柔らかな刻

作者 中澤京華

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★★★ Excellent!!!

読み始めた印象は、淡々とした筆致でまさに題名のとおり柔らかいなと思いました。

作品の内容は、一人の女性が少女から大人、そして母へと移りゆく物語です。
その周りには、様々な人間たちがいて、彼女の人生に彩を添えます。

必ずしも幸せなことばかりではない、でも、不幸せなことばかりでもない。
そういう人生を、主人公は前を向いて歩いていきます。


この作品を読んで、僕もこうするかもしれないなと思ったり、そうだよなと頷くシーンがありました。
もしかしたら、誰でも、この中に自分を見つけるかもしれません。

だって、人生は苦しくて辛い、だけど優しく美しいものだと、みんな心のどこかで思っていると僕は信じるからです。

★★★ Excellent!!!

前/後編と大きく分けられた本作は、主人公も母→娘と、二世代に渡って引き継がれていきます。

柔らかい文体で綴られながら、その主人公たちの生き様、取り巻く環境は、決して一般的で穏やかなものではありません。その中でも常に前を向きながら力強く日々を生き抜く、希望とともにどこか心温まる「純文学」と言える作品です。

★★ Very Good!!

 多くの学生にとっては、少なくとも高校までは、家と学校と友人と、あとは精々塾くらいが『世間』である。
 ひたむきに、健気に生き抜こうとする主人公にとって学校や教室は世間であると同時に道路でもある。五里霧中さながら、誰とどうぶつかるか分からない道路。隣を歩く人間の姿に安心することもあればその逆もある。
 願わくば、行き止まりになどならないように祈っている。

★★★ Excellent!!!

 心の悩みや葛藤に悩まされながらも家族と懸命に生きる、根津 珠樹という少女が主人公の青春文学小説です。

 一人で悩み事を抱えながら生きる珠樹に対して、同級生として距離を縮める桂木 美咲という少女の存在がとても魅力的です。そこには同年代の少女たちだからこそ共感出来る場面が数多く描かれており、美咲のように前向きになる珠樹の心情が丁寧に描かれています。

 そして夏木 笙という少年の登場によって、物語が友情と恋愛の葛藤を描いた内容に変化していく過程もポイントです。お互いに素直な気持ちを表現出来ないその心情は、まさに思春期を過ごす中学生ならではの姿です。さらに不器用ながらもお互いの気持ちを確かめ合う場面は、誰もが一度は経験した青春の日々を連想させます。

 また埼玉県朝霞市を舞台にしていることから、リアリティーや空気感などを大切にされていることもポイントです。ならびに文学小説のように上品な文章が多いことも、『柔らかな刻』という作品の魅力の一つだと思いました。

 「青春」「純文学」などの要素をしっかりと押さえながらも、ヒューマンドラマならではの魅力も感じ取れる――そんな素敵な物語だと私は思います。