第4話 魔法使い倒れる

 自分のことを知ろうと思いたち、父様の書斎に入り浸り続けてはや数ヶ月。

 屋敷はいつも以上に慌ただしかった。

 明日は10月29日。そして俺の誕生日でもある。

 今日の屋敷の慌ただしさはそのことが原因だ。

 毎年豪華なパーティーを開いてる。使用人も領民参加する大規模なものだ。先月も同じように豪華にルーデン兄様の誕生会をしたばかりなのだけど。


 昨年は母様から手作りの指輪をもらった。魔力上昇、防御力上昇、魔法耐性、状態異常無効、etcエトセトラ......その他いろいろと魔法付与のされた特一級品の指輪だ。俺は休みに帰ってくる兄妹みんなで鬼ごっこにドッジボール、かくれんぼなどいろいろな遊びをする。どれも魔獣とでる広場の中で行うからとても危険なのだけど、母様の指輪は見えない結界バリアを張ってくれるので無事に遊ぶことができるのだ。

 父様からはペンを。魔力を注げばいつまでも書き続けられるペンをもらった。紙に書いた文字や絵を空中に浮かべることが出来るし、空中に書くこともできる。兄様も羨む物凄く高価な魔法道具マジックアイテムだった。熱心に本を読んでいたおかげで文字はいつの間にか書けるようになっていた。魔法陣を組み立てるために必要な魔法文字はまだ完璧とはいえないけどいつかは完璧に習得したい。

 兄様、姉様達からは手作りのケーキを頂いた。メイド長に教わって作ったらしい。料理の苦手なカザルス兄様とリリー姉様も今回はうまく出来たと胸を張っていた。実際、物凄く美味しかった。ルーデン兄様とシルク姉様の頑張りのおかげかもしれないけど。

 今年は一体どんな物がもらえるのか今からわくわくしている。


「リオちゃん?」


 てくてくのんびりと廊下を歩いていると、前方の角から母様が出てきた。


「明日はいよいよ7歳の誕生日ね。おめでとう!半年後には魔法学院の入学式。時が過ぎるのは早いわねぇ」

「気が早いですよ、母様!」

「そうかしら? あら、リオちゃん顔が赤いわよ、大丈夫?」

「大丈夫です!」

「そう? ならいいんだけど......」


 母様がとても心配そうな顔で覗き込んでくる。

 今思うと少しふわふわした感覚がある。


「俺は庭に行ってきますね」


 そう一言だけ言うと母様と別れて俺は庭に向かった。

 その瞬間だった。天井と床が逆になって、世界が勢いよく回転する。

 バタンと音がして自分が倒れたのだということを悟った。


「リオちゃん!? リオちゃん、大丈夫!?」


 あぁ、母様......俺は......大丈夫ですから......

 そして俺は意識を手放したのだった。

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