カメオと大好きな扉

 こんばんは。

 夕立を降らせ、消えてしまった小さな入道雲を見送って、君は路地を走っていく。周りの家から良い匂いが……夕餉時だね。

 君が向かったのは住宅街の少し古い家。小さな庭がよく手入れされたお家だ。玄関の引き戸に君がぴょんと飛び着く。アルミサッシをよじ登り、インターフォンのボタンを頭で押す。

 ピンポーン……。呼び鈴の後

「はい?」

 スピーカーから女の人の声が聞こえる。

「キュイ!」

 君が一声鳴く。

「あら、帰ってきたのね」

 含み笑いの声が聞こえ、君がこの世界で一番大好きな扉が開いた。

「おかえり、カメオ」

「キュイ」

 君が出迎えのお母さんの胸に飛びつく。

「キュイ!」

 ドアが閉まる前に振り返った君。

 うん、また明日ね。

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カメオな日々 いぐあな @sou_igu

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