詩集『日常』

パトロール

壁画から抜け出した木が重なって

蝶ネクタイのにやけ顔

毒色の『A』によく似た角度で

壁に手を付き逆立ちをした蝙蝠が

赤と緑の首吊りー人

木のない壁画

人と、土と、石畳

知らない誰かの家の屋根

こんなもの、知らなかったな

慣れない靴で細木を折った

壁画の向こう

ゆるい首輪を外した手

小さなカバンの巨体を横目に

キスと煙草の取り違え

忘れたものはあの日の中に

迷子の揺れ木

銀の彼女を装備して

薄いガラスでひとみを隠す

狭い屋上に落としかけた

緑と赤は戸棚の中に