一体誰を責めたらいいのだろう。本作には邪悪な独裁者も呪いの大魔王も全く登場しない。にもかかわらずああした成行になった。かつて私の知人のそのまた知人が、『太宰治の人生を鑑みるに、走れメロスは皮肉としか思えない』と述べたことがある。私には、本作に出てくる彼女の存在自体が皮肉としか思えない。そんな思いが行き交う傑作悲劇。
AIが感情を持ったら、それは人間と何が違うのか。心のあるAIに人権は与えられるべきか。そんなテーマのゲームをプレイして衝撃を受けたことを、この小説を読んだ後に思い出しました。ミチコへのトーマの愛。それは人が人を愛することとなんの違いもないように思えました。いつか本当にAIと人間が愛し合う日が来るかもしれない。その時が来たら自分はどう思うのか、考えさせられる作品でした。
高機能AIと教育担当者の交流が、地球の運命を劇的に変える。それは悲劇なのか、それとも……