西暦2020年のクリスマス、天使の姿を象った怪物によって町の人々は一瞬にして塩の柱へと変えられた。それから時が経つこと10年。人類はその八割を喪いながらも、かろうじて生き延びていた。その要因こそが『メシアクラフト』、最初の災害で生き残った唯一の少年・ユウキをパイロットとする、世界中から集めた聖遺物によって造られた人型決戦兵器だ。
そして今、そのメシアクラフトとユウキの最後の戦いが始まろうとしていた……。
ロボットものはカクヨムのSFジャンルの中でもかなりの人気分野なのだが、その中で本作を紹介する理由、それはこのメシアクラフトの設定が実に秀逸だから!
通常兵器では傷つけることのできない敵に対抗する手段として、聖遺物を兵器に組み込み、機体に使われる冷却水も聖水、燃料も聖なる重水。操縦できるのは聖人に認定された者だけで、さらに操縦時には手首と足首に釘を打ちこまれ、脇腹を槍で刺されるという儀式がなければ起動しないという徹底っぷり。
搭載されている兵器で戦うだけでなく、聖書に記された奇跡を再現するという戦闘シーンも素晴らしい。人類滅亡寸前という実にハードな設定ながらも、この作品ならではというオチをつけてまとまっているストーリー展開も素晴らしく、分量も中編程度なので、ロボットものが好きな方は是非ご一読を!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
まず初めに言いますと、この小説は五万文字近くの中編である。
その五万文字という短い中、壮絶なバトル、豊富な装備とその説明、そして主人公の生きざま、それらを詰めに詰めた構造は本当に舌を巻くほどだ。
クリスマスの夜に愛する者を、全てを奪われてしまった一人の少年。彼は愛する者を取り戻す為、自ら聖者になって天使を焼き尽くす。
世界の為ではなく、人類の為ではなく、ただその女の子の為。その純粋な気持ちが、この小説の中で深く刻まれている。
まだ読んでいない方はぜひとも堪能をしてほしい。そして最後まで見届けてほしい。
聖者というの名の一人の人間を描いたその戦いを。