24-1話 絶望とそれから
決起集会の後、
今日は1日休息日となった。
休んで良いと言われたにも関わらず、先程の興奮が冷めないのか鍛錬に繰り出す者も何人かいた。
そんな中、みんなを奮起させた青山は泉と龍太郎の3人で遺体安置室に来ていた。
何かの間違えであれと3人は道すがらずっと念じていた。
桜衣和は名家のお嬢様で、護身術を幼少期から嗜んでいたのだからそんじょそこらのモンスターに負けるはずない。
他人の空似だ。
そう言い聞かせながら、地下へと続く階段を下っていく。
短いはずの階段がとても長く感じる。
しかし、そんな無限のように感じる時間も目の前に扉が出てきたことで終わりを告げる。
3人は無意識に深呼吸を数回繰り返し、ドアノブに手をかけ一息に開け放つ。
薄暗い地下の安置室にはベッドとも呼べないような、無機質な木の机が1台置かれており申し訳程度の白いシーツが敷かれた上にボーリングのボール程の物が2つ置かれていた。
1つは男性の頭で、もうひとつは…
そこまで理解した途端、膝から力が抜け崩れ落ちる。
硬い地面に膝を打ちつけてしまった事も気にならないくらいの深い深い絶望感。
後ろで泉と龍太郎の息を呑む音も後悔の言葉も遠くに感じる。
どれだけ時間が経ったのかもわからない中、付き添いで来ていた若い男性の騎士が青山達に向けて声をかけてきた。
「あの…すいません、こんな事言うのは余計なお世話で、あの…えっとえー、そもそも僕みたいな下っ端が勇者様方に烏滸がましいかもし、しれないんですけど…」
話しかけてきた割には酷く辿々しいけれども、立ち尽くす青山達に若い騎士の口を止めることは出来なかったし、しなかった。
「ぼ、僕実際に救助に行った先輩から聞いたんです桜衣様は最後までモンスター相手に奮闘していたと聞いていますあのレベルの高い騎士でも苦戦するっていうモンスター相手にぼ、僕はあまり桜衣様と関わっていないのでこんなの言うのは本当に本当に僕なんかが烏滸がましいですし何も知らないくせにって感じなんですけど、あまり気を落とさないでくださいグレイブ先輩から聞いた印象からしてもあまり皆様が落ち込まれるのは桜衣様も望んでないんじゃないかななんて」
先程までは涙すら出ず、ただただ深い後悔の渦に呑み込まれ、前も後ろも分からなかった。
それが、若い騎士の言葉がじわじわと耳から入って体内に染み込んでいく。
「う、ぁ」
声にならない嗚咽が漏れ出す。
その後の事はよくおぼえておらず気がついたら部屋に戻って来ていた。
ベッドに仰向けになっていた上体を起こし、先程の騎士の言葉を反芻する。
和は最後まで諦めていなかった。
苦戦していても最後まで戦っていた。
和は自分が落ち込んで絶望して塞ぎ込む事を望んでいるのか?
「否、絶対に違う」
心の奥底から沸々と何かが湧いてくる。
湧き出でる何かに身を任せて、ベッドの上に立ち上がり叫んだ。
「待っていろモンスターども。俺が必ず!必ず全滅してやる!」
無自覚ならまま『復讐』に蝕まれていく。
裏切られた元勇者、再召喚されました⁈ 嘉月抹茶 @rta_36
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