第6話 魔法使いは夢を見る
あ......れ......?
俺どうなったんだっけ。確か母様と話して、庭に行こうとして倒れたんだよな。それからどうなったんだ?それにここはどこだ?
辺り一面、青い......。湖と、空かな。湖の上には綺麗な机と椅子が2脚あった。なんで湖の上にあるんだ?風魔法か何かかな。
あれ?なんだかものくすごく眠い。もうちょっと寝よう......。
「起きろ、馬鹿たれ。寝ようとするんじゃない」
「うぇっ!?」
急に頭上から声がする。その声にものすごく驚かされた。
「なんじゃお主、間抜けな声を出しおってからに。今まで見ておったが、礼儀正しいやつじゃったろ。ちぃと口調も違うようじゃし......。」
上を向くとそこには、美少女が俺の顔を覗き込んでいた。光を受けて煌めく漆黒の髪に、墨色の瞳。本で見たことがある。東の大陸の『オイラン』が纏う紅い『キモノ』とやらを身に付けていた。袖や裾は長く、少女の身体にはどう見ても合わない。そして何より驚くべきことはその少女が浮いているということだ。
「だ、誰...!?なんで、浮いてる?」
「ん?お主も浮いておるのに、何を驚いとるのじゃ。」
少女の言葉を受けて、俺は下を見る。俺は浮いていた。湖の上にある机と椅子を見下ろしていたのだと今更ながら気付いた。
「浮いてる!?浮遊魔法は太古に失われたはずじゃ...」
上手く状況が飲み込めない。倒れて、気がついたら空と湖の世界に居て、少女が居て、浮いていて......。考えれば考えるほどわからなくなる。
「あー、すまんかった。こんな状況なら誰でも混乱するじゃろ。まずは茶でも飲んで落ち着くと良い。」
少女はそう言うと、湖の上へと降り立ち、机と椅子に歩み寄る。そして机をコンコンと二回叩いた。するとその瞬間、机の上に紅茶とスコーンが現れた。
「確かお主はいつも、この二つを口にしとったな。ほれ、こっちへ来て食うと良い。」
少女は小さな手で俺を招く。今のこの状況はよくわからないけれどスコーンは食べたい。俺は、少女に続くようにして湖の上に降り、机に歩み寄る。そして危険かどうかを確かめもせずにスコーンを口に運んだ。
「美味しい!!!」
サクサクとして、紅茶の味が口いっぱいに広がっていく。それはいつも食べているものと同じだった。どうやら三種類のスコーンを用意してくれたらしい。プレーン、チョコ、紅茶の三つだ。
「落ち着いたか?説明を始めても構わんか?」
少女が首をかしげて問いかける。紅茶を飲んで一息ついた俺は答えた。
「お願いします」
「よろしい。ならばまずは、腰掛けると良い。長くなるやもしれんからな」
そして、少女は今の俺の状況を語り始めた。
少年は最強の魔法使いを目指す。 朱鳥 水 @hina1227
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