第3話 「今の若者に特有な無気力さを痛感した」と、その人は書いた
学校というところは、意外なほど紙の刷り物がある。
学級通信。保健だより。生徒会通信。そしてPTAニュース。
私はPTAニュースで「その人」の名前を見つけた。
記事は一年生の夏の合宿について。
各学級の代表が合宿の感想を書いていた。
まあ、無理に書かされたものだけど。
多くの生徒は「海がきれいだった」「ご飯がおいしかった」と
おざなりの言葉を書いていたけど、その人が書いたことは違っていた。
「合宿の間中、今の若者に特有な無気力さを痛感した」
私はそれを読んで、心引き締まる思いがした。
決して合宿を無為に過ごしたわけではない。
訓練も、レクリエーションも、それなりに打ち込んだ。
事故も事件も不始末もなく、穏やかな合宿だった。
でも、もっと高い見地から見たゆえに、私たちの態度は
「無気力」だったと、この評判の悪い彼はあえて苦言を書いたのだろう。
他人に理解されない高貴な孤高な理想を抱いた人だと、
まだ顔も知らないその人のことをそう思った。
後、その人は自ら立候補して図書委員長となった。
誰か私の失恋をモデルに小説を書いて下さい 高秀恵子 @sansango9
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