境で動画投稿したくないからお金を貰っていない、ていうのが本音、かな」
「だから僕の動画の場合『動画がつまらない』て言われたら『ほならね』ですし、『動画投稿遅いね』て言われたら『ほならね』だからね」
サンドイッチを食べ終えて両手を床に、体を支えるように置いて見上げる。青々とした空に雲が流れる。溜息を吐いて、パズルをのんびりと解くマルフォイの隣でただ、頭を空にして眺める。次のパズルは何にしようか、次の動画は何を上げようかなどなどあれこれ考えても、瞑想にふけていても部分的にしか決まらなかったので気晴らしに見上げた。次の曲は何にしようか、ジャズ風に仕立てようか、それともいつも通りにテクノ? それか、兄貴のカバーってのもいいな。カバーとなると、耳コピ練習は必要か。
ちなみに使っているソフトはlo丸ic p▽△r丸o(著作権を侵害しないために『丸』や『△』などで誤魔化します)。
僕は目を逸らし、虚空を見つめるかのように空を見上げて、何処か妄想を働かせているよう。
「結論、何が言いたいのかと言いますと、趣味としてやっているわけだからね。動画つまんないって言われてもしょうがないよと、それは責任ありませんよ、ということです」
結論:(つまらなくても責任は)ないです。あ、ない。
つまらない動画ってのはなんなのか僕のもよくわからないし、では反対に面白い動画っていうのもしらない。
あと、僕はやりたいことをやりたいようにしているだけであって動画の質とか編集技術諸々は自分が納得でる具合でやっている。それにやっているゲーム自体がマイナー過ぎて、コメントに困る内容だって言うのも知っている。
「長々と説明したけど、伝えたいのはそこ、かな」
土産を持ち上げ、手に置いて全体をぐるりと見まわした。
表面は固く、やはり一度開けたのか所々デコボコしている。揺すってみると、小物が入っているのか”カチャカチャ”と音がする。しかし、大きさや重さは中身の音とは対照的にそれなりに重く、大きい。じいさんのお友達の土産、一体中身は何だ。僕からすれば、じいさんの友達はただの他人でしかない。それに、その友達からすれば、せっかく送った土産が顔も名前も知らないじいさんの孫に勝手に譲った? のだから、些か御行儀が悪すぎるし相手の気を悪くしかねない。そんな物を今から開ける自分も、やはり行儀が悪いか。であれば、開けない方がいいのではないだろうか。それか、じいさんに一度電話をかけてからでも遅くはない。そうすれば、罪悪感や心の負荷とやらもなくてすむだろう。うん、どうするべきか。開ける? 開けない? ええい。悶着していてもキリがない。開けてから、それから考えよう。何か、自分とは関係ない物が入っていたら、その時は送り返すなり、電話をして反応を聞いてから行動するなりすれば良い。それでいいのだ。
ええい、そもそも、こういう行動自体、僕の呵責に触れるのだ、視界がぐらつくみたいで気味が悪い。それを振り切って、行動したのは気の紛れ。
鬱屈した気持ちからボー、としているとマルフォイがノートで肩を叩いてきた。
頭を傾けて「なに?」と訊くと「このパズルはお前が作ったのか?」と返したので「そうだけど、ルールがまだ未完成だからやらないでくれ」と言った。本当は少し出来ているけど、納得いく出来じゃないからまだ教えられない。
マルフォイは頷くとペンとノートを僕に渡し、ズボンのポケットへ手を入れ携帯を取り出した。ペンを床に置き、ノートを見た。マルフォイは両手を上げ背伸びし「そうか、それならナンプレ以外は解けたから見てくれ」と言う。
土産を一度床に置いてポカリスエットを一口飲んで自分の横に置き、一息吐いて、とりあえず昼食のゴミを上着ポケットに突っ込んで、ペンとノートをバッグに入れ、再度土産を手に置いた。開けようか、と破けてもガムテープで誤魔化せそうな所から破こうとしたら、
「企業からもメール来るんだろ?」
話を聞いていたのか、と聞きたくなる台詞を言うマルフォイに手が止まり、また床に置いて、深呼吸する。「あーうん」
どうしたもんかと、返答に困り耳の後ろ辺りを掻いて、
「どうしてるんだ? 動画になにかあったのか?」
「…企業やお金が絡むと動画がつまらなくなる、というのは100%当て嵌まるわけでわけではない。ただ、自分の動画から著作権に反する編集を抜いてみたら、もの凄くつまらない動画になったし、実際に企業からもメールが来るんですが、企業としては宣伝してして貰いたいわけなんですよね」
と、当たり障りない答えを言う。
「どんなの?」
「そうだな。絶対にやらないといけない条件が幾つかあるんですよね、
・こういうタイトルでお願いします。
・こういうサムネイルでお願いします。
・このくらいの動画時間でお願いします。
・○○の説明は必ず入れて下さい。
・動画投稿は○日までにお願いします。
こう条件を満たして、尚且つ面白い動画を作るのは僕にはできない」
実際に起業からもゲームのデモプレイとか、発売に合わせてゲームの宣伝をしたいからとかあるけど、そういった縛りがあると私生活に影響がでますから僕は受けませんし受けるしにても言質を取るか、電話やメールの内容を公開してもいいか聞いて大丈夫だったら受けてもいいかな。悪質な業者とかもあるから仕方ないし、予防策は布いておいてもいいのではなかろうか。知らんけど。警戒線とてども謂うのだろうか、こんな事をやっていると色んな情報が目に入る。生の声だし配信なんてのをしている身だから殆ど個人情報なんてあってないようなものだし、業者だけじゃなく同じ投稿者にも気配りをしないと後が大変になる場合もある、けど後々話のネタになるからどうでもいい事でもある。知ってて損はない。
辺りを見回し、誰も此方に興味を持っていない(多分)のを確認して視線を土産に落とす。スリスリシャリシャリと掌を擦って、指を先を合わせた。
三度土産を手に置き、キシリと軋む音が鳴り何が入っているのか心躍らせながら口角を少し上げ、ガムテープを剥す音、蜜のような甘い匂いに埃っぽい匂いをする。
顎を少し、マルフォイに気づかれるか気づかれない案配に上に引き視線だけを向けたら気になった様子で、首を傾けていた。「難しいな。でも別にいいじゃないか」
気に障るような台詞に気が滅入りそうになるも、追記で説明しよう。「どうだろうな。(それはお前が…あまり)ゲームをやって(ない)、それを編集して(ない)、企業の要求の応えつつ勉学ってなると、どっちかが疎かになって、偏った完成度になるか、片方の完成度が落ちちまう(これに関してはお互い同じだけど)」
封を開けた土産を床に置いて上から順々に取り出すと、アラビア文字なのだろうか、よく分からないし読めないが透明な箱を覗くと外国製の立体パズルが三種類入っていた、それと謎の黒い箱が一つ。サイズは掌サイズ、カラフルな包装が成されているチック柄の箱が一つと大きく厚みは教科書二冊分程で茶色の包装紙に包まれた物が入っていた。これで全てか。これ以外に何か入っていないか調べる為に開け口を下にして両手で持ち上げて揺するも、重さは軽く何も出てこなかった。どうせなら、海外のお菓子が食べたかったな、と頭の片隅で考え、まじまじと携帯を弄りながら眺めているマルフォイを他所に中から出た物に視線を置く。箱の中身をより精査すれば何か出てくるんじゃないか、と思いつつ止めた。これ以上、この場で変な行動をするとこちらを見る視線が痛くなるのではないか、と更に思い、思い止まった。本当は開けたいけれど、それは家にでも帰ったらしよう。中身に手を出す前に空の箱を左側に置いて、どれから手を出そうか、と悩む。
立体パズルは嬉しいかな。店で買うとそれなりに高いから助かる。お菓子は入っていないのは少し残念だったけどまあいいか。収穫はあったのだから、じいさんには感謝しないと。帰ったら電話するかな。土産の中身を広げて、中身が判っているパズルを左側に添えて、チック柄の箱を手に取った。黒い箱をデザートに据えて、ディナーから見ていくとしよう。でも、最初からデザートでもいいよ。まずはチック柄の箱からだ、手を伸ばし、手に取ると包装紙を適当に破くと新たに茶色の箱が出てきたので開けてみると、エジプト土産というやつなのか詳しくは判らないが色合いは金、十字架の先端が楕円状になっている。それが計二つ。何に使うのか、置物かと思って背面を見ると二つベルトが付いていた。ベルトということは、身に着ける装飾品なのか。どこに着ける物なのか、説明書らしき紙は入っていなかったから、取敢えずは腕に着けよう。ベルトの穴は沢山あるようで、腕が細くても付けられるというのは偉い。
制服の上からこの装飾品を腕に巻いて見せると、マルフォイは「変な飾りだな」と言う。僕は「別にいいだろ」と言った。
少し袖が重くなったが、着け心地はよろしくない。しかし、なんだこの装飾品は。何かのエンブレム? それとも何かを模して造られた物? 色々創造できるが、もしかして意味のない物かもしれない。あとは、図書室にでも行ってエジプトの事を調べよう。
さて、残りは黒い箱だけか。
空き箱をバックにしまいその箱を取る。
その箱は他と違い包装紙で包れていない。ただ、箱の側面にテープが張り付けられているだけであった。テープを外し、箱を開けると中に金色の箱が入っていた。マトリョーシカかと思い、金色の箱を取り出し黒い箱を床に置いて値踏みするように観察した。側面にはアラビア文字が彫られ、二つある奇妙な目、蓋の端には縄のような紋様がある。蓋の表面の紋様は長方形になっている。その目は、端が渦のように丸まっている。この目は確か、ホルスの目というシンボルだったか。そんなことはどうでもいいとして、箱を開けると、紫色の布が敷いてあり、バラバラになっているパズルがあるだけ。これは、帰ってから解こう。そう言いつつ箱からパズルのピースを一つ手に取り、観察する。
パズルの表面には幾何学的な模様が彫られている。という事は、この彫りにそって組み立てれば解けるということ。簡単だな、と思いパズルを一つずつみていくとその中に二つ、形の異なるピースを発見する。一つは丸い輪っかが付いてあるピースであり、一つは箱の目の形とは違い普通の目。
眉を下げて口角を引き怪訝な顔で「なんだそれ。変なパズル? だな」と言う。
マルフォイの台詞に、確かに、と同意した自分の心境は微妙で神妙な顔でもしてないか今からでもトイレに行きたい。
「それはそうと、例の映画はいいのか?」
金の箱を床に置いてマルフォイの台詞に耳を傾け、
「映画? ああ、円盤を買うってやつ」
「買ったか?」
買いたいけど金がないから無理、だとは言えない。ディスクを買っても録画する機械やテレビはない。携帯のワンセグアプリで映画を録画すればいいだろうけど、それではいちいち差し込まれるCMが煩くてよく見れない。それかレンタルで見る。殆どレンタルで済ませているけど、本当に買っておきたい映画がなければ、買わない。映画館に行くのは評価するため、あと見たいから。
でも中学の時にかなりの映画をVHSとDVDに焼いたけど、それを何故か実家に置いてきてしまったから取りに行かないと。あ、VHSがあるから、それはどうしよう。
「中学の時に買ったDVDとか、録画したディスクとかビデオは実家に置いて、そのままだからな…」
「何時取りに行くんだ?」
悩ましい台詞を言う。出来れば実家には行きたくない。それにテレビとDVDプレーヤーもない。行ったって意味はないさ。
とは思ったが取りに行きたくもある。
「バイク免許を取ったら」
胡坐を掻いて「あっそ」と相槌をしるように言う。
周りに視線を巡らせると何人か校内に戻ったようだ。僕らも動こうかと思い、深呼吸してから掌を擦った。
二話だけですが、このお話は終わり(仮)になります。
応援して頂ありがとうございました。
ヤマイダレ『端末世界』 @kakuro
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