244章

すぐに無重力状態むじゅうりょくじょうたいではなくなり、アンはロミーをいたまま飛行船ひこうせんゆかたたきつけられた。


下からき上げるようにく風が、ホワイトファルコン号を押し上げている。


その風にり、飛行船はゆったりと空中を下降かこうしていく。


船内でおどろいていたアン。


その全身に、どこかなつかしい感覚かんかくあじわっていた。


「これはまさか……?」


それは、風をあやつ反帝国組織バイオ·ナンバーの兵士――シックスだ。


奇跡きせきこったのか、シックスを感じていたアンの乗ったホワイトファルコン号を、風がはこび始める。


次に、突如とつじょとして、大地だいちれる音が聞こえ始める。


そして、うごめく大地が山を作り、そこから水があふれ始めた。


「大地と水……もしかしてお前たちなのか……?」


アンはまた懐かしい感覚をおぼえた。


この感覚は、帝国の女将軍だったキャス·デュ―バーグと、ガーベラドームの近くで住む鍛冶屋かじやの少年クロム·グラッドスト―ンのものだった。


山のような大地が飛行船をき、その上をながれる水がすくう。


このまま地面じめん激突げきとつするかと思われたホワイトファルコン号は、坂道さかみちくだるように、地上へと向かって行く。


大地の土台どだいを使い、まるでジェットコースターのように水の上をすべっていった。


アンは自然しぜんと笑みをかべていた。


自分はなんてバカなのだと。


ロンヘアの声が聞こえた時点じてんで何故気がつかなかったのだと。


「みんな……私のそばにいるんだ……」


そのことを思い出したアンは、顔を今まで以上にグシャグシャにし、泣きながら笑った。


大声で、そして大喜おおよろこびして――。


彼女はもう、昔は無表情むかんじょうだったとは思えないほど、ゆたかな感情かんじょうをその表情に見せていた。


そして、ホワイトファルコン号は地上へと滑りながら着陸ちゃくりく


それと同時に飛行船の周りを、赤とみどりほのおあざやかにい上がった。


その花火はなびのような炎の動きは、まるでアンたちの無事を祝福しゅくふくしているようだ。


「マナ、ラスグリーン……」


炎を操るダルオレンジ兄妹きょうだい


アンは、2人のこともしっかりと感じていた。


アンは、気をうしっているロミーをささえながら、飛行船の外へと出る。


すると、白い光がアンとロミーを包み込んだ。


「ああ……ルーザー……ルーザーなんだな……」


アンがそう言うと、白い光は穏やかにかがやき、そして、やがて消えていった。


「アン~!! 無事ぶじだったのね!!!」


声がする方向ほうこうを見ると、1台のジープがこちらへと向かって来ていた。


銀髪ぎんぱつ反帝国組織バイオ·ナンバーの女兵士――エヌエーが大きく手をって、ジープからその身を乗り出している。


運転席には、彼女と同じく反帝国組織バイオ·ナンバーの兵士2人――。


メディスンがハンドルを握っており、ブラッドは涙を流しながら咆哮ほうこうをあげていた。


「バイオナンバーのみんなも生きてたんだな……よかった……本当によかった……」


アンはそうつぶやくと、その場に倒れてしまった。


「アンッ!?」


それを見たエヌエーたちは、いそいで彼女たちにっていく。


心配しんぱいそうに近寄ちかよった3人がそこで見たのは――。


安心しきった顔をしたアンと、不機嫌ふきげんそうにねむっているロミーがかさなって倒れているだった。


アンは頭上ずじょうから聞こえる男女の笑い声を聞きながら――。


うすれていく意識の中で思う。


……みんな……ありがとう……。


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マシーナリーズ・メモリー~機械化する少女 コラム @oto_no_oto

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