恋人にふられた主人公は、冬の海に一人でやってきた。ちょっとした、傷心旅行といった具合。スマホを操作していて、たまたま再生された動画に映っていたのが、冬の海だった。海鳴り。凪いだ海。波音。冷たい風。 そんな中、主人公は、一匹の鯨と出会う。 そしてその鯨は思いもよらぬ言葉を発して……⁈ 心に傷を負った主人公と鯨の心の交流が、優しいタッチで描かれている。 心がざらついた時に、お勧めの一作。 是非、御一読下さい。
古来、日本では海の向こうに常世があるとされていた。 主人公は一つの恋を海に流した。即ち終わった恋は常世に旅だった。その伝で申さば、鯨はマレビトだろうか。彼女の心の邸宅に、その姿が絵になって飾られている。