第8話 !①

 ―火種―

 大きなその指先で、綺麗に"それ"を一摘まみ、泣きっ面を狙う蜂の如く、全て砕けてく。てけてく。すべてくだけてく。SBてKDけてく。全。だ。け。て。く。

 全身を奮い立てて、閃光の絵空事始めたら、飛んで火に入る夏の虫如く、どこか香ばしく。

 気持ちの下に、野垂れ死ぬ。

「全て―の所為ですか?」

 ―崖の上に立って、後ろを気にする仕草はなく―

 全ての企みが潰れて、人の風穴を紡いだら、重くのしかかる、岩のメタファーも愛し、愛されるままで。あなたに意味を立てることや、負荷を掛けたイミテイトすらも、独り歩いて、川を流れる、灯籠の様に見えるのです。

 ―髪を靡かせ、穏やかな風が頬を撫でているようで、暖かい陽射しの下、テンションは冷え切っている―

 大きなその指先で、迷える子羊を連れて往く、石橋の叩かれる恐怖も、寧ろ心地良く。ろく。むしろここちよく。MSろKKCYく。寧ろ、心、地、良、く。寧ろ心地良く。

 大きなその指先が、独り歩く愚者を虐めてる、井の中、海を知らぬ蛙が無い袖を振るの? 気持ちの上、凭れ掛かる、全て誰の仕業です? 振り返った其の先は、雑踏に踏み入れた足跡、煙に巻かれ、ルクスを誤魔化し、泣いても戻る事無く。彷徨いの末に道を断った、陽気なミメシスの職人が、呻き声上げて、為す術無くし、ランタンで肢体隠す。全てを理解したとしても、直ぐに動けず立ちすくんで、頭を抱え込んでいる、全て―の所為です。

 気持ちの下に、野垂れ死ぬ。

 ―此処から見える景色は長閑で、其処から見える川には灯籠が流れて見えるようで、眺めるわたしは嬉しそうです―

 全て―の所為です。

 穢れた口腔をくぐり抜けた、毒が描き出すクレバスに、頭から墜ちて、全て失う、誰も望まぬ形で。あなたに意味を立てることや、負荷を掛けたイミテイトすらも、独り歩いて、川を流れる、灯籠の様に見えるのです。

 火種は全てを焼き尽くし、何もかもを黒く染めた。


 ―5月15日―


 …な、何だったんだ今の。

 そんなどうでもいい夢の事を考えつつ、重い瞼と上半身を起して少し斜めを見上げる。室内機を眺めながら、深呼吸して胸を宥めつつ、足を組んで、あの夢と気持ちを整える。個人的には坐禅に近いのかも知れない。坐禅ね。坐禅。嫌な思い出が蘇るようだ。吐き気がする、忘れたい思い出。自分が置かれている立場も判らず、知らず、其れまで考える事もせず、知らされず、宗教という鳥籠の中、仲間と共に踊っていた良い思い出だ。だとすると、吐き気は流石に言い過ぎかもしれない。

 また、夢を見た。予知夢かもしれない夢を。ああ、気怠い。指と指を擦り合わせ、寝床の横に置いてあるデジタル時計に視線を向けると6時を少し過ぎていた。なんだかな…。アラーム設定は7時にしているんだが、最近はアラームが鳴る前に起きてしまう。時々、時計の設定を変えようか、換えまいか、悩んでしまう。でもそんなどうでもいい訳で、室内機を眺めながら悶着しているようで、やはりどうでも良く思ってきた。

 また、変な夢を見た。ああ、忘れそうだ。なんて鬱陶しい夢だ。忘れないようにメモろう。この夢は、予知夢なのか、それともストレスから見る夢なのか。はっきりしないこの歯痒い感覚。見えそうで見えない、このもどかしさ。なんて考えても意味は無い、取り敢えず書こう。でないとまた、忘れた頃に夢がやってくるから、対策しようがない。試みてみ意味なし、邪魔なだけに終わる。かもしれない。

 起き上がり、洗面台へと行き歯を磨いた後、寝間着を布団の上に乗せ、眠気覚ましに風呂に入った。これは、時間のある時の日課だ。ない時は、顔を洗ってお終い。この洗面台は、トイレと風呂が一体になったよくある仕様の部屋だ。

 僕は一人暮らしの高校生だ。端的に言うと、親との意見の違いから軋轢が生じて実家を離れて、一人暮らしに至った。マルフォイもこのアパートに住んでいる。僕と同じ一人暮らしの高校生だ。

 風呂を上がると制服に着替え、閑散とした部屋の端に置いてある机の椅子を引き、隣の本棚から日記帳を手に取った。といっても最近は殆ど日記として使っていないので日記帳と呼ぶべきかは甚だ疑問ではある。誰かに訊かれたら答え辛いので、日記帳の形をしたメモ帳、と言って於こう。日付とか書いた年もバラバラ、書きたい時に書く。それだけ。机には主に使う物しか置いていない。でも机の上はコピー機とデスクトップパソコンにキーボードなどで占められていている。整理したところで、使い易くなるわけでもない。キーボードはモニターと独立しているので動かせるが、コピー機とデスクトップはここ以外に置く場所がない。買ってから後悔している、それが僕。そんな煩わしい事、頭の隅にでも置いておいておこう。

 机の隣には本棚が置いてあり、寝床の近くには、了う服が少なすぎて上手に活用されていない収納棚。電子ピアノも置いてある。商品名は「アルテシア」だけど。最近はパソコンで作曲できるので、ピアノは弾きたい時に弾くか興奮した時に弾いている。使う頻度はパソコンより劣るものの、耳コピの練習とか唐突に曲のアレンジがしたい時なんかで重宝している。部屋の中央には、机が置いてある。そこで、プラモデルなり、勉強をやっている。作ったプラモデルは収納棚の上に置いていてこれ以上買ったら場合、床に置くしかない。

 テレビは無い。集金が面倒だと両親から聞いているので、買わずにいる。

 因みに、マルフォイはテレビを買い、集金を蒔いているという。僕には出来ない芸当だ。地上はで映画が流れる時は何時もマルフォイに頼んでいる。アニメはあまり見ない。

 それで隣には本棚には主に手塚治虫の漫画と好きな作家さんの小説にルービックキューブとか真っ白のジグソーパズル、カメラとかが置いてある。棚には「海のカフカ」とか「ソロモンの犬」、「ハリーポッター」などの個人的に好きな作家さんの本が置いてある。ジグソーパズルの『純白地獄』は面白そうだったから買った。あと、それ以外に、この本棚には僕が自作のパズル何かもある。最近だと、風景画を刷って風景パズルや背景パズルなんかに手をつけている。突き詰めると面白いけど、受け入れてくれる仲間は少ない。けど、この趣味がキッカケで、写真を撮るようになった。

 カメラには拘りを入れていて、机とか棚に置いといてもダサくない、則ち、お洒落な二眼レフカメラだ。Black Bird,Flyで、色は青、フィルムは35㎜。良い画してるんですよね。試し撮りで、巻き戻しが必要になってノブを回したとき、ガリガリ音を立てるのでその時は怖くて慎重になったけど、馴れればガリガリ音が心地良くなってくる。

 それと、僕のもう一つ趣味。ゲームを録画して編集する動画投稿をしている。主に「サービスが終了しそうなオンラインゲーム」を某動画サイトにて挙げている。以前、僕と同じ投稿者であり小学生からの友達〈きよし君〉から、メールがきて「一緒にゲームセンターに置いてあるガ○ダムゲームやろうZ。USB持って録画機を設置してあるゲーセンに行けば金儲けができるぜ。だからお前もガ○ダムVSやろう!!」というクソを送りつけてくる。通っている高校は別なため遊ぶ時はメールで済ませている。

 他に言う趣味はない。

 時計を見つつネタ帳もとい日記に今日見た夢の話を書く終えると、朝食を作りに台所へと足を進めた。取り敢えず、夢で見たモノを書いた。とは言っても、夢の内容を如実に書けれるか、ていうと難しい。夢で見た景色を確かめる方法は今の所ないわけですし、何より、夢で見た景色とメモした内容が当て嵌まる場所に行ったとて、違和感が強く募って、これじゃない感が出てきそうなので、放置するしかない。他に方法は絶賛!模索中…。

 日記を棚に戻し、目を閉じて一息吐く。何てこと無い、まだ夢だ、と首を横に振り言い聞かせ、席を起ちカーテンを開ける。

 台所の電気を点け、冷蔵庫から千切りにしたキャベツのタッパーとか作り置きしておいた味噌汁に調理に使う惣菜をテーブルに一つずつ置いていると、玄関前に置いてある固定電話のランプが点滅しているのを発見する。留守番電話か……。あの電話は、Wi-Fiを取り付けた時に買った物だ。親には携帯の電話番号じゃなくて固定電話の番号を教えてあるから、電話があっても気づかない時もある。多分それ…だと思う。嗚呼、憂鬱だ。内容は多分だけど、学校に遅れないように―ていうのだろう。ご飯を作っている合間にでも、ラジオ感覚で録音を流そう。きっと、親父か母親もしくは両方の豪華セットが朝を飾るのだろう。正直に言って聞きたくは無いけど、もし折り返ししないと仕送りやアパート代諸々を止められるやと考えると背筋がゾッとする。


 季節は春風を運ぶのを忘れているのか、陽射しは暖かいが部屋は暖房を着けないとかなり寒い。住んでいる地域にもよると思うが、僕の地域はクッソ寒い。

 まな板をコンロに近い場所に置いて、味噌汁を電子レンジで温める。タッパーから千切りキャベツを皿に一握り盛り、鍋に水をやりコンロに置くと火を点け、沸騰するまで待ち、その間に卵を割りボールに入れて掻き混ぜる。泡が出来るくらいにまでね。その間に留守番電話の再生ボタンを押した。料理は上手くない。個人的には作り置きが出来るカレーとかシチューの方が好きだけど、気分で自分が作れる範囲の料理なんかを作ったりしている。創作は一度やろうとして失敗した。料理サイトの載ってあるレシピ通りやっても、何故か失敗する。

『メッセージハ ニ ケンデス』

 ついでに、携帯の音楽アプリにダウンロードして於いた音楽を流した。と同時にふつふつと沸いたのでウインナーを一袋、入れた。

 火を通したフライパンに油を引き、ボールの中身を出した。ヘラで細かく掻きつつ火加減に注意を払い、何時片側を起すか見極める。失敗するとスクランブルエッグになる。

『お母さんです。体調は大丈夫? ご飯は足りてますか。お金は大丈夫? 折り返しの電話をください。日中は会社に居るから、夜ね。それじゃ』

 録音終了。

 あらら、違った。う~ん。お金はまだあるし、体調は良好、ご飯は双六爺さんから仕送りが来てるから問題なし。一様、折り返すか。帰ったら。

『遊戯、私だ。双六だ。何時、これを聞くか知らんが、えっと…』うん? あれ、どうした? 何かを探すような音が聞える、

『あ、やはり歳かね。そっちにエジプトでピラミットの調査をしている友人からのプレゼントを送った。そうだな…』やっぱり歳なんだろう。何かを見ながら喋っているように聞える。友人からの土産か。友人には僕に渡しても良いのか駄目なのか、許可を取ったのか。色々と心配な爺さんだ。『うん、それじゃあな。届いたらまた電話をよこしてくれよ』多分だけど、爺さんは電話が欲しいだけなのだろう。

 仕送り以外の送り物か。なんだろうな。胸が高鳴るな。

 双六じいさんは実家がある京都府の京都市に住んでいる。僕の生まれは函館だから爺さんとはあまり縁が無い。接点はある。両親には関係がある。とか、考えている内に少し形が崩れてしまったけど料理が出来た。

 朝食が出来て、ゆっくり摂っているとインターホンを押すチャイム音がした。箸を置いて、玄関を開けると宅急便屋さんが荷物を抱えて立っていた。

「針生さんでよろしいでしょうか?」

「はい」

「では、この紙にサインしてください」

 爺さんの送り物かな。かなり早く届いたな。荷物は片腕に納まるほど、小さく、厚みはハリーポッター一冊分くらいか? ダンボールにはガムテープがグルグルと巻かれている。しかも、一度開けた跡がある。

 配達のお兄さんからペンを受取りサインを済ませる。

 両手の掌を擦り合わせながら考えている時、ふと何か忘れているような気がして携帯の音楽を止めて、画面を見て、

「アァァァァッ!! 遅刻!」と青ざめ、急いでご飯を胃袋に流し込んだ。


 昼の食事は近くのコンビニで買うとして、防犯用に買った〈竹光〉を二本入れた筒を肩に掛けて忘れ物がないか部屋を見回しながら、カメラと土産をバックに入れて、サングラスを身に着け紺色の帽子にウォークマンをズボンのポケットに突っ込み、イヤホンを着け、傘を片手に持って家を出た。

 通路を駆けてアパートの出入り口へで足を止めて辺りを見回す。背を伸ばしてみても、マルフォイは見当たらない。先に行ったのだろうか。まあいい。首を振り、出入り口を潜りサングラスをずらして空を見上げると、空は晴れていた。天気は長閑で肌に当る風は穏やかであった。今日の天気予報は晴れ。傘は要らないけど、一度部屋に戻り置いてこようとも思わなかった為、先を急いだ。


 駆け足で道を進む道中、コンビニに寄って卵サンドを三個とポカリスエット、鮭の御握りを買った。店内に折り畳み傘があったので買おうか迷ったのだけれど、財布と相談して敢無く断念した。

 通学に使っている道に戻って数分後、前の方に茶色いスーツを着た男女が何かのアンケート? を取っている。男の方はアンケートボードを持っているようで女の方は、お盆を持っている。

「あ、そこの君」

 あ~どうしようかな。スルーした方がいいんだろうけど、どうせだ。友達との話題話を作るのに一役貰おう。

 足を止めてイヤホンを外し、

「はい。なんですか?」と言う。

 男が顔を傾け、眉根を寄せながら歩み寄り、

「コイン投げてみないかい?」

 うん? コイン? お盆の上には一枚のコインが置いてあった。しかも、500円玉よりデカい。女がコインを手に取り、それを手渡してきた。別に断る理由はなかったので受取って、裏表見てみたのだが、どっちが裏で表なのか分らない。

 一方は木の枝に鳥が止っている絵だ。鳥の絵の下には、1999年と書かれている。片方は鳥籠。外国のメダルという見方もあるだろうけど、僕が単に知らないだけで、その辺のゲームセンターのコインかもしれない。あるいは、自作のモノか。

 近くで見て解ったのはコインだけじゃない。この二人は、白人だ。だから何だって話だけど。

 すると男と女は交互に、

「裏か?

 表か?」

 と、訛った台詞で言って、理解できるようなできないような問いを出した。

 表か、裏か…それをアンケートしているのだろう。くだらないが面白そうな取り組みだ。僕も真似しようかな。

「は? ……じゃあ…表だ」

 指でコインを弾いて、お盆の上に乗せた。

 結果は、『表』だった。ボードを視て観ると表の覧にだけ印が付けてある。うん? じゃあ、なんのアンケートだ。

「やはり」

 男は浅く頷くと、何処か納得いっていない様子で、

「うーん」

 対して女は、少し嬉しそうにニッコリとしている。

「やはり、思っていたほど嬉しくはないな」

「元気だして。次があるわ」

 女は男が持っているノートに結果を書くと、男の顎を撫でた。

「まあそうだね」

 結局なんのアンケートだったのか教えてもらえず、謎の男女は僕が来た道を進んだ。

 何だ…あいつら。って何やってんだ自分、遅刻しちまうじゃないか。

 イヤホンを着け直す事も忘れて、時間を気にしながら走った。競歩で。だが、朝から競歩は体力的に無理があると判断した僕は、普通に走った。色んなパズルや迷路をやっている身としては情けないぜ。近場のジムでも見つけて、筋トレでもしよう。これを気に、筋トレでも趣味にするか。

 ここで何か忘れている気になり、ズボンのパケットに手を当て…携帯、忘れた。心の中で「アァァァァァァァァァッ!!! 巫山戯るな! モアイッ」と絶叫しながら考え、そして考えは直ぐに決まった。戻る。

 汗が滲み出てきて、踵を返し、アパートへと戻る事にした。忘れ物、忘れ物…。


 ―8時15分。

 駆け足で家に戻って、テーブルに置いてあった携帯をズボンのポケットに突っ込んだ。イヤホンを着け直して、また駆け出す。

 僕の住んでいる地域は田舎ではないものの山に囲まれて田圃が多く、海が近い。住んでいるアパートからは夜な夜な、海の潺が聴ける。でも、嵐とか風の強い日は煩くてあまり寝付けないけど、気にしない。マルフォイはそうでもないらしいけど。やはりマルフォイ、変人か。地域の特徴といっても特になくあるとすれば、高校くらいだろう。


 ―今年の春、僕はこの学校「柴又高校」に入学したばかりの新一年生だ。この時期になっても、部員不足に嘆いている所が居るようで、入ろうか悩んでいる。それか新しく部活を作るか。でも、それだと動画編集が遅れるし、止めて帰宅部といて活動しようかね。悩ましい所ではある。

 この学校は、度重なる増改築によって校舎の一部が水上に建てられている。則ち、学校全体が複雑怪奇になっている。つまり、意☆味☆不☆明。校舎は五階建てで三棟に分けれていて、この棟を繋ぐ通路のA-2とA-3の下には川が流れている。敷地内の至る所にある経緯不明の高低差。町へ繋がる、橋。校内からでは見えない時計。我々が何時も見ているのは、対岸の時計と無駄に立派な時計塔。まさに公立ダンジョン。食堂の広さは県内トップ。ストレス無く食事が出来る。それとこの高校は屋上を開放しているようで、そこで昼飯を食べるのが日課になりかけている。

 校舎裏には山があり、陸上部とか野球部なんかはこの山を使って練習をしている。


 大した事故もなく両手を広げながら校門を抜けた。心の中で、やりにけり、と考えつつ汗を額に浮かべ、運動部の如く走ったせいか、迸る疲れと荒れる息を整えて膝に手をつく。そして自分の体力のなさを実感した。やはり良い機会だ。筋トレを始めよう。再び両手を広げ、天に掲げると校門横の花壇を手入れしている女の子を見かけた。誰だろう? 珍しいな。それに見かけない顔だ。転校生か? それとも顔を覚えていないだけの同級生か先輩のどちらかだろう。まあ、なにはともあれ自己紹介だ。携帯をつけ、時間を見ると少しだが時間がある。

 しかし、運動した所為でテンションが上がっている。

「どうもー♪ おはようございます」

 彼女はビックリした様子で見上げている。

 肌色は白く、目はキツネのようで、白い肌で髪の色は茶色。髪の長さは肩にかかる程度。耳も尖っている。印象としては、目立ったくくりのない顔で悪くは無いものの少し子供っぽさが残っている。おそらくは誰からにでも親しみ易いのだろう。少なくとも安心させる。背はあまり高くは無いけど、身体はすらりと細く、その割りに胸が大きい。脚の形も綺麗だ。桃色のヘッドフォンを肩に掛けていて、隣には、鞄が置いてある。赤色のラインが入ったネクタイに冬物のセーター。紺色の学生服にスカート、ストッキングを履いている。

「え…と、おはようございます」

 しおらしい様相で、よそよそしいな。うん、違うな、これが乙女という仕草のなだろう。若干距離を置かれているような気もしなくはないが、非行に走らない限り問題ないだろう。あ、しおらしいで思い出した。ウミガメの涙は塩らしいけどワニの涙は嘘らしい。

 腕を組んで、手首に視線を落す。どうも淋しい。時間を知りたい時にわざわざ、携帯を点けないといけない手間を省くためにも、腕時計が欲しいなとか頭の片隅で思い指を擦る。

「あの…」

 眉根に浅い皺をお寄せて、訝しげに話す彼女。立ち上がり、バックを提げ、携帯を取り出して画面を見ている。

「はい。なんでしょうか?」と、腰に両手を置きながら言う。

「今日の天気予報って晴れですよね? なんで傘を持っているんですか?」

 なんと、晴れだったか。知れて良かったと思う反面、一度帰った時ついでにこの傘を置いてくればよかった、なと後悔してしまう。

 今度は右腕を上げ、人差し指を天に指し、

「う~ん、天気予報はあてになりませんしね、自分に備わった特殊能力が囁いているんですよ」

 そして、ゆっくり顔の位置まで落し、

「『怪しい』と!」

 本当は「おばあちゃんは言っていた」を言いたかった。僕は気分屋で、その時考えた台詞を優先してしまう。有り体に謂ってしまうと「癖」というやつだ。

「……え?」

「あ……すみません。冗談です。何でもしますから。だからといって、何でもするとは言っていない!」

 今度は指の形を「指ぱっちん」をするポーズに、

「勝利の方程式は決まった!」

 その台詞を言い終えたらその手をクルッと回して、指ぱっちんをした。

 …うん。なんか違うな。

「あの、チャイム鳴りますよ?」

 名の知れぬ彼女は後退り、校内へと消えていった。


 もし一つだけ、願いが叶うなら。

 足を止めて、歩んだ道を戻り、進み直したい。

 軽はずみなステップが、後の重く感じて、現実には[元に戻す]コマンドは、

 無いのです。

 厚い衣で覆われた飛行艇、夜空が何時もより、綺麗に映る夢を見た。

 明日の事を思い耽るのも悪くはないけど、

 君には他にやるべきことが、あるんじゃないか?

 昨日を思い出して辛くなることもあるけど、今は変らないことのない風を感じていたいな。


 あ、教室行かなきゃ。サングラスを外し、玄関へと足を進ませた。

 どうも僕は我慢弱く、つい思い付いた事を行動に移してしまう癖が表に出てしまう。まったく困った癖だ。

 下駄箱に靴を突っ込み、上履きに履き替えると一目散に教室のある二階へと三段飛ばしで上り、ガラスの嵌ったドアを開け、窓辺の席に座った。

 ふいに、花壇であった彼女がいないか気になり視線を巡らせるも、彼女の形すら見つけられなかった。

 マルフォイは隣のクラスに居る。挨拶でもしようかと思ったが、まあ、休み時間にでも会えば良いし、どうってことはない。

 僕の友人は、何て言うか、一言でいうなら変人だ。曲の耳コピのスピードが凄まじく、MADや曲のアレンジ、彼が作る作品は好評だ。けれど、本人はあまり自分の作品に意見を書いてほしくはない。仮に彼を応援したい人が居るならば、「無視」が彼にとっての最大の応援だ。きよし君は、ボードゲームを趣味で作っている。ルールさえ分れば楽しめる、最高にクールなゲームを考える才能がある。尤も変人というのは個人の見解であって、僕が謂う「変人」というのは一般論だ。見方を変えれば違うかもしれないが、僕の知るマルフォイは変人だ。

 後は、授業が始めるのを待つだけ。それまで、これから作るパズルの構想の幾つか書いているか。机にメモ帳を広げて、シャープペンと消しゴムを側に置き、中指で机を擦る。ある程度出来たらマルフォイに一度遊んでもらおう。あとは出版社に送って、採用されるか否か待つだけ。今回は、風景パズルにしようか、三次元パズルに、それともルールを設けてそれを謎を解くパズルに…。つまったな、一旦カフカでも読むか。苦手な本があるとすれば、ライトノベルだろう。




 あとがたりは上手かな?

 はい、どうもクソ投稿者です。投稿遅れて済みません。

 エクバをやっていると毎回のように対戦カードに湧いて出てくるトライファイターズ。あいつら胡散臭い武装を幾つも持ってるから、あーもう嫌だ、いやだ。火柱クソプラモと、当ると無敵状態にしろスターファネルを撒き散らす女、某カードゲームに登場する先生と同じ名前で使うクソプラモは先生に寄せているのか「ライトニング」使いのゆうまくん。ゆうまくんは先生を見習って、ホープ・ザ・ライトニング(大正義)に千回切られてね。

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