その番号がとある放送局の時報なのは、私も知っていた。一回だけ使ったこともある……十年以上前に。その時は腕時計がちゃんと働いているかどうか不安になったのでかけた。 時間。人はその下でしか生きられず、その上に死して至る。本作でもその暗示が現されている。主人公は『時』の管理人であると同時に司祭でもある。主人公が『時』に自らを犠牲にして祈ることで、初めて浮かび上がる人間がいた。それで良い。それこそが理想の終焉だ。
そこに目を付け、相応しい小説を書いた。その時点で、勝ちが決まってる。そんな小説です。お見事。