征服者になろう!

桑原賢五郎丸

征服者になろう!

 おびただしい数の銃器と、陽気に踊る人夫たちを積んだ巨大な船が、海岸に到着した。

 船から降りた男たちは、今度こそ黄金の国かと期待で胸をふくらませる。

 現地の民が尻込みながら近づいてきたので、機銃の掃射で威嚇した。

 まだ火薬が発明されていない現地の民は、何をされているかわからず、ただ立ち尽くしているだけだった。


 船の中で男たちは笑いながら話し合った。

「奴ら、口開けて驚いてやがる」

「おれたちの機銃が弱すぎるってことだよな」


 男たちは照準を現地の民に合わせた。数分後には、死体の山だけが残った。当然のことながら、異教徒を殺すのに神の許しを乞う必要はない。


 無知で素朴な現地の民を屈服させるのに、大した時間はかからなかった。何しろ遠くから一人撃ち殺せば、彼らはこちらを勝手に崇めるのだ。


 そのたびに、男たちは

「おれまたなんかやっちゃった?」

 と大声で笑いあった。


 船から降りた男たちは、ほどなくその周辺を治める王に対面した。異教徒の王は、男たちにとって魔王ともいえるものだった。

 男たちは立ち並ぶ重臣たちを、歌いながら銃器で殺していった。王は莫大な黄金を差し出して命乞いした。

 王の命だけは救うことにより、船を降りた男たちへの畏敬の念は、ますます強くなっていた。


 男たちは船へ黄金を運び込み、舞い踊る。

「うだつのあがらねえ人生だったが、まるで女神様に転生させられたようだ」

 酔っ払った男が陽気にわめき散らす。

「ここの奴ら、何も知らねえ。こないだ、海岸に書いておいた伝言を、不思議そうに取り巻いてたぜ」

 現地の女を組み敷きながら男が言った。

「おれ全然モテなかったけど、こっちきたら女なんかよりどりみどりだ。こんなに楽しいことはねえ」


 その様子を、船長と副船長が見ていた。

「船長、ここまでやって大丈夫なんですかね」

「大丈夫だ。奴らに文字がない以上、私達の行動は残せない。異教徒だから皆殺しにしても構わない。4日もあれば十分だろう。

 それに、新天地に来たらこんな天国が待っているなんて、誰も思うまい!」

 船長は宴に飛び込み、大きな声で歌った。

「征服者になろう! 新天地は天国だ!」

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征服者になろう! 桑原賢五郎丸 @coffee_oic

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