第11話 最強は最強を倒したい
ロクでもない観光から数日、例のごとく地面をえぐった俺はウンコを漏らした。
最悪なことに今日はトイレに向かう途中でクリスタと遭遇し、腹に一発いいのを貰っちまったわけだ。
びぢぢぢぢってなったわ。
しかもね、クリスタの攻撃に耐えられる服とかってないじゃん?
だからね、俺はね、全裸なの。ケツにウンコ付いたまま全裸なわけですよ。
もうね、首から下全部モザイク状態なの。
だって土とウンコの区別付かないんだもん。
とにかく人目に付かないように移動して、手ごろな川で体を洗うことにしたわけだけどさ、そうしたら川の上流からドンブラコンドンブラコンって言いながらサングラスのおじさんが流れてきたんだけどね、なんかもうどうでもよくなったからとりあえず無視してみました。
そしたらね、当てつけの様に、ドンシスコンドンシスコンって爽やかなハンサム野郎が流れてきたからね、河川敷に転がる石で狙撃しちゃいました。
川底に沈んだハンサムがぼこぼこ泡出してるけど気にしないでそのまま体洗ってたらね、今度は。
「けけけけけけっけけえ」
ってな感じでドンロリコンが流れてきた訳。
覚えてる?いつぞやうちに来た勇者パーティーのヒーラーの子。
あれが俵詰めにされて流れてたの。
少し上流を見るとね、おそらく被害者の幼女たちが中指立ててたの。
もうね、絡むのも突っ込むのも面倒になって放置したわけ。
なんでこんなに頻繁に人が流れてくるんだろうって思いながらもね、ツッコミは入れずに我慢してたんさ。
そしたらね。
「ドンショタコンドンショタコン」
ってな感じでね、ダイナマイトボディーの姉ちゃんが流れていてね、もうめんどくさくなってさ、ほんと、何なのこの川って感じでさ。
「どうしましたかお姉さん」(イケボ)
お持ち帰りしたわけですよ。
クリスタやらパシリにばれないように家に連れ帰ってね、部屋で美味しくいただいて桃太郎を誕生させようとしたわけ。
桃から生まれてないけど、お姉さんの桃にかぶりつきたいから桃太郎でいいの。
だけどね、そしたらどうなったと思う?
「私は世界を映す者。万物を写し取り、世界を記録する者」
もうね、びっくりしたの。
宗教の勧誘かなって思ったよね。
「この一帯だけは私の力をもってしても見ることができない」
とか言い出してね、びしょ濡れのまま部屋から出てったの。
どこ行くんだろうと思って着いて行ったらさ、なんとリビング、有給消化中のクリスタさんがパシリの作った手製ポテトチップをかじりながら、俺の世界で買ってきたテレビを見てるわけですよ。
電波?電気?そんなもん神に突貫工事させたに決まってんでしょ。
テレビゲーム一緒にやろうぜ!って言ったら秒だよ。
アイツマジでチョロい。
「なんだ貴様は、私とレオンの愛の巣になんのようだ」
本格的にアクマイト・パシゾウのことを忘れているみたいだ。
「あなたが原因ね」
「おい、人の話を聞け、滅ぼすぞ」
話聞かないだけで罪重いなッ!?
「あなたはきっと、あなたよりも強い存在を見たことがない」
その言葉を聞いて、少しだけクリスタの眉が跳ねた。
「あなたはきっと負けを知らないなら、あなたが絶対に勝てない敵を教えてあげる」
「ほう、面白い、この私が勝てない敵か、どれ、暇つぶしに少し見せてみろ」
凶悪な表情を浮かべたクリスタが、ポテトチップを抱えながら立ち上がる。
「写せ写せ写せ、誠と虚像がいひ乱れる空想の世界、そこより来たれ、最強の存在」
「噛んだな」
「噛んだよね」
「走り抜けたな」
「駆け抜けましたね」
「別じゅげんよりいでよ!最強の女くりしゅた!」
「あいつポンコツだ」
「滑舌が悪いのかもしれないな」
「割りばしとか咥えさせたら治るらしいぞ」
「そうなのか?というかあの女は誰だ」
「しらん、川で拾った」
「おい、何故拾った」
「おっと、もうこんな時間だ、行かなきゃ」
なんてことをクリスタと話してたら、目の前の空間が裂け、その中から現れたのは、褐色の肌をしたクリスタだった。
「あぁ?んだよここ………って、アタシじゃねえか!!!」
「ようやく、会えたね」
「お、おう?」
「何年ぶりかな、ずいぶん大きくなったんだね、お姉ちゃん嬉しい」
「え、ええ!?あ、姉貴なのか?アタシの………」
「あ、あはは、やっぱり覚えてないよね………で、でも大丈夫だよ、これからたくさん一緒に思い出を作って行こ―――しねぇぇぇぇえ!!!」
「ええええぇぇえっぇぇぇえっ!??」
「この世に私は2人も要らぬ!そんな夏場のギャルみたいな肌で私のレオンを誘惑しようとしても無駄だ!貴様は今ここで消滅させる!」
ってかなに?さっきまでの生き別れの姉妹が再開したけど、妹はその記憶委が無くて、それを知ったお姉ちゃん派悲しいけどそれを必死にかみ殺して、無くした分の記憶を埋められるくらいの思い出を作ろうねって感じの演技は!?
しかもそこから世界に穴が開いて、無まで消滅するような右ストレートって何!?ひどずぎじゃね?破天荒さに拍車がかかってやがるよクリスタさん!しかも直撃だよ!
「けっやるじゃねえか、さすがお姉ちゃんだ」
あるるるれぇぇぇぇええ?お姉ちゃん設定は生きてるの!?
「妹よ、貴様に姉として引導を渡してやる」
あ、こいつあれだ、お姉ちゃん呼び気に入ったやつだ。
「あなたでは勝てない、二人の力は全く同じ、成長も同じ、だからこそ、あなたに勝ち目はない」
ずぶ濡れのお姉さんが悪魔くんガン見しながらそんな事言いだしたけど、なんで悪魔くんガン見してんの?
「私は・・・恋に生きることに決めた」
おい、こんな世界崩壊級どころじゃない化け物呼び出しておいてなに恋に生きようとしてんだよぶっ殺すぞ、特にパシリ。
「私と全く同じ・・・か、っふふ、確かにそれは昔の私であればどうしようもなかっただろうな、だがっ!今の私にはレオンが付いている!二人の力を合わせて戦えば何も怖い物はない!それがたとえ、私自身であろうと!!!」
「く、クリスタ、お前俺のことをそこまで・・・」
「さあ、共に戦おうレオン!私達はパートナーだ!」
「けっ!そんなひょろいがき一人で何が変わるってんだよ!」
クリスタが俺に手を差し出してくる。
こんなに、クリスタは俺のことを思ってくれていたのか。
へへ、だったら、負けられないよな!
「あぁ!戦おう!俺なんかに何ができるか分からねえが、最後の一瞬まで、俺はクリスタと・・いっしょ・・・に?」
あれ?おかしいな、なんで差し出した手じゃなくて、俺の足を掴んでんのこの人。
「行くぞ私!これが、愛の力だ!!!」
「ちょっとまってぇぇっぇぇぇええ!?!?!?!?」
俺の足を握りしめ、大きく振り上げたクリスタが、そのままクロスタ(今命名)に、俺を叩きつけた。
「がはっ!?そ、そんな、なんだこの力は!?」
腕力です。
「まだまだ行くぞ!!!」
そして、世界の裂け目を作り、二人と俺は恒例となった全てが消滅した空間に移動した。
「ちっ!侮ってたぜ愛の力って奴をな!」
いいえ、腕力です。純然たる腕力です。
「だが!こっちもただ黙ってやられるほど落ちぶれちゃいねえぜ!食らいやがれ!こいつは世界を一瞬で1兆程ぶち抜いた攻撃だ!さすがのテメエもこいつを食らっちゃひとたまりもねえだろ!!!」
クロスタが宙に手を掲げ、そこに周囲の闇がまるでうごめくように収束していく。
それに伴って、何もないはずの空間、空間という概念さえもないこの場で、どこからか悲鳴が聞こえてくるような、そんな気さえした。
「砕け散れやぁぁっぁぁあ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴっと、全てを飲み込みながら迫ってくる漆黒球。
それを見たクリスタはニヤリと、笑みをこぼした。
お願い、マジで、なんでも言うこと効くからほんとに許して。
「甘いッ!!!」カキーン
カキーンじゃねえよ。
コイツ概念操作で適当な効果音ぶち込みやがったな!!!
俺の顔面を捉えた漆黒球が見当はずれの方向に弾き飛ばされた。
痛い痛い痛いっ!今まで感じた中でぶっちぎりの痛みだわ!そりゃ一兆も世界壊せる攻撃だもんね!?痛いよね!?
そんな時、俺の心の中で、声が聞こえた。
『いたい・・・たすけて・・・』
お前、まさか・・・俺の別人格なのか?
『マジ無理、痛すぎて笑えない、あ、そうです、わたしが別人格ですどうも』
いやいや、随分軽くね?
世界一兆個ぶっ壊すような攻撃だよ?
『あ、わたしドエムなんで大丈夫です』
『いたい・・・・』
なんか声増えてません?
『それはたぶん、ドエムだけど痛すぎて精神崩壊した9000クリスタの人格の嘆きでしょう』
なに9000クリスタって。
『全並行世界、全異世界全ての宇宙を構成する原子の総数を1クリスタと言います』
ねえ、俺の人格一体どれだけ廃人になってたの?
まあね?俺も薄々おかしいなとは思ってたんだよ?すっげーいてえけど、よくある心が壊れて—とか、そう言うことになんないのかなって思ってたんだよね、だけどさ、想像を超える数ってか単位のレベルで壊れてたんだな。
俺の別人格。
『はいそうですね、私は突然変異で生み出された最強のドエムなので、あと2秒は持ちますが・・・あ、むりぽ』
廃人になったよ・・・。
まあそうだろうね?未だかつてここまで壮絶な戦いしてないからね?
しかもさ、漫画とかでよくある精神世界?って言うの?あれって外と時間軸違って、帰ってきたら進んでない!とかじゃん?こっちそんなことまったくないからね?現在進行形で俺のことをクロスタに叩きつけてるからね?
クロスタも『ぐおおおおおおっ!?』とか言ってるけど、絵面だけ見たら一番の被害者俺だから。
「わかったか、もう一人の私、これが愛の力だ」
腕力です。
「くっ・・・これが、愛の力・・・・完敗だぜ・・・・」
腕力と暴力に屈しただけですよね?
「ふふ、貴様もなかなか強かったが、所詮貴様は1人、私達は2人で戦っていた、私達にはその違いしかなかったさ」
いや戦ってんのは常に一人だよ?
叩きつけられてるのなら一人いるけど。
「そう、か・・・アタシは・・・一人だから・・・」
ちげーよ、武器の有無だよどう考えても。
「まあ、貴様は私で、私は貴様だ、心配することはない、少し心苦しいが、レオンをシェアしてやろう」
シェアって?ねえシェアってどういう事!?
「あ、あたしにも、それ、貸してくれんのか!?」
完全に武器としてしか見てねえじゃねえか!!!!!!!
「あぁ、だってそうだろ?私たちは・・・・・姉妹なのだから」
結局そうなるんかい。
お姉ちゃんって呼んでくれる奴を手元に残したいだけじゃねえか!!!!
俺の異世界転生~なんか知ってる異世界転生じゃないんですけど!?~ 不可説ハジメ @abcabcabc
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