第5話 魔法使いは眠っている

「あなた、リオちゃんの様子は?」


 ヴィーリオの部屋にて。ヴィーリオが倒れてから3日目の昼。ヴィーリオの横たわる寝台のそばに家族全員が集まっていた。

 リーディオスはヴィーリオに手をかざす。闇属性の魔法は呪いや病気を探知する能力があった。そしてリーディオスは医療にも通じていたのでヴィーリオの容態を確かめる役目を受けおっていた。だが、闇魔法の使い手であるリーディオスにすらヴィーリオが倒れた原因は分からなかった。


「熱はもうない。今は眠っているだけだな」


 今は静かに眠っているが昨日、一昨日のヴィーリオはかなりひどい容態だった。倒れた直後からどんどん熱が上がり、10分後には39℃を余裕で上回っていた。生きているのが不思議な程の高熱から助かったのは、シルヴィアの治癒魔法とルーデンドルフの氷魔法、シルクドの補助魔法の3つを使い、一睡もせず熱を下げてくれていたからだ。魔力回復薬マナポーションを飲み、回復したら魔法を使い、ということを繰り返したせいで3人はもうくたくたに疲れ果てていたのだった。

 だが、その3人のおかけでヴィーリオは原因不明の高熱から救われた。とりあえず一山超えたことを喜ぶくらいは構わないだろう。


「リオは熱が引いたばかりで眠っているみたいだ。明日にはきっと目覚めるだろう。」


 リーディオスは落ち着いたように述べた。

 その言葉を聞いて気が抜けたのかみんながその場に座り込んだ。


「良かっ......た......」


 そう言って、シルクドはルーデンドルフにもたれかかるようにして眠ってしまった。まだ13歳で魔法を行使するのに慣れていなかったなか、弟を救うため、必死に頑張ってくれていた。家族思いの優しい子だということが見て取れるだろう。他、シルヴィアもルーデンドルフも眠っていないので疲れ果て、今にも瞼が下がりそうな様子だ。カザルスは休息をとっていたのでまだ余力があるようだ。


「とりあえず、今日は全員休もう。カザルス、ヴィーリオのことを頼めるかな」

「もちろん!みんなはしっかり休んでてくれ。ヴィーリオに何かあったらすぐ知らせるから」

「ありがとうね、カザルス」


 シルヴィアはそう言ってふらふらとしながら部屋から出ていった。リーディオスはシルクドを抱えて、ルーデンドルフはそれに付き添うようにして部屋を出る。

 その後、4人は昨日までの疲れを取るために一日中眠るのだった。

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