第1話 迷惑現代っ子は突然に
ある日のこと、それはその日最初の仕事だった。私の部屋にある一人の転生者がやってきた。
「す、すいません。ここはどこで、あなたは誰ですか?」
あからさまに動揺してるわね。まあ、いきなり見たことない部屋で目が覚めたんだから無理もないか。
「私の名前はクレア。この転生の間の管理人よ。」
「て、転生!?てゆうことは僕は・・・。」
お、やっとこ理解したか。
「そうよ、あなたは元の世界で死んでしまったの。」
「そ、そんなあ。」
とても悲しそうな顔をした。そんな顔をされたら優しくしてあげたくなる。
「でも、そんなに気を落とさないで。あなたは、次の世界でまた人生のスタートを切れるわ。」
「何言ってるんですか!」
「え?」
思わず変な声が出てしまった。
「だから、何言ってるんですかあなたは!死んじゃったんだから落ち込まないわけないでしょ!だいたいあなたは他人事なんですよ!」
な、なんなんだいきなり?
どうしちゃったんだこいつは?
「はぁ、最悪だ。俺には彼女もいたのにな。てか俺まだ童貞なんだよな。死ぬ前に1回くらいやってみたかったな。」
なんか、一人の世界に入っちゃってるんだけど。この人本当に大丈夫?てか、いろんなこといきなりカミングアウトしちゃってるんだけど。
「ねえ、お姉さん。」
「クレアです。」
「そんな、あなたの名前なんてもうどうでもいいんですよ。」
「僕はこれから先、どうなっちゃうんですか?」
「だから、さっきも言ったように次の世界でまた新しい人生をスタートさせて。」
「その世界ってスマホとかありますか?」
「え、そんなものはないけど。」
「なんだよー。そんな世界死んだも同じだわ。あっ、もう死んでたか。」
なんだこいつ。なんか、イライラしてきたぞ。
「じゃあ、転生するときに女神さまがなんかくれるとか?」
「例えば?」
「そうだな、特別なチート級魔法とか、最強の剣とか。」
「そんなんあるわけないじゃん。」
「はー!!じゃあ何?そっちの世界じゃあ俺は勇者とかは?」
「だから、ないって!夢見すぎ。」
「なんなんだよー!あんたマジで使えないじゃん!女神だか何だか知らないけどさあ、なんかもっとそれっぽいことしたら?まじ居る意味w」
私の中で何かが切れる音がした。
「何なのよあんた!さっきから黙って聞いてたら調子に乗って。だいたいね、あんたはちょっと夢を見すぎなのよ!私は何にもあげないし、勇者とか変な設定もあるわけないでしょう。あんたはもう一回死んだんだからまた生き返れるだけでも感謝しなさい!」
「え、あぅ、でも・・・」
「でも何!」
「あ、すっ、すいません。なんでもありません。」
「じゃあ、黙って転生しなさい!ほら行くわよ。」
その刹那、部屋は明るい光に包まれた。光が収まった後、もう転生者はいなかった。
「あ、名前聞き忘れた。」
こうしてその日の仕事が一つ消化された。
女神様だって楽じゃない! 鬼ヶ島 @onigashima
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