return gate

Rens

プロローグ 第1話 朝


 

  大きなお屋敷、湖があって使用人が素敵な花壇に水をやり、私はいつも同じ本を読む。

 隣には立派になった娘に、結婚して孫娘まで誕生日した、今はもういない我が妻も天で私たちを見ているだろうか・・・

 深夜12時、私は自分の寝室に行き二人、共に寝ることの出来よう大きなベッドに横になり、いつも見るある夢を見る。

 あまり好ましくない夢だった。

 

「僕を・・・忘れないで、リエル」

 

 私たちを包み込む赤い光、足を踏み外せば地獄の入り口、消えない無念と憎悪

 私は彼女の言葉とこれだけを思い出す。

 いつも見る夢。

赤い光に包まれながら言った彼女の言葉は、時折私の心を食い荒らす。

「忘れないように」と思った頃があっただろうか・・・

今の私には何もわからない


( 第1話 朝 )

 

 アラクネリアは一つの大国家である、第十二の都市があり私たちが住んでいる都市 エーテリアルはその中で唯一[法の取り決めが薄い都市]である。 私たちはその南側エリアにある村に生まれ育てられた。その村の名は、ブラッドネラン

 森に囲まれたこの村は、アラクネリア一の武器製造を誇り、武器ならいくらでも生み出す通称「Village of death(死の村)」と言われている。

 他の都市からの人間が一度でもこの村に足を踏み入れれば、[ネランの厄災を呼ぶ]と言われている。

 私の名はリエル、リエル・スフィン 現在72歳 男 ランクは下位、この村に生まれ育ったのを後悔した、いわば[ネラン]だ、

 [ネラン]とは、私の生まれるずっと前 [ネラン・マッカートニー]と名を与えられたブラッドネランのヒーロー、そしてブラッドネランという村を作り上げたアラクネリアの反逆者だ・・・

 エーテリアルの南側にある村、ブラッドネランそこにある大きいお屋敷、そこに私は住んでいる。

 現在72歳 約50年前に愛しの我が妻、サーシャを嫁にもらいその15年後、流行病にて先立たれた。

 ある一人の最愛なる娘を置いてだ、娘はミラと名付けられ、今では孫娘まで生まれた。

 あぁ、ありがとう・・・サーシャ、私に残してくれたものがどれほど素晴らしいものか、君にもミラの成長を私たちの孫娘、エリシェの誕生を共に祝いたかったな。君を失ったのが先日のようだ、居なくなって欲しくなかったな・・・

 二人、共に寝ることの出来よう大きなベッドは一人で寝れば寂しさを思い起こさせる。

 朝の8時起きる時間だ、すると両手開きの大きなドアから コンコン と優しいノックが聞こえた、私は「どうぞお入りなさい」と言い少し経つと小さな女の子が顔を覗かせた。

 

「おじいさま、おはようございます。」

 

 我が孫娘エリシェ 12歳 

 身体が弱く、根は真面目だが少し抜けている部分がある。

やたらよくはしゃいでいたミラとはまったく違うな、私はそんなことを思いながら微笑んでいた。

 

「やぁ、エリシェ 昨晩はよく眠れたかい?」

「はい!とても」

「そうか、よかったね。今日の朝食はなんだい?」

「今日はサンドイッチですわ、お母様が作ってくださっています。」

 

 エリシェはそう言うと、私の寝ていたベッドにぽふっと座り始めた。

 

「あら?おじいさま、昨晩もこの本を読んでおられたのですか?」 

 

 エリシェは私のベッドのとなりにあるシルクのブックカバーに包まれた本を指差した。

 

「あぁ、ネランの冒険譚だね」

 

 私はその本を優しく手に持ち、白くそして金の細工が散りばめられた天井に向かって甲高く掲げた。

 

「おじいさま、この本大好きですものね」

「手放せなくてね、私の宝物だよ」

「私も好きですよ、あっおじいさま、今日も聞かせてください!ネランのお話」

「構わないよ、いくらでも聞かせてあげよう、だがまずは朝食だな」

「はい!行きましょう」  

 

 私とエリシェは両手引きの大きなドアをともに勢いよくこじ開けた。

 

 昔々、あるところにネランという愛らしい男の子がいた・・・

 

 約150年前・・・

 

「・・・生まれましたよ、男の子です。」

 

 一つの命の誕生、それに喜ぶ赤子の親らしき二人

 

「男の子・・・可愛い」

 

 生まれた赤子のほっぺを優しく撫でる女、この上ない優しい女の笑顔は周りに安心感を与える。

 

「男の子かぁーようやく生まれてくれたな、よかったよかった。頑張ったな二人とも」

 

 この上ない幸福、それを味わう男、彼の声を聞いた女は優しく首を振る。

 

「あなただって頑張ってくれたわ、仕事忙しい中ここに来てくれた、ありがと。」

「そんなことない、仕事なんて二人の為ならどうだっていいさ」

 

 二人は微笑み合った、新しい命の誕生と新しい愛が生まれた事に。

 ネランの誕生は、アラクネリア第一二番目の都市、エーテリアルの南側、そこにある名がない村に凄まじい風を吹かすことになる。

 黒く淀み切った、この国のこの世界の真実を知る為に、ネラン・マッカートニーは世界を変えるために動き出す。

 

 愛するものをも無くしてしまったとしても

 闇に埋もれたこの世界の真実を暴く為に・・・

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