ケイト、ザ・グレイト
フカイ
掌編(読み切り)
口を半開きにしてリップスティックを引く
鏡の中の女に、視線を飛ばす
肌のコンディション
髪のまとまり
目の生気と唇のはり
兵士が戦闘の前にマシンガンの装弾を確認するように
ビジネスマンが商談の前に見積りを確認するように
彼女は鏡の中の女を見る
すべてにOKがでるまで
鏡は彼女を離さない
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
世界をかろやかに振り回しながら
シャッターの列とタブロイド誌を蹴散らす
彼女が歩けば、噂が走り
彼女が微笑めば、テレビの特集が組まれる
人々は彼女を求める
ケイトを求めているのか、
ケイトという名の
それは誰にもわからない
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
―――まつげを伏せて
視線を隠すのは、
数え切れない人々でなく、
たったひとりの愛を掴みたいから
だけど
ディオールが
シャネルが
そのアイコンを求める
そのオーラを求める
彼女の視線の
横暴さと
やるせなさと
鋭さが
あまたのラグジュアリー・ブランドたちに
愛される
だって彼女は、
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
ケイト、ザ・グレイト(偉大なるケイト)
地上に降りた
たったひとりの
女神だから
ケイト、ザ・グレイト フカイ @fukai
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