第47話 未来へ

 夜 学園からの帰り道


 みんながそれぞれの後始末の為に帰って行き、僕と紅緋はいつものように二人並んで歩いている。


「終わったね」

「うん。終わった」


「紅緋も帰っちゃうの?」

「ううん。帰らない」


 一緒に歩いていた紅緋は少し前に出て振り返り、僕の目の前に立った。


「あたし決めたんだ! 自分がやりたいこと、思ったことをやってみるって。何もしないで悩んでるよりやってから悩もうと思う」

「う、うん。いいんだけど、どっちにしても悩むの前提なんだね?」


「そうだよ。何も問題が起きなければいいけど、起きたときのショックを和らげる為の保険みたいなもんだよ」

「そっか〜」


 紅緋は今回のことで、少し強くなった気がする。


「と、いうわけであたしが今、一番やりたいことはあれ!」


 紅緋が指差した方向を見ると、アウトレットモールに併設した遊園地の大観覧車をだった。


「えっ、あれって……」


 いや、どう考えても無理だよ。時間が殆ど動いてないのに観覧車に乗っても楽しいわけないよ。


「いいから一緒に来て!」


 僕の手を取り笑顔で走り出す紅緋。


 そんな紅緋を見て僕は思う。

 やっぱり僕は元気な笑顔の紅緋が好きだ。


 そしてずっと、その笑顔を見ていたいと思う。


 大観覧車の下までやって来た僕たちは、立ち止まり上を見上げた。てっぺんまで何十メートルあるのだろうか? ゴンドラが微かに動いているのが見て取れる。


「未來! 行っくよ!」


 紅緋は僕にそう声をかけると、僕の手をしっかりと握り上へとジャンプした。


「わわわわーーっ!」


 僕は紅緋に引っ張られ宙を舞う。驚いた顔をしている僕に、紅緋は優しい笑顔で言う。


「大丈夫だよ」


 僕と紅緋は、下の方のゴンドラから順に上っていき、やがて一番上にあるゴンドラに到達する。

 そしてそのゴンドラの屋根の上に二人並んで腰掛けた。


 空には満天の星、眼下に見えるのは空の星を散りばめたような無数の街の光。

 まるで宇宙に二人きりでいるような気がしてくる。


「どう? すごいでしょ」


「すごいよ。紅緋はここのこと知ってたの」

「うん。未來と一緒に見たかったんだ」


 僕は、街の光を見つめながら嬉しそうに話す紅緋の横顔を見つめた。


「また、来れたらいいよね」


 僕が見ていることに気づいた紅緋は、ほんのりと頬を赤く染めて答える。


「うん。何度も……、絶対だよ!」


 今なら僕のちっぽけな願いが、宇宙そらに届く気がした。

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精霊と出会った僕が妖魔と戦おうと思った理由(僕の事情と彼女の事情) ワイルドベリー @tuka_you

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